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海洋機構物語  作者: FORCE
混沌期
6/13

お金よりも大切な物

海洋同盟の会議室。

「……三日月同盟からの商談の申し込みですか?」

「はい、向こうから、うちと『ロデリック商会』『第8商店街』の4ギルドで話し合いたいことがあるという事でした。

 どうしましょうか? 相手のギルドの大きさを考えるなら【ましゅまろ】さんに任せるのもありですが……。」

食品薬品部門担当の名前を上げるがミチタカはかぶりを振る。

「俺が行く。あいつらの目的はわからんが、おそらくここが最大のチャンスだろう。

 ここでギルドマスターが行かなかったら、ロデリックかカラシンに商売のチャンスを奪われるだろうな。」

『ロデリック商会』と『第8商店街』のギルドマスターの名前を上げつつミチタカは道筋を考える。

(考えられる目的としては素材アイテムの確保か新店舗確保の人員集めか)

そう考えつつも、どの条件にどれだけのリソースを渡せるかなど相談しつつ、ミチタカはリストに目を通す。

「というかミチタカさん。向こうで何を話されるかわかりませんけど念話でこちらに詳細を伝えながら教えてください。

 条件次第じゃ即座に承諾した方が良いかもしれませんのでこちらに連絡ください。」

「わかった。」

そう言ってミチタカは席を立った。


次の日、またまた海洋同盟の会議室

「……しかし、100名に満たないギルドが2500名のギルドのボスと対等に話し合うというのは痛快だな。」

幹部達の声はやや余裕気味だ。それもそうだろう。交渉内容が気になるが、流石に『対価なしに何かをしてくれ』と言うのは流石にないだろう。

3大生産ギルドを全部呼んで会談をすると事は、何か補助してほしいという事だろう。

ミチタカの席には通信用引用のメンバーが座っている。

「………念話来ました!!

 そう言えばマナー的にこういうのどうなんでしょう?」

「………………………携帯電話しながら商談してるんだからな………。

 まあ、テレビ会議の性能の悪い奴と考えて良しとしよう。」

とりあえずの結論が出たところで、会議場は静かになる。

「……クレセントムーンは素材アイテムの調達を第8商店街に依頼したそうです。」

「「なっ!!!」」

その言葉に会議場で悲鳴が広がる。

「あっちはチャッター(会話好き)の集まりですからね。小さな所とも繋がりがある以上、素材アイテム収集には都合がいいのでしょう。」

汗をだらだらとたらしながら幹部の一人がそういう。

「………んで他にも用事があるみたいですね。」

「………そっそうか。」

「何か新しい挑戦をしたいそうです。」

「は?」

その言葉に幹部の言葉が詰まる。

「先導者は『放浪者の茶会』のシロエ、他3名いるらしい。」

「何っ! あいつがか!!」

「あの<料理人>のにゃん太もいるらしです。」

「……と言う事は何かクエストを行っていて、早急に『何か』が必要なんだろうな。」

「んで、一体何を必要としているんだ?」

「金貨500万枚。」

通信で伝えられたその言葉に全員が息をのむ。

「それは………うちなら全額余裕で出せるな。対価はなんだ。それ次第じゃ他の奴等に渡せないな。」

「今行っている料理のレシピと挑戦で得られたレシピらしいな。」

「気前良いな。おい。なるべくなら占有したいし、金貨500万ぐらいなら何とか余裕で出せると思うが……。」

もはやクレセントムーンの料理は、手に入れさえすれば金のなる木なのは決まっている。それをポンと渡すのはそれほどまでに金貨が欲しいからだろう。

「毎日毎日、あいつらが1日も休まずに朝から晩まで働いていたのは、金が必要だったからか………。

 へえ、資産も処分して50万まで稼いで………あれ?」

「どうした?ミチタカさんがどうかしたか?」

「いえ、ちょっと疑問が出てきたんですけど……。」

「今はミチタカさんとの会談が大事だ。疑問は後回しにしろ。」

「りょ、了解です!!

 ろっロック鳥のスペシャルプリンだ……と。……くっ食いたい……実に食いたいっ……。」

その言葉に連絡係の口から涎が流れ出す。つられて他のメンバーの口からも涎が流れ出す。

「なっ何ッ! そんな料理があったのか!!」

「今までの〈エルダー・テイル〉で聞いたことすらない料理………まさか別の新しい〈レシピ〉を手に入れていたのか!」

「能力値上昇は?」

冷静に幹部の一人が声をかける。

「今ミチタカさんに確認します………

 ………無いらしいですね。どうやら味のする料理は能力値アップの料理よりレベルが上らしいですね。」

「一体運営は何を考えていたのやら。」

そう言って幹部達は苦笑いをする。味などゲーム的には意味が無いのにレベルが上とはどういう事だと思っているらしい。

彼等は一切疑問に思っていない。『何故能力上昇しないのか』なんてのは『確かに味がする料理』に比べたらちっぽけな物だと思っているからだ。

「………1ギルドあたり150万欲しいという事ですが………。」

「450万全額俺達が出す。全部かっさらうにはそれが一番だ。」

幹部達の声を聴きながらその旨をミチタカに伝える伝達係。

「……駄目だったみたいですね。3ギルド平等にと言う事らしいですので……。」

「まあ、後のレシピ争奪戦で勝てれば良いか。そういえばお前なんか言いたそうだったが、一体何だったんだ?」

念話が終わった瞬間に幹部達が連絡係の男に言う。

「いや、何で三日月同盟のメンバーはそこまで挑戦に拘るのかなって?」

「どういうことだ?」

「毎日毎日朝早くから夜遅くまで働いて、金稼ぐのはわかりますよ。

 でもそれを他人の挑戦に使われるのをどうして我慢できるんです?

 シロエって確かに有名人ですけど、他人の新しいクエストの為に、わざわざ自分達のお金を使われても何も言わないなんて変だと思います。」

その点は確かに変だ。現在三日月同盟は<クレセントムーン>の売買に人的リソースの大半を費やしている。

それでクエストに成功すればシロエの物、三日月同盟が得る物は少ないだろう。

新しい<レシピ>を見つけたとしても一人当たりの販売量を増やすことができない以上、三日月同盟がこれ以上金を稼ぐことは不可能のはずだ。

それぐらいなら『新しいレシピ』を売り払って挑戦は別のギルドに任せた方が、他の事もできるようになるはずである。

それをしないのは、その挑戦が三日月同盟にお金以上の価値があるからだろう。


自分達は何か重要な事を見落としてるのではないか……幹部達はすさまじい不安に襲わるのであった。

今回、商談途中で念話OKとしてますが、これは公式設定ではありません。

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