絶交
トイレから教室へ戻ろうとすると、向こうからかななんが歩いてくるのが見えた。
私は目を合わせず通り過ぎようとした。
「――なあ」
かななんに声をかけられる。
言われる内容は見当がついている。
「なんかさ、オレのこと避けてる?」
ビンゴ。思った通りだ。
「別に。避けてないよ」
目を合わせないまま言う。
「最近メールの返事も素っ気ないしさ、話しかけても聞いてくんねーし」
「気のせいじゃない?」
これ以上付き合うと面倒だ。
さっさと通り過ぎようとすると――。
「気のせいじゃねーだろ」
――と、腕を掴まれた。
「なあ、オレ何かしたか?ユウの気に障るようなことしたか?したんなら謝るからよ」
何でかななんは、こんなに必死なんだろう。
私と口を聞けなくても、平気なクセに。
「……かななんのためよ」
「え?」
「私はドジでマヌケでバカだから、今までかななんに迷惑ばかり掛けてきた。だから、これ以上迷惑を掛けないように、かななんから離れたの」
そう、これは、かななんのため。
「何だよ、それ。オレは迷惑なんて思ってねーよ」
「かななん言ったじゃない。『ユウはドジだから』って」
腕が痛い。放してほしい。
「……オレ、そんなこと言ったか?」
覚えてないんだ。そうか。
「もういいよ」
かななんの手を振りほどく。
「ちょっ、ユウっ」
かななんなんか知らない。
『私はかななんを絶対に裏切らない』
前に誓ったことも、もうどうでもいい。
これで、かななんに迷惑を掛けずに済むのだから――。




