お泊り③
かななんの家は、八階建てのマンションだった。
「言っとくけど、オレん家汚いぞ?」
「大丈夫っ」
かななんの言葉とは正反対で、家の中は綺麗に整理整頓されていた。
「わぁっ、綺麗じゃんっ」
「んなことねーよ。適当に荷物置いてって」
部屋の隅に荷物を置く。
「昼だな……。とりあえず、飯にすっか?」
「食べるーっ」
私達もご飯の準備の手伝いをする。
メニューはカレーだ。
「これ……、ヤエが作ったの?」
胡桃が訊く。
「そうだけど?」
「へー。ヤエって料理するんだ」
「何だよ。出来ねーとでも思ってたか?」
「さあ~」
かななんが胡桃の頭を軽く叩く。
「――あのさ」
楽音歌がキョロキョロしながら言った。
「かななん……、親は?」
一瞬沈黙になる。
かななんの顔から笑いが消えた。
かななんが一人暮らししていることを知っているのは、私だけだ。
「……今、親は出張中なんだよ」
かななんの嘘に、楽音歌は疑うことも無く納得したようだ。
「いっただきまーすっ」
みんなで一斉に食べる。
「……どうだ?自信無ぇんだけど……」
「美味しいよっ!」「うんっ!かななん凄いよ!」
お世辞とかじゃなく、本気で美味しいっ。
「そうか……?サンキュ」
かななんは頭を掻いた。
「美味しかったー」
かななんの手料理に、私達は大満足だ。
「かななんが料理上手だったなんて、意外だなー」
「ユウまで何言い出すんだよ」
「てっきり、コンビニのお弁当で済ませてるのかと」
「んな訳ねーだろ」
足を軽く蹴られる。
楽音歌と胡桃は、かななんの家の中を見回っている。
「――ユウの将来の夢って、何だ?」
「私?私は……」




