お泊り⑤
時間が経つのは早く、気がつけば夜だった。
順番にお風呂を済ませ、布団を敷く。
楽音歌と胡桃は、修学旅行に来たみたいに枕投げをしていた。
その枕が、私の後頭部にヒットする。
「あわわっ。ごめんなさいっ!」
楽音歌と胡桃が土下座をしようとする。
「――ったく、痛ぇじゃねーかよっ」
二人に向けて笑顔で枕を投げ返す。
相当痛かったらしい。
「枕投げとか、ガキかよ」
お風呂から上がったかななんが、呆れた顔で私達を見ていた。
「ヤエもする?」
「遠慮するー」
午後11時。
そろそろ寝ないとダメだろうということになり、みんなで布団に入る。が、誰も眠れそうになかった。
「夜といえば……、ガールズトークだよねっ」
私の提案に、みんな嫌そうな顔をする。
「そんな顔しなくてもいいじゃん」
「他の話しようよー」
「ていうか、寝ようと努力しろよ」
かななんが、正論なツッコミをする。
「はーい……」
目を瞑り、沈黙になる。
時計の秒針の音だけが響く。
私は、かななんの隣で寝ている。胡桃と楽音歌が気を遣って隣にしてくれたのだ。
(かななんの寝顔……)
思わず見てしまう。
(やばい……、カッコよすぎっ!)
そう思って一人はしゃいでいると――
「何見てんだよ?」
――という低い声が聞こえた。
「わっ!?お、起きてたの……?」
「当たり前だろ。で?何見てたんだ?」
かななんがニヤニヤしながら言う。
「えっ、や、あの……」
恥ずかしーーーっ!!
穴があったら入りたいよおっ!
「フッ、ばーか。早く寝ろよ」
そう言って、かななんは寝返りを打ち、私に背中を向けた。
「――……」
かななんの服を掴む。
「おいおい、どうしたんだよ?」
「――怖いの」
「何が?」
「寝るのが」
「何で?」
「明日が来るのが怖いの。時間が経つのが早くて、怖い……」
「……」
かななんは何も言わずに、ただ私の頭を撫でてくれた。
「かななん……」
「寝てても起きてても、明日は来るぞ。大丈夫だって」
「……うん」
「ほら、今日はもう寝るぞ?」
「……あの、手……握って寝てもいい……?」
「仕方無ぇな」
かななんの手を握る。
やっぱり、安心する――。
「ありがとう。……おやすみ」
「おやすみ」
それから少しして、私は眠りについた。




