料理で世界征服
今回はパロディ全開です。元ネタが全部わかるひとは多分いないと思います。
食事処≪クレセントムーン≫。その売り上げは1日で金貨約4万である。その上にまだまだ供給が追い付いていないとなるとまだまだ売る事ができるのである。
もし全ての冒険者に食料を売る事が出来たのならその販売益はコストなどを考えたとしても1日金貨10万以上は計算される。
これは海洋同盟の現総売上全てを合わせた金額を上回る。
海洋機構の会議室
「………何もわからずじまいか。」
「ギルドハウスの中で作られてるってのはわかりますけど、侵入は不可能ですからね。持ち運んでるアイテムもバッグ内が基本ですし、こっそり奪うってのも難しいですね。」
報告書を読みながら、幹部面々は渋い顔をする。
「いずれにせよ、もしこのまま三日月同盟の独走を許すようだったら、あいつらはアキバ、あるいは日本サーバ全体。最悪の場合世界征服までできかねない。」
「は? お前何言ってるんだ。高々料理だろ? そんなもの世界征服ができたら苦労はしないよ。」
幹部の一人の言葉に別の幹部が言葉を返す。
「そうだぜ。大体料理で世界征服ができたら苦労はしないよ。漫画かアニメの見すぎじゃないか?
料理で巨大化して城ぶっ壊しちまうみたいな。」
その意見に他の幹部達は気の回しすぎだと言わんばかりの態度で窘める。だがその男は真面目に返事をした。
「もしこの事態が世界中で起きているのなら、世界中で味のしない料理が蔓延しているわけだ。
その中で唯一味のする料理をできるギルドがあるのなら……そのギルドは世界を征服できる!!
もっとましな場合でも料理でアキバの町を征服する事ぐらいならできるはずだ!」
その男の言葉に一同が突っ込む。
「だいだい、世界中で起きてるかどうかも分かっていないんだぞ!」
「アキバ征服って、三日月同盟のギルドマスターがアキバの顔役になるとでもいうのか!」
「たかだか料理だぞ! そんなもので街一つを支配できてたまるか!!」
次々となされる反論にその男は反論をする。
「じゃあ聞くが、お前達はこれから先永遠にあの味のしない料理なと言われて我慢できるか?」
「「ッ!!」」
そのあまりにも的確すぎる返しに幹部一同は言葉を失う。確かに自分達はあの料理の味を忘れる事は出来ない。
会議がいったん止まったのを確認してミチタカが質問をする。
「そいつはともかくとしてだ。お前達の意見を聞きたい。≪クレセントムーン≫の秘密は何だと思う?」
「≪レシピ≫だと思います。」
ミチタカの問いに幹部の一人が即座に答える。
「この世界では何を作るにしても≪レシピ≫がいります。そんな中で味がする料理が出るのは、新しい≪レシピ≫のおかげだと思います。
具体的には口が悪いせいで満点取れずに『料理は愛情』というライバルに勝てない料理人のレシピみたいな。」
「…やたら具体的だな。なんか他にアイディアがある奴どんどん言ってみろ。」
「………≪素材≫かとも考えたのですが……未知のエリアから取れる食材を使う事で味がつくようになるというのはどうでしょう?
例えばその≪素材≫のおかげでかつて戦争が終わり、今まさにその≪素材≫を巡って戦争が始まろうとしてるみたいな。」
「そんな≪素材≫があってたまるかと思ったが、そんなのがあったら戦争が起こるのは間違いないな。よし次。」
「……ミチタカさん。何でそんな事を聞くのですか?」
疑問に思った幹部の一人が声をかけてくる。
「決まっているだろ? その料理を俺達が探す為だ。」
「!!!!!!!」
その言葉に全員が驚愕する。それだけミチタカの台詞ははっきりとしたものだからだ。
「正気ですか!」「一体どれぐらいの時間と人がかかると思ってるんですか!」「ツンデレ親父とグータラ息子の仲直りよりも時間がかかりますよ!」
「正気か……だと? 正気に決まってる。料理で街を支配できる? 料理で歴史を変える?
おもしれえじゃねえか……そんだけの事が出来そうと思えるんだったらやってみる価値はあるだろう?」
「…………。」
ミチタカの言葉に全員が黙り込む。確かに価値はある。勝算については……全くない。
意外に思えるかもしれないが、もしクエストスタートに確率による判定や日数限定による判定が行われていたらそれだけでアウトだ。
例えばある場所を訪れて1/100の確率で発生するクエストだった場合、3回訪れただけでクエストが発生する可能性は約3%、50%の確率を期待して訪問する場合場合約70回の訪問が必要である。これでは全ての町を探して調べるなどは到底無理な話になるだろう。
日数限定の場合はもっとひどい事になる。例えば1年に1月のみの期間限定クエストだった場合、クエストが終わってしまえば次のクエスト開始時期は11か月の後になる。また探す方法も1ヵ所ごとに1月1回回らなければいけないのだ。
だがミチタカは自信満々に言葉を紡ぐ。
「……まだ食える奴よりも食えない奴が圧倒的に多い時期だ。この時期から追いかける事ができれば絶対に≪クレセントムーン≫に勝てる!〈料理人〉の人数はこっちの方が上だ!」
「………本当に〈料理人〉の人数で勝てるんでしょうか?」
「何?」
ある幹部の言葉に皆がしんとする。
「もしかしたら≪道具≫の可能性はどうなのでしょうか?世界中に散らばった七つの調理道具を探し出すクエストとかだった場合、最終的には七人しかその調理ができなくなります。」
「…………まあ≪道具≫も考慮に入れておこう。
とりあえず他。」
ミチタカはやや手早く次を促す。
「………≪スキル≫。」
「何だって?」
幹部の一人が漏らした言葉に全員が聞き耳を立てる。
「ですから、おいしい料理ができるようになる≪スキル≫ですよ!おそらく〈料理人〉専用≪スキル≫!
手がちょっと温かいとかそんな感じの!!」
「それって≪スキル≫というより体質じゃ?」
「……そんな名前の≪スキル≫なんだろ。他は?」
「〈料理人〉のレベルとかとも思ったんですけど、あそこにレベル91以上の料理人いたかなぁ………。」
ミチタカの問いに一同がわいわいと騒ぎ出す。答えは会議では出ない。見てきたカラスが全て黒色だから全部のカラスが黒いと思っている。
そんな中で話し合って正解にたどり着けるのは馬鹿だけである。
「………よし、それらの可能性を頭に浮かべてクエストを探すんだ。」
新しいクエストを探す。彼等は頭を上げ始めたのだ。この≪大災害≫を超える為に。
2014年2月14日 一部修正・追記