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ヤンデレ乙女ゲームの主人公だけどコンタクトレンズを外すとVRMMO風異世界に飛んだ  作者: 鴉野 兄貴
土下座幼女神といい、フィクションの神は信仰するに値しない

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異世界からの物品はオイシイ儲け話

航空券 敏感肌 ブルーベリー 中国留学

バイク ホンダ 取得 資格 占い パソコン 激安

「ひぃちゃん」

「はい」


 市子さんの目が怖いです。お母さん。


「正座」

「はい」



 さりげなく彼女のローファーが私の膝を踏んだ。痛いです。


「心配したのよ」

「ゴメンナサイ」



 若干ヒキ気味のお城のスタッフたちを尻目に正座は私だけ続行中。

 ちなみに「ひぃちゃん」というのは市子が私と二人きりの時だけに呼ぶ名前の代わりだ。

 ヒロインだからひいちゃん。単純明快。



「こんな無茶ばかりするのなら、ひぃちゃんなんてほっといて念願の『中国留学』でもしておけば良かったかも」

「それは困ります」



 ボロボロの『航空券』をひらひらさせて私の頬を抓る彼女。そして『激安』ノート『パソコン』が私の膝に乗った。抱き石代りらしい。

 ううう。市子様かんべんしてくだせぇ。


「ダメに決まってるじゃない。毎回毎回毎回毎回」



 どれだけ心配しているか。今度という今度は言わせてもらいますからねっ?!

 市子の言外の怒りの声に震えあがる私。

 市子は本来ヤンデレ乙女ゲームの親友キャラなのだ。


 要するに、前週で私が死んだときも、前々週だか前前々週で私が自ら屋上から飛び降りた時のことも知っている。『親友』なのに毎回私を救えないという悩みを今まで抱えていたので、下手したらヤンデレどもより厄介かもしれない。

 本来、市子って優しいだけの子なんだけど。パソコンも苦手だったはずだし。



「通信制高校に逃げを決め込むのは良い選択だったよね」

「引きこもっても強制力が働いたしね」



 今のところゲーム開始の時期が過ぎても平穏無事に過ごせているのはミッションスクールへの道を一緒に諦めてくれた彼女のサポートによるところが大きい。



「大検『資格』も『習得』できるし、みんな優しいしね」

「それは認めるわ」



「まだやってる。そろそろ堪忍してやれよ……えっと市子さんだったっけ?」



 "鉄の馬"とこっちの人が言う『ホンダ』の『バイク』を引きながら陸上部の彼が歩いてくる。



「食べなよ」


 そういって『ブルーベリー』味のガムをくれた。



 どさっ。

 バイクのスタンドを立てたあと私の横に遠慮なく身を投げ出し、市子の冷たい視線を受け流す彼。



「市子さん。そんな目をしていると美女が台無しですよ?」



 そういっておどける彼にため息で返す市子。

 ゲームキャラだけあって市子は美女の範疇に入る。



「ひぃちゃん。今日のところはこれで勘弁してあげるわよ」

「えへへ。市子大好き」



 彼女の頬が朱に染まって私に対する説教が続きかけたのを彼が静止。



「俺は『敏感肌』なんだ。他人のヒステリーのストレスなんて受けたくない」

「失礼ねっ?!」



 市子の怒りの矛先は彼に。見事なヘイトコントロールである。

 ナイトさんタゲとって?! そのまましっかり!



「遊びすぎじゃな」


 剛毛すね毛に今どきないルーズソックス(暖かそうだけど)。

 少し出たおなかがセーラー服から覗く組長がニヤリ。いつから見ていたのやら。


 気配を消して足音もせずにそのどでかいローファーが私たちのほうに歩み寄る。



「若いのは仲が良くていいな」

「そんなことはありません!?」



 ぶうたれる市子。ぼけーっとする彼。

 この場をあっさり収めるあたりさすが組長。

 恰好は変態だけど。あと禿だし。



「先ほどの城の『占い』師の言うことをお前らは聞いていないだろう」

「うん」


 だって抱きノートパソコン享けていたもの。


 そういうとどかんと私の正面に胡坐をかいてみせる彼。

 あ。今一瞬おぞましいものが見えた。

 白いパンティ履いてる。組長。今夜キモくて寝れない。



 組長が占い師に代わって話してくれた。



 お姫様はこの国の辺境貴族の一人娘。

 彼女を狙う『神』は記憶を改編したり、魔物を呼び出したりと好き放題できる。

 この城の人間も記憶改変を受けてお姫様を襲うようにさせられかけたが現在はお姫様の力で無事である。



「だが、中央の国王とかはそうじゃねえ。だからもうすぐここもやばい」


 つまり、中央の国王たちは奴らの手に落ちていて、あの子は翻意を持つ貴族の一人娘として殺される前にお父さんが逃がした。ということらしい。

 あの子、意外と苦労しているんだなぁ。


「苦労しているんだなぁじゃねぇよ。まったく。これなら『中国留学』でもしておけば良かったぜ」


 向うのシノギを増やせそうだったしと不穏なセリフを吐く組長。



「戦争になるの?」

「相手次第だが俺と俺の組のがいれば撃退はたぶん可能だ」



 まぁバズーカ持ってるしね。組長。



「マシンガンをヒャッハーしても異世界ならポリさんは来ないだろう」

「持ってるんだ……」


「異世界にシノギを増やすにはそうそう簡単にはいかねえな」


 そういって笑う彼。

 正直洒落にならないので私たち三人の普通の高校生の笑みは凍っていた。

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