お泊り⑥
「おはよぉ……」
寝ぼけ眼を擦りながら、みんなに言う。
「癒羽ったら、寝過ぎだよー」
「あはは、ごめんごめん」
時計を見ると、昼近かった。
「とりあえず、飯にすっか。今日はオムライスな」
「やったーーっ」
胡桃が大喜びする。
「とね、トランプするぞっ」
「今度は負けないからねっ!」
胡桃と楽音歌がトランプを始めた。
「――かななん、何か手伝おうか?」
台所に居るかななんに声をかける。
「ん?いや、いいよ。ユウはドジだからな」
この言葉には、かなりショックだった。
そんなに信用無いのか自分……。
諦めて楽音歌達の様子を見ることにした。
「癒羽もする?」
「するするーっ」
楽音歌の誘いで、私も加わることに。
「タユ、ヤエと話しとけよ」
胡桃が小さい声で言う。
「……いいの、もう」
「?」
胡桃が首を傾げる。
「飯出来たぞ」
かななんの言葉に、胡桃は有り得ない速さで食卓に着く。
「くーちゃんったら、よっぽどオムライスが食べたかったんだね」
「だーから、ちゃん付けはやめろって。ヤエーっ、早くーっ」
「はいはい、ちょっと待ってろ」
私は一人、トランプを片付けていた。
「癒羽も食べよー」
「あ、うん」
かななん手作りのオムライスも、カレーと同じく凄く美味しかった。
ご飯を食べ終わり、昼の二時になった。
「そろそろ帰る?」
「そうだなー」
お泊りは一泊。本当は二泊したいところだが、流石にそれは、かななんにも迷惑だろう。
「楽しかったよ、かななん」
楽音歌が、かななんを見て言う。
「ヤエのオムライス、また食べさせてなっ」
「胡桃はオムライスだけが目的?」
みんなで笑う。
「じゃあね、かななん」
「おう。また来てくれよな」
また来ていいんだ。そう思って、少し嬉しくなる。
「うんっ」
かななんに見送られた後、私達は家に帰った。
「おかえり。奏慧ちゃん家、どうやった?」
家に帰ると、お母さんが出かけようとしていた。
「うん。楽しかったよ」
「そか。お母さん、今から買い物行ってくるわ」
「いってらっしゃい」
お母さんを見送ったあと、私は自分の部屋に入った。
携帯を開くと、かななんからメールが来ていた。
『昨日今日とありがとな。楽しかったぜ』
即行で返事を打つ。
『私も楽しかったよ!かななんの料理、最高に美味しかった!また食べたいなっ。それと――』
返事を打っている途中で、かななんの言葉を思い出した。
『ユウはドジだからな』
そうだよ。私はドジだよ。
私は、こんなドジな自分が大嫌いだった。
でも、かななんと出会ってからは、かななんが私のドジな部分をフォローしてくれる気がして、少し嬉しかった。
――それは違ったの?
それは私の思い込み?自意識過剰?
私は私なりに、このドジな部分がどうにかならないかと努力している。でも、それが見下された気がして――。
打っていた文字を全部消す。
結局、返事は『私も楽しかったよ』の一言だけにして、携帯を閉じた。




