主人公は異世界から来たから強いっていうけど意味不明だよね
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「神を倒せと我々に言うのですか。相応の『お小遣い稼ぎ』になるならさておき」
市子?! 神様なんか私たちに倒せるはずがないでしょッ?!
「そうですね。可能な限りの『高収入』を保障できます」
お姫様もケチではないらしい。
そんなやり取りのさなか、おばちゃんは『ホームページ作成』ツールを起動中。
どうやら今日の日記をブログにアップする予定らしい。
「書籍化して『海外旅行』にいって、『体脂肪』を落として」
おばちゃん。あのね。楽して痩せようとか思っちゃだめよ。
私だってこの身体を維持するのに苦労しているのだもの。
「あ。回線つながらないわ。コンタクトちょっとつけて」
はいはい。もう。
私はおばちゃんの手を握るとコンタクトを外して一時的に元の世界に。
視界に映るのは元の世界の光景。
壊れた校舎。大騒ぎする近所の……近所の……え?
「なに。これ」
風が重い。匂いを感じない。乾いた舌は潤いを発しない。
「ど、どうしたんだってんだい? 回線がつながらないよ」
戸惑う元じゅりわな?食いーンなおばちゃんと私。
「ジュリワナクイーンだよ」
おばちゃんが苦笑。
そしてどこからかともなく鉄扇を取り出して身構える。
なに。この感覚。
怖い。
「しっかり後ろに立ってな」
おばちゃんが告げる。
「あんたが死んだら皆帰れないんだ」
ぐらり。視界が揺れて。校舎が天井に。空が足元に。
「おばちゃ」
「正気を持ちな」
その広くて脂肪の詰まった背中は頼もしい。
こつ。こつ。こつ。
空が床になっている空間を歩いてくる音。
黒いマントにフードの男女ともつかない不審者が近づいてきた。
大げさな礼をして、その口元は確かに嘲笑っていた。
「『恋愛』もまだの乙女に言うのは気が引けるのですが」
そいつは宣言した。
「『ニキビ跡』のように穴だらけになって死んでください。いつぞやのあのドラゴンのように」