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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

リ・セット

作者: negidarake
掲載日:2014/09/09

 彼女はどうしようもなく死んでいた。

 そう、森永みずほは死んでいた。


 トラックに轢かれての即死。

何の前触れもなく何の予兆もなくその事故は起こった。

 この交差点で、彼女は命を落とした。

見渡しもよく事故など今まで起こったこともないような交差点で。

 雨降りの中僕は呆然としていた。

 あまりのショックに声をなくしていた。

 そして僕の手に握られた携帯電話のメール受信ボックスには一通のメールがある。

 そこにはこう書かれていた。

『九月十二日、森永みずほは死ぬ』と。

 僕はそれを思い出して携帯電話を取り出す。

 震える手で携帯電話を開く。

 そこで今まで体験したことのないような、得も言われぬ頭痛と吐き気に襲われ僕は意識を失った。


 ジリリリリとけたたましくなる目覚まし時計の音で僕は目が覚めた。

 とてつもなく酷い夢を、悪夢を見たような気だるさを感じながら身体を起こし今日の日付を確認する。

 九月十二日、休日、カレンダーの予定表にはクラスの皆と遊びに行くという事が書かれている。

 早速テレビをつけ今日の天気を確認すると夕方から崩れるようだがそれまでは比較的過ごしやすい天気になりそうだ。

 準備のほどは昨日の内に全て済ませてあるので出発にはまだ少しばかり時間はあるが、僕は家を出ることにした。

 なんというかせっかちな性格の様で、昔からある程度の余裕を持たないと安心できない。

 家を出て数メートルほど歩いたところでメールの着信音がなる。

 きっと今日の予定の確認に誰かが送ってきたものだろうと思いメール着信画面を開いてみると差出人は不明、件名は無し本文にはこう書かれていた。

 『九月十二日、森永みずほは死ぬ』

 誰かのいたずらなのか?と思い何の気にも止めずにそっと携帯電話を閉じる。

 実際のところ僕が森永に惚れているという事実はクラスの男子には結構知れ渡っている。

 時たま彼女のいないところではその事をネタにいじられてもいる。

 僕としては惚れていることを知られているのはとてつもなく不快に思っているのだが、幸いにも森永本人にその話が伝わっていないということだけが救いだ。

 いや少しだけなら伝わっていてもいいのかもしれないとも思ってはいるのだが。

 まあ、そんな感じなのでこれも誰かのいたずらだろうと決めつけ気にも止めなかった。

 

 集合場所は学校の校門。

 どうやら一番乗り、ではないらしい。

 校門には三人ほど人影があった。

 一人は森永みずほ、そしてその友人の木村志保理と谷村紗。

 「おはよう」

 と、一応僕の方から声をかけてみる。

 三人の視線が一度に僕に向けられたのには少したじろいだがそれぞれ

 「おはよう」

 「おはようございます」

 「おはよっす」

 と、返された。

 「三人とも早いね」

 「まあね!つっても森永が落ち着かないって言うから無理やり引っ張りだされたような感じだけどさ」

 谷村はちょっと呆れ気味に応えてくれた。

 続いて

 「そうなんですよ、いつもいつも森永さんは待ち合わせの時間の四十五分前に着いてないと落ち着かないと言うのですよ」

 木村は同意する。

 「ちょっと、確かにそうだけどなんか私悪者になってない?」

 慌てて反論する森永。

 「分からないでも無いよ、僕も待つのは苦にならないけれど待たせるのは気が気じゃないからさ」

 一応フォローをいれておく。

 「だよね?ほら志保理、紗、ここに同意者が居たよ!」

 「でもさすがに四十五分前は早すぎるかな?」

 そして落とす。

 「うう〜」

 がっくりと肩を落とす森永。

 可愛い。

 こうして談笑出来るのであれば少しばかり早めに家を出て正解だった気がする。

 そこからちらほらとクラスメイトが集まりだし、結局全員集まったのは集合予定時間の十五分後だった。


 「はい、注目!」

 今回の企画者の仲谷和雄が集まっているクラスメイト達に声をかけた。

 「まあ、時間を少しオーバーしましたがこれも概ね計画通りなんで、気にしないで出発!」

 ちなみに今日行くのは河川敷だ。

 昼にバーベキューをして夕方には帰る、それくらいしか予定は決めていない。

 つまりほとんどの時間が自由行動で好きに遊んでいいということ。

 釣竿を持ってきている者もちらほらといる。

 僕はと言うと日光浴でもしながら本を読もうと読みかけの小説を持ってきている。

 ぞろぞろと歩き出し目的地へと向かう。

 休みの日にこんな大所帯で行動することを想像出来なかったが案外このクラスはおとなしいクラスの様で時間のルーズさ以外はしっかりしているらしい。

 かれこれ四十分程歩いたところで目的地の河川敷にやってきた。

 「おい、森永にはいつ告白するんだ?」

 からかい半分で野球部の伊達充が小声で話しかけてくる。

 「あー、うんそのうちなー」

 曖昧に茶を濁しつつ応えるのが様式美となっている。

 だが今回はそれでは済まなかった。

 「今日なんてせっかくのチャンスだろ?俺とあと二、三人くらいであの取り巻き二人から森永を引き離してやるから今日は二人で帰れ、そして告白しろよ」

 「は?」

 「応援してやるって言ってるんだよ」

 「そんな急に言われても」

 「ま、そういう事だからしっかり決めろよ!相棒!」

 「誰が誰の相棒だよ」

 「逆に何も無かったら見損なうぜ?じゃそうと決まれば根回ししてくる」

 ビシッ!と敬礼の真似事をして伊達は去っていく。

 どうするんだよ。


 ああだこうだと考えている内に持ってきた本の一ページも読めずに解散の時間になってしまった。

 なんか緊張する。

 伊達は言ったことはかなりの確率で実行することのできる男だ。

 間違いなく今日俺は森永と二人で帰ることになる。

 「も〜り〜な〜が〜」

 谷村がニヤニヤしながら森永の方に大声で駆け寄っていく。

 「どうしたの?紗?」

 「私と志保理ちょっと帰る前に伊達たちとカラオケ行く事になったんだ!ちょっと遅くなるかも、森永んちは門限厳しんだよね?」

 「え?一緒に帰ってくれないの?」

 「うん、でも彼が送ってくれるって言うから一緒に帰りなよ」

 ニヤニヤしながらこちらを指差す。

 なるほど、谷村と木村に俺が森永に惚れている事を話したな。

 「え?でもそんなの悪いし」

 「大丈夫、大丈夫確か家の方向も同じだってさ!ね!」

 といきなり話を振られたものだから僕はビクッっとしてしまった。

 「あ、うん。海の目交差点までなら送っていくよ?」

 確かに帰る方向は一緒なのだが、その交差点で別れなければならないはずだ。

 「じゃ決まりだね!じゃ森永バイバイ!」

 そして谷村は僕に向かい聞き取れるかどうかの声で

 「頑張りな」

 といい残し伊達のいる方へ行くのであった。

 あの集団は皆してニヤニヤしながらこちらを見ている。

 さてどうするか。


 「急にごめんね?」

 「謝ることじゃないよ、帰る方向も同じなんだし」

 「でもカラオケに行きたかったんじゃないの?」

 「そうでもないよ、僕は音痴だし」

 他愛の無い会話でも僕の胸の鼓動は通常より早く進んでいる。

 幸い森永は話上手で会話が途切れることは無かった。

 そして海の目交差点に到着した。

 「家まで送っていこうか?」

 「いいよ、もうすぐそこだし!悪いって、ありがとうね」

 そういい信号が青になるのを待つ。

 ぱらぱらと雨が降りだしてきた。

 「これは降るね」

 「うん」

 言いかけたところでザーザーと雨が強くなる。

 「雨宿りしようか?」

 僕が言ったところで信号が青に変わる。

 「信号も変わったし急いで帰るよ、じゃ気をつけてね!」

 横断歩道を渡る森永だったがそこに急カーブで曲がってくるトラックが来た。

 見通しも良くおおよそ事故など起こったこともないような交差点、トラックの運転手も歩行者を見落とすなんて無かっただろうが、トラックは正確に森永の方へとスライドしてくる。

 「もりなっ!」

 轢かれていた。

 森永はトラックに轢かれていた。

 何の前触れも無く予兆もなくその事故は起きた。

 なすすべなく、僕は震えていた。

 森永の元へ駆け寄ることも出来ず、朝のメールを思い出していた。

 『九月十二日、森永みずほは死ぬ』

 いや、それだけじゃない。

 この光景は既に見ていたんだ。

 既視感などでは片付けられないほどに僕はこの光景を知っている。

 なぜ今まで忘れていたのか、逆にその事のほうが今となっては不思議でしょうがない。

 そこで僕は得も言われぬ頭痛と吐き気に襲われ意識が飛んだ。


 ジリリリリとけたたましくなる目覚まし時計の音で僕は目が覚めた。

 酷い夢、悪夢、いや現実か?

 だが今日の日付を確認してみると九月十二日。

 「何が起きているんだ・・・?」

 いやそれより森永は?

 あの事故では即死だった。

 しかし・・・。

 僕は荷物を取り急いで学校へと向かう。

 その途中で携帯電話が鳴る。

 僕は恐る恐る携帯電話を取り出し、メール着信画面を開く。

 『九月十二日、森永みずほは死ぬ』

 だから何なんだよこのメールは、頭に来て僕はメールに返信してみる。

 『お前は誰なんだ!?』

 しかし、宛先無しですぐにメールは返ってきた。

 「くそっ!」

 とりあえず学校へ、今日が本当に九月十二日なのであれば今森永は学校の校門にいるはずなんだ。

 学校に着くとそこには人影が三人。

 森永と谷村と木村。

 僕は慌てて森永の方へ近寄り

 「事故は?森永が無事か?」

 しかし、森永はきょとんとした顔で

 「事故?何のことかな?」

 やはり夢だったのか?

 「ちょっとちょっと、来ていきなり何言い出してるのさ!とりあえず挨拶をしよう!はい!おはよっす」

 谷村の声で僕は落ち着きを取り戻した。

 きっと悪い夢だったんだ。

 現にそうではないか、今日は九月十二日、あれが現実であれば今日が九月十三日になっていないと辻褄が合わない。

 そうだあれは夢だったんだ。

 「おはよっす!返事は!?」

 「あ、ああ、おはよう」

 「うむよろしい!」

 どこか満足そうな谷村だった。

 「おはようございます」

 「おはよう」

 木村と森永が続いた。

 「それにしても早いな」

 さっきまでの焦りが恥ずかしくなって話題を帰ることにした。


 結局全員が集まるまで集合予定時間を十五分過ぎていた。

 まあ、それでも当初の予定通り事は進むわけで、そこから四十分程歩き目的地の河川敷に着いた。

 「おい、森永にはいつ告白するんだ?」

 からかい半分で伊達が小声で話しかけてくる。

 何故だろうか?やはり既視感がある。

 てきとうにあしらう事にしたが、思いもよらず今日は「森永と二人で帰れ、そして告白しろよ」と指示が出てしまった。

 伊達は一度言葉にしたことはかなりの確率で実行してしまうほどの行動はの人間だ。

 やはりこのままでは森永と二人で帰ることになるのだろうか?

 しかし何故僕が森永に惚れていることがクラスの男子の大半が知る事実になってしまったのだろうか?

 思い出したくない。

 幸いにして森永には伝わっていないことが救いだ。

 しかしそれも時間の問題だろう。

 きっとこのままでいるわけにはいかない。

 ならばいつか告白はするべきだが、今日それをするのは突然過ぎやしないか?

 そんな事をああだこうだと考えている内に解散時間が来てしまった。

 「も〜り〜な〜が〜」

 谷村だった。

 谷村が大声で森永の元へ走って行き、何やらしゃべっている。

 ニヤニヤしながら。

 おそらく伊達による根回しだろう。

 あいつ、谷村に話しやがったな。

 そこからなんだかんだがあり森永と帰ることになってしまった。

 「頑張りな」

 と谷村は僕にしか聞こえないくらいの小声で応援してくれたが、大いに迷惑だった。

 海の目交差点まで送ることになったわけだが、正直会話が心配だった。

 もちろん僕には告白する勇気は今の段階ではまだなく少し仲良くなれればいいなという位だったが、森永は話し上手だった。

 交差点につくまでほとんど会話が途切れることもなく変な沈黙を作らずに話してくれた。

 とてもありがたい。

 「家まで送っていこうか?」

 信号待ちの時間に僕はそっと言ってみた。

 「いいよ、もうすぐそこだし!悪いって、ありがとうね」

 そこで雨がぱらぱらと降りだしてきた。

 あれ?これってどこかで見たような。

 「これは降るね」

 「うん」

 言いかけたところでザーザーと雨の音が変わる。

 「雨宿りしようか?」

 と僕が言うと信号が青に変わる。

 「信号も変わったし急いで帰るよ、じゃ気をつけてね!」

 「ちょっとまって」

 瞬間僕は嫌な光景が脳裏をよぎり、必死で森永の右腕を握り

 「やっぱり雨宿りしよう」

 と言っていた。

 何故だろう、この交差点を渡らせてはいけない気がした。

 ぐいっと有無を言わさずに引っ張り森永の行動を止めた。

 その数秒後トラックが急カーブしてきた。

 もし森永が横断歩道を渡っていたらちょうど轢かれていただろう。

 その光景を見て何故か僕はホッとしていた。

 そこで手を話した。

 「ごめん、なんでもない」

 キョトンとした森永だったが、目の前を通り過ぎたトラックに対し

 「安全運転して欲しいよね」

 とちょっとだけ愚痴っていた。

 「じゃ私は帰るね!送ってくれてありがとう」

 「いいよ、じゃまた学校で」

 「バイバイ」

 雨の中森永は小走りで横断歩道を渡っていく。

 その後姿にほっとし僕も家路につこうとした。

 が、衝突音。

 鈍い、鈍い音が聞こえた。

 振り返ると森永は赤信号を無視したであろう大型のバイクに轢かれていた。

 頭から出血しており辺りに流れ出していた。

 おそらく即死。

 ピクリとも動かない森永みずほ。

 「どうして・・・」

 振り絞るように声を出そうとしてみたが、出なかった。

 僕は恐る恐る携帯電話を取り出しメールの画面を開く。

 『九月十二日、森永みずほは死ぬ』

 そこでまたあの頭痛と吐き気に襲われ意識を失った。


 ジリリリリとけたたましくなる目覚まし時計を僕は見つめていた。

 夢だったのか?また悪い夢を見ていたのか?

 今日の日付を確認してみても九月十二日。

 何が起きているのだろう?

 普通に考えれば夢なのだろう。

 だけど、いや今日の日付は九月十二日。

 はやり夢なのだろう。

 僕はそう自分に言い聞かせた。

 一抹の不安は拭い切れない。

 可能性の一つとして今日という日を僕は何度も繰り返しているという可能性。

 では何故僕なのだろう?

 そして何故今日九月十二日なのだろう?

 世界は僕に何を期待しているのだろう?

 わけもわからないまま僕は学校へと向かった。

 その途中あのメールが来るのを知りながら。


 やはり、なんだかんだあって森永と二人で帰ることになった。

 可能性の一つ。

 僕はこの九月十二日をループしている。

 「なあ、森永」

 「ん?」

 「ちょっと笑わないで聞いて欲しいんだが、もし今日という日をループしているとしてそれは何故その現象が起こるのかとか考えたことあるか?」

 「結構ロマンチストなんだね」

 「もしもの話だよ」

 「そうだね、小説だとそういうのは何か解決が難しい事件が起きているはずなんだよ。だからその事件を解決して欲しいんじゃないかな?」

 「事件を解決か・・・」

 珍しく今回はその後沈黙が出来た。

 それを破ったのは僕で、

 「森永、ちょっと見て欲しいんだけれども」

 そういい、携帯電話のメール受信画面を見せる。

 『九月十二日、森永みずほは死ぬ』

 その文面を。

 「なにそれ、ふざけてるなら怒るよ?」

 「俺は今日九月十二日を何度かループしているみたいなんだ。森永が死んでいる現場も何度も見ている」

 「・・・」

 「今日これから海の目交差点で雨が降る、それを合図にトラックが突っ込んでくるんだ、それを待って交差点を渡っても信号無視をする大型のバイクにっ!」

 「そんなこと言う人だと思わなかった、もういいよここで、そんなに私と帰るのが嫌だったの?」

 「違う!」

 「いいよ、ついて来ないで!」

 森永は怒って先へ行ってしまった。

 僕はどうすればよかったのだろうか?

 このまま追っかければまた結果は変わっていたのだろうか?

 それでも僕はとぼとぼと気力なく歩くだけだった。

 そして海の目交差点へ着くと森永が倒れていた。

 「森永!おいどうした森永!」

 「ちょっとあんた近づくんじゃないよ!」

 近くにいた通行人のおばさんに止められた。

 「電線が切れてるのよ」

 「え?」

 見ると森永の倒れているすぐそばに切れた電線がバチバチと火花を散らし転がっている。

 「森永は?森永はどうして倒れてるんだ!」

 通行人のおばさんは伏し目がちに

 「運が悪かったね・・・」

 それでなんとなく察してしまった。

 ああ、またきっとこれからあの頭痛と吐き気が来るんだ。

 雨が降る前に僕の意識はなくなりまた九月十二日の朝を迎える。


 ジリリリリとなる目覚まし時計をどうにも止める気にもならないほど無気力になっていた。

 このまま何もせずに一日を過ごしたらあるいは森永は生き残れるのではないのか?

 原因は全部僕で、僕がいるから森永は死んでしまうのではないのか?

 では何故森永が死ぬことを知らせるメールが届くのか?

 やはり僕が何か行動しなければならないのか?

 わからない。

 僕はその日仲谷に電話をして休むことにした。

 電話を切ったその直後にあのメールが届いた。

 『九月十二日、森永みずほは死ぬ』

 それでも僕は何もする気が起きなかった。

 ただただ、ぼんやりと部屋の天井を眺めていた。


 おそらくそろそろ解散の時間だろう、僕はなんとなく海の目交差点へ向かって歩いていた。

 ただただ、この時間にさえ森永が交差点を渡らなければ全て終わる気がして。

 だけど森永は来た。

 一人で歩いてきた。

 「あれ?」

 彼女はこちらに気づいたようだ。

 「体調は大丈夫なの?」

 ああ、そうだ僕は体調不良ということで今日休むことにしたんだ。

 「ん?」

 キョトンとした顔でこちらの顔を覗きこんでくる。

 僕は泣き出しそうになっていた。

 「ちょっとどうしたの?」

 言い終わる前に僕は森永を抱きしめていた。

 「ちょっと・・・照れるな〜あはは」

 そこで僕は言葉を紡いでいく。

 「森永・・・僕は君が好きなんだ・・・死んでほしくない、何を言っているのか・・・と・・・思うかもしれない。だ・・・けど君は、この交差点を渡ろ・・・うとする・・・と死ぬんだ。僕は今日九月・・・十二日を何度・・・も繰り返して・・・いる。だからわかるんだ・・・。君から見たら僕は・・・頭がおかしくなってしまっ・・・たかと思うかも・・・しれない。でも信じてくれ、僕は君を守りたい・・・この交差点を渡らせはしない」

 「大胆な告白だね・・・嬉しいな」

 「僕が森永の事が・・・好きなのは今はどう・・・でもいいんだ、ただこの交差点は渡らせない」

 そういい僕は森永の手を取り交差点とは逆の方向へ歩く。

 とぼとぼと。

 力なく。

 「ちょっと!私門限が・・・」

 「門限と命どっちが大事なんだ!」

 つい、大声になってしまった。

 「・・・それは命だと思うけど」

 「ごめん、何も言わずについてきて欲しいんだ」

 向かった先は町の交番。

 そこには従兄弟の兄さんが居る。

 そこで今日を乗り切れば。

 『九月十二日、森永みずほは死ぬ』

 つまり、十三日になれば、一秒でも今日を過ぎてしまえば森永は死なずに済むのではないだろうか?

 何の算段もなく思っただけで行動していた。

 そして交番についた。

 「おっす〜よく来たな!隣の子は彼女か?やるな〜」

 従兄弟の兄の光博は陽気に出迎えてくれた。

 「光博兄さんお願いが有るんだけど・・・」

 「なんだ?出来る事なら手伝うよ」

 「今日の間だけでいい、九月十二日が過ぎるまででいいんだ、僕達をここにいさせて、仕事の邪魔はしないから」

 「いきなり言われても、君たち未成年じゃないか警官としてはそういうの良くないんだよ」

 「保護とかそういう名目でもいいからさ、とにかく今日が終わるまででいいんだ!十二時が過ぎるまで」

 「そうは言ってもね・・・彼女さんはどうなの?」

 と森永に話を聞いてみる。

 「私もよくわからないままここに連れてこられて戸惑っては居るんですけど、彼とても本気みたいで、それに悪気が有るわけでも無さそうなのでどうしていいものか」

 「う〜ん」

 「光博兄さん!」

 「わかったよ、だけど一応親御さんには連絡しといてよ?名目上保護という形で置いとくから、あと俺は十二時で交代だからさそれ以上は匿え無いぞ?」

 「ありがとう、十分だよ。森永さん」

 「はい」

 「ごめんね、勝手して。とりあえず家には電話して置いたほうがいいかもね」

 「そうだね、うん。十二時に迎えに来てもらえばいいのかな?」

 「そうだね、十三日になればいいんだ」

 「わかったわ」

 と言い、森永は携帯電話を取り出し家に電話をしていた。

 しきりに謝っている姿を見るととても申し訳ない気持ちになる。

 「うん、お父さんも交番にいるのならって許してくれるみたい、でも一応警察の方に変われって」

 「あ〜、はいはい了解しました」

 と携帯電話を受け取り対応する光博兄さん。

 「はい、海の目交番の光博と言います。あ、いえいえ補導とかではないですはい、一応名目上は保護ですかね?ああはい確認の為交番に電話をしたい?はいわかりました、番号はわかりますか?はい、それであってますそれでは失礼します」


 僕は震えていた、怯えていた。

 それを見て光博兄さんは温かいコーヒーを出してくれた。

 外はもう雨が土砂降りで雷までなっている。

 「それにしても疲れた顔をしてるな、何があったんだ?」

 「多分言っても信じられないと思うよ?」

 「まあこの時間は暇なんだ、その信じられない話とやらを聞かせてくれよ」

 「どうやら僕は九月十二日を何度も繰り返してるらしい」

 「あははははは」

 光博兄さんは笑った。

 森永は戸惑った顔をした。

 僕は笑わなかった。

 「ごめん、ごめん、続けて」

 「何度も繰り返していて、その最後が必ず森永さんが死ぬんだ、トラックに轢かれ、大型バイクにはねられ、時には電線が切れそれに当たって・・・もしかしたら覚えてないだけでもっともっとたくさん繰り返してるかもしれない。正直もう何をしていいのかわかってないんだ、朝にメールが届くんだ。『九月十二日、森永みずほは死ぬ』そう書かれたメールがほらっ」

 着信画面を見せる。

 「最初は誰かのいたずらかと思ったさ、だけど差出人に返信してもメールは宛先不明で返ってくる悪ふざけにしては手が混んでるし、そもそも何故僕にこんなメールが届くのかも分からない。差出人の意図も分からないしただのいたずらだと思うでしょ?でも死ぬんだ・・・森永さんは。僕は何度も何度も見てきた。海の目交差点で森永さんはいつも死ぬんだ。だから交差点を避けてこの交番にいれば森永さんは死なずに済むんじゃないかって、そう思って今日は来たんだ。信じられないよね?僕だって信じられないさ。だけどこれが僕の現実なんだ。森永さんも僕のこと気持ち悪いとか思ってるかもしれないけど、これは完全に僕の自己満足のためにやってることなんだ。だからもし家に帰って親に怒られるんだとしたら僕を恨んでくれてもいい、だけど僕は森永さんには死んでほしくない。森永さんの事・・・好きだから」

 「熱々だね〜」

 と茶化す光博。

 「信じがたいな〜。まあでもその話が本当だとしたら、この交番にいれば大丈夫だろ?交差点から離れてるし、森永さん?だっけ?の親父さんが来たら僕も一緒に謝ってあげるよ」

 「私なら大丈夫だよ、それに私はそんな顔して嘘をつくような人間を見たことがないよ。信じる」

 「ありがとう」


 雨は降り止まない。

 雷も酷くなっていくばかりだ。

 「それにしてもなかなか雨降り止まないな」

 「天気予報によると明日の朝まで降るらしいですよ」

 「そっか、帰るときは気をつけろよ」

 「うん」

 「さてと、兄さんはちょいと残ってる仕事済ませるから何かあったら呼んでよ」

 そう言い残し奥の部屋へ去った。

 「森永さん、ごめんね」

 「さっきから謝ってばかりだね」

 「だって・・・こんなの傍から見れば僕の自己満足の為だけだし」

 「いいよ、それにまだ私あなたの気持ちに応えてない」

 「あっ・・・」

 そうだ、僕は勢い余って告白までしてしまっているんだ。

 「私に好きだって言ってくれる人がいるとは思わなかったな〜。」

 「・・・」

 「嬉しいよ、それがあなただったからなおさら。私もね実は君のこと好きだったんだ。紗ちゃんや志保理にはなんであんな冴えない奴なんて言われていたんだけどね」

 あの二人・・・。

 「それでもなんでかな?自分でも分からないんだけどあなたに惹かれる私がいたんだ。気がつけばあなたの事を目で追っていた事が何度あったかな?数えきれないよ、だから本当に嬉しい手、繋いでもいいかな?」

 「うん」

 そうして僕らは壁にもたれ座りながらお互いの手を握っていた。

 

 壁にもたれながら少し眠っていたようだ

 時計を見ると時刻は二十三時をとうに過ぎていた。

 このままいけば今日が終わる。

 今日が終われば森永は死なずに済む。

 ただそれだけだ、それだけがこんなにも長い。

 「おっと起きたか?」

 光博が言う。

 「あまりにもよく眠ってたからさ、起こすのもなんだし、それにあまりにも絵になってたぜ?手を繋ぎながら眠る男と女、く〜俺が画家だったら一躍有名になるくらいの絵に仕上げていたぜ」

 「光博兄さん・・・」

 「そんな顔で睨むなよ、それにそろそろ時間だろ?無事今日が終われば円満解決ってね」

 「うん」

 「さて俺の勤務時間もそろそろ終わりだぜ、帰ったら何しようかな〜」

 と伸びをする。

 「そういえば光博兄さんはなんで警官になったの?そういやあんまり聞いたことないよね。小さい頃は柔道家になるっていって道場通ってたのに」

 「まあ、警官でも柔道は続けられるからね〜それに市民の安全を守る!素晴らしいじゃないか!」

 「兄さんがいうと白々しいよ」

 「はは、まあそれも一応本気で思ってるんだけど一番はこれかな?」

 そういうとニューナンブM60を見せつける。

 撃鉄を起こしながら。

 「日本で銃を持てる職業は限られてるからね」

 「そういや小さい頃モデルガンの的にされたっけ・・・」

 「あはは、悪かったって、でも当たり前だけどこれは使う機会が来ないことを祈るよ」

 「そうだね」

 と銃をしまう動作で銃口がこちらを向いた刹那。

 パン。

 乾いた音が鳴り響いた。

 「えっ?」

 何の脈絡もなく、前触れもなく、予兆もなく、銃が暴発した。

 通常暴発防止の為、一発目は空砲になっているはずだが、事実として実弾が出てしまった。

 当然空砲になっているから光博は撃鉄を起こしたわけで決して撃つつもりは微塵もなかった。

 撃鉄を起こしたのもただ見栄を張るためであり、しまう際にリボルバーを外し銃弾を全弾抜いてから元に戻すつもりではあったのだが実弾が出てしまった。

 そしてその先にあったのは森永みずほの頭部。

 即死だった。


 彼女はどうしようもなく死んでいた。

 そう、森永みずほは死んでいた。

はじめましての方ははじめまして

どこかで会っている方はお久しぶりです

negidarakeです

なんとなくループものを作ろうと書いた作品です

結構前に書いたのでどうなんでしょう?

誤字脱字があるかもしれませんのでご了承ください

ループものである以上何かをきっかけに自体は好転していくのが鉄則ですが、そのまま終わりを迎えずに終わる

こういう作品が合っても面白そうだなと思い書きましたがいかがでしょうか?

とりわけ森永さんには何度も死んでもらっているので全国の森永さんには大変申し訳が立ちませんが

ちなみにこの世界の13日はどうなっているんでしょうかね?

僕にもわかりません(笑

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