離れても――
それは突然の報告だった。
春休み。これほどショックな報告があるだろうか。
「……本当なの?かななん……」
「ああ……」
昨日のことだった――。
かななんから珍しく電話がかかってきた。
何だろうと思い、出てみた。
「もしもし?」
『もしもし、……ユウ?』
「うん。どうしたの?」
『すげぇ言いにくいことなんだけどさ……。オレさ、明日田舎に帰ることになったから……』
「えぇっ!?」
――かななんの家の前には、荷物を乗せたトラックが止まっていた。
本当なんだ。本当に、田舎に帰っちゃうんだ……。
「でも、何で……?」
「親と話し合って、向こうでやり直そうと思ってな」
かななんが私の目の前から居なくなる。
考えられなかった。考えたくなかった。
「ユウは、夢の中への現実逃避に打ち勝って、現実で頑張るって決めただろ?それを見て、オレも逃げてばっかじゃいけないなと思ってな……」
「……そんな、ヤダよぉ……っ」
涙が頬を伝う。
「泣くなよ。大丈夫だ。ユウはオレ無しでも生きてける」
「無理だよぉ……っ。そんなの……」
私は、かななんが居たから生きてこれた。
かななんが居なくなったら、私、生きてけないよ……。
「でも、もう決めたことだからさ……」
かななんの袖を掴む。
ヤダ。行かないで。私の傍に居てよ。
「……ユウ」
私の頭をそっと撫でる。
かななんは涙を見せなかった。
何で?私と離れることが寂しくないの?
私が勝手に、かななんのことを好きになってたんだ。
馬鹿みたい。
「また会えるよ。それに、メールだって出来んだろ?電話だってしてきてくれていいしさ。な?」
かななんと過ごしてきた日々を思い出す。
かななんはいつでも、私の我儘を聞いてくれた。なのに、私はいつも我儘ばかりで、かななんを困らせて……。
今だってそうだ。
「……うん」
涙を拭う。
「ごめんね……」
これ以上、迷惑を掛けちゃダメだ。
「何謝ってんだよ」
かななんが服の袖で、私の涙を拭いた。
少し乱暴だけど、それでいて、優しさが伝わってくる――。
「かななん……」
「何だ?」
最後に言わせて。
「大好きだよ」
「……サンキュ」
「段林さん、そろそろ出発しますよー」
「あ、はい」
行っちゃう。ヤダ、行かないで。
溢れ出そうな思いを、必死に堪える。
「じゃあ、な……。このこと、まだユウにしか言ってないからよ。みんなに伝えといてくれ」
そして、かななんはトラックに乗ろうとした。
また、会えるよね……?
いつまでも待ってるから。
「……ユウ」
「ん?」
かななんが私の方を見た。
「――オレも、好きだ」
その言葉を最後に、かななんは行ってしまった。
「……ありがとう」
見えなくなったトラックに向かって言う。
離れても大好きだから。
あなたが私を忘れても、私はあなたを忘れない。
向こうで、やり直せたらいいね。
笑って過ごせるのを、私は祈ってます。
たとえ、会えないまま二人が大人になったとしても、私はあなたを信じてる。
だって私達、ずっと友達でしょう?
遂に完結しました!!
ここまで読んで下さった皆様、ありがとうございました!!




