グループ外し~作戦会議~
「かななーーんっ」
廊下でかななんの姿を見つけ、私は走り寄った。
と、そこでつまずいてしまった。
「ぅわっ!?」
転びそうになった私の体を、かななんが支えてくれた。
「大丈夫か?」
「大丈夫。ありがとう」
「あんま走んなよ。ただでさえ、ユウはどんくさいんだからよ」
「はーいっ」
朝からテンションハイな私です☆
「で、オレに何か用?」
「あっ、そうそう。ちょっといい?」
「?おう」
私は、隣の空き教室にかななんを呼んだ。
「あのさ、九十田ッチのことどう思う?」
私の唐突な質問に、かななんはポカンとした。
「……やっぱりな。いつか訊かれると思ったよ」
「予想済みでしたか」
「まあな。嫌いだよ。ツクダッチ」
「まじで?」
「キモいじゃん、アイツ」
「だよねーっ」
楽音歌と胡桃に続き、かななんまで……。
「どうせ、セリチャンにも同じこと訊くんだろ?」
「あ、バレてた?」
「バレバレ~。言っとくけど、セリチャンもツクダッチのこと嫌いだぜ」
「えっ、まじ!?」
「マジ」
鎮紅以外のみんなが、九十田ッチのことを嫌いだったとは……。
「てかさー、みんなにそんなこと聞き回ってどうすんだよ?」
「だって、私一人の考えで決行出来ないもん」
「何が?」
私は、かななんの耳に口を近づけた。
「――九十田ッチをさ、このグループから外さない?」
外すには、みんなの同意が必要。私はそう考えたのだ。
「本気か?」
「本気よ。で、外すには何をすればいいと思う?」
「そんなの……、『いじめ』しか無いだろ」
『いじめ』。私が一番恐れていた結果だ。
でも、やはりそれしか方法が無い。
「……しちゃう?いじめ」
「でも私、いじめなんてしたこと無いよ?」
「それはオレもだよ」
「それに、もし先公とかにバレたら……」
「アイツがチクると思うか?」
「九十田ッチがチクらないとしても、クラスの誰かが……」
「んなこと、誰もしねーよ」
「でもでもっ――」
「あーもーっ。ユウは一々気にしすぎなんだよ。そんなんじゃ、グループから外せねーぞ?」
「だ、だって……」
そこで、チャイムが鳴った。
「まあ、じっくり考えな」
そして、私達は教室へ戻った。
ずっと考えた。
『いじめ』をするか、否か。
私は、今までずっと『いじめられる側』だったから。
いじめられる辛さは誰よりも知っている。
それでも、私は九十田ッチが嫌いだ。
グループから外したい。
それには、『いじめ』しか無い……。
「決めたか?」
かななんに訊かれる。
「――うん。しよう。いじめ」
もはや私に、良心など残っていなかった。
そのことを、楽音歌と胡桃に伝える。
『いじめ』といっても、あまり目立ったことをするとまずいので、最初は無視程度にする。
これには、二人共賛成してくれた。
芹ちゃんは、もとから九十田ッチと接していないので、言う必要が無かった。
問題は鎮紅だ。
鎮紅は誰にでも優しい子で、九十田ッチとも仲良くしている。
「シズクには、言わねー方がいいんじゃね?」
最も、私も同じ意見だ。




