胡桃の悩み
そんなことがあって、私はクラスの人達から避難されると思っていたが、その予想は違っていたようだ。
今日もいつもと変わり無く過ごす。
このクラスに九十田の味方は、本当に誰一人と居なかったようだ。
「そういえば、今週って三連休だよねっ」
楽音歌が嬉しそうな声で言う。
「あー、何の日だっけ?」
「何だっけー……、えっとー……。建国記念日?」
「それは二月じゃない?」
三連休か。何をして過ごそう……。
どうせ、また家でダラダラして過ごすんだろうな。
「――タユ、ちょっといいか?」
胡桃が声をかけてきた。
胡桃の声に元気は無かった。
そして、二人でいつもの空き教室に入った。
「どうしたの?元気無いけど」
「さっきから同じ言葉が頭の中をグルグル回るんだよ」
「?何ていう言葉?」
「『くるみは生きてる価値あるのかな』とか『くるみ何で生きてるんだろう』とか『死にたい』とか」
「ちょ、ちょっと待って」
突然の言葉に、私は焦る。
「どうしたの!?いきなり、そんなこと……」
「くるみは元からそういう奴だよ。普段出さないだけ」
「そ、そうなんだ……」
「なあ、愚痴聞いてくれる?」
「いいよ」
胡桃は深呼吸をした。
「あのな、くるみのお父さん、かなり理不尽なんだよ」
「ほう……」
「例えば、くるみがお湯沸かすとするじゃん。それで少しの間、その場から離れるとするじゃん。そしたらお父さん、メッチャ怒鳴るんだよ」
「ふむ」
「そしたらさ、お父さんもお湯を沸かすとき、火の元から離れるんだよ!?何な訳!?自分も離れるクセに何でくるみに怒鳴る訳!?」
「……」
大人って、やはり自己中だ。
「でも、お父さんに怒鳴れないから、ママに言うんだよ」
「うん」
「お父さん理不尽にくるみに怒鳴るんだよ。それが凄く嫌なんだよ。だから中学のとき、ママにメッチャ愚痴ってた。『何でくるみばっか怒鳴るの』とか『それだったら、くるみを産んでほしくなかった』とか」
「それを親に言った訳!?」
「言ったよ。そしたらママ、泣いちゃった」
よく言えるな、そんなこと……。
「あと、中学のとき、くるみ嫌がらせされてたんだよ。精神的に限界が来て、お父さんに学校休みたいって言ったんだよ。それでも行かされた」
「お母さんに休みたいって言えばいいんじゃ?」
「くるみの家、亭主関白」
「あー……」
亭主関白か……。あまり想像出来ないけど、厳しそうだ。
「もう嫌だ。お父さん嫌い。何でくるみばっか怒られなきゃいけないの?」
胡桃は今にも泣きそうだった。
「しかも今週の三連休は部活無いし……。家に居たら憂鬱だよ」
三連休……。
「――そうだっ」
私はいいことを思いついた。
「何?」
「胡桃っ、こっち来てっ」
胡桃の腕を引っ張り、教室に戻った。




