仲直り
教室に戻ると、みんな揃っていた。もちろん、かななんも居た。
「二人共、遅いよー」
「ごめんごめん」
かななんはいつものように、窓の外を見ている。
私から目を逸らすためなのだろうか……。
「――ヤエと仲直りしろよ?」
私がかななんを見ていると、胡桃が耳打ちをしてきた。
「え……?」
「あ、くるみもトイレ行ってこよーっと。とね、お前も行くぞ」
胡桃がそう言って、楽音歌の腕を引っ張る。
楽音歌は胡桃の考えを理解したらしい。
「あ、かなっしー。シズク、職員室に用事があること忘れてたー。一緒に行ってくれる?」
「ん、ああ。いいよ」
そして、みんな出て行ってしまった。
教室でかななんと二人きり……。
『気持ち伝えなよ?』
鎮紅の言葉を思い出して、恥ずかしくなる。
――いや、その前にちゃんと仲直りしなくちゃいけないんだ。
深呼吸をして、かななんの側に行く。
「――あの、かななんっ……」
そして、頭を下げた。
「この前は、ごめんなさい……!」
沈黙が長く感じる。
何か言ってよ。ねえ。
「……オレの方こそ、ごめん」
かななんが申し訳なさそうな目で私を見る。
私は直視出来ずに、目を逸らした。
「かななんは、何も悪くないよ」
「いや、オレが悪いよ」
「私が勝手にキレただけだもん」
「その原因はオレだし」
「理由も無くキレるの、私の悪い癖だもん」
「……そうか。まあ、悪いのはオレということで」
かななんは、何かあるとすぐに『自分が悪い』と言い張る。
ずるいよ。かななんばっかり責任を負ってさ。
「……ってか、クルミの奴、嘘バレバレだっつーの」
「確かに」
そう言って、二人で小さく笑う。
良かった……。仲直り出来た……。
胡桃達が戻ってくるのを待つが、一向に帰ってくる気配は無かった。
(どうしたんだろ。仲直りしたのに……)
「――ユウが事故ったときさ、オレ……、今までに無いぐらい焦った」
「え?」
かななんが突然語りだす。
「ほら、前にも言ったけどオレ……、かなりの心配性だからよ」
「ああ……」
「『死んじゃったらどうしよう』とか、ずっと思ってた」
かななん、ケンカしてたにもかかわらず、そんなこと思っててくれたんだ……。
『気持ち伝えなよ?』
うん。今なら伝えれる気がする――。
次回、癒羽が奏慧に想いを告げます。




