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お泊り④
ずっと目指していたマンガ家。
小学中学と、勉強が嫌いな私は、勉強より画力を上げることに力を入れていた。
そんな私に対する親の言葉がこれだった。
『いつまでも夢を見るな。マンガ家なんかで食ってける訳無いだろ。いい加減、現実を見ろ』
夢を見ていいのは小学生まで。
中学生からは現実を見なきゃいけないんだ。
そして、高校生はもう大人なんだ。
応援すらしてくれない親に、私はショックを受けたんだ。
「――ユウ?」
「え、ああ、ごめん。将来の夢か……」
「無いとか?」
「……あるよ。医療事務の仕事に就くこと」
「マジで?意外」
「何で?」
「ユウってさ、絵上手いから、そっち系行くんだと思ってた」
行けるなら行きたいよ。
なりたかった。マンガ家に。
「……私の絵じゃ、まだまだだよ」
「そんなこと無ぇだろ。絶対行けるって」
行けないんだよ。無理なんだよ。
「夢を見ちゃいけないんだよ」
私は小さく呟いた。
「え?何て?」
もういいんだ。医療事務で。どうにでもなれ。
「……何でもない」
――みなさんの将来の夢は何ですか?




