体育大会~午前の部~
この体育大会で、癒羽と奏慧が急接近(?)しますb
高校にもなると、やはり保護者の数は少ない。
小学校や中学校みたいな盛り上がりは無く、地味な体育大会となった。
「こんな地味なら休めば良かったかなー」
かななんが呟く。
「かななんが休んだら、更につまらなくなるじゃん」
「そうかー?」
そして開会式が終わり、各自、種目に備えて準備をする。
「まずはソフトボールだってー。あ、胡桃見えるかな?」
楽音歌が目を凝らして見る。
「見える?」
「いやー……、見えない」
「あっ、あれじゃない?ほら、一番右端の」
芹ちゃんが指差す。
「あ、本当だ、それっぽい」
「胡桃ーっ、頑張れーっ!」
みんなで胡桃を応援する。
「胡桃っ、お疲れっ」「お疲れーっ」
種目が終わり、戻ってきた胡桃の頭をみんなで撫でる。
「やめろやっ、こっちは疲れてんだよっ」
「あははっ、ごめんごめん」
〈800mリレーに出場する選手は、準備をしてください〉
アナウンスが入る。
「お、じゃあ行ってくるわ」
「シズクも行ってきますっ」
かななんと鎮紅が手を振る。
「二人共行ってらっしゃーい」
二人の姿を見送ったあと、胡桃を連れて見えやすいところに行った。
「かななん、どこかなー?」
一人で呟く。
「――あっ、いたいたっ、かななん頑張れーっ」
その声にかななんが気づく訳も無く、かななんは鎮紅と話している。
〈大縄に出場する選手は、準備をしてください〉
「じゃあ、行ってくるよ」
楽音歌と芹ちゃんが、向こうから歩いてきた。
「おう」「楽音歌も頑張れっ」
二人の姿を見送ったあと、かななんに視線を戻した。
それから少しして、800mが始まった。
周りが騒がしくなる。
「盛り上がってるねー」
「そうだな」
そして、かななんが走る順番が来た。
「あっ!かななんだ!きゃっはー!カッコイイー!」
「タユ、はしゃぎすぎ――」
「一番だよっ一番っ!カッコイイー!流石かななんっ!」
と、胡桃の肩を激しく揺さぶりながら言う。
「ちょっ、わかっ、わかったから、放せっ……」
「え?あっ!胡桃ごめんっ!」
肩を放すと、胡桃は咳き込んだ。
「はしゃぎたくなる気持ちはわかるけどさ……、こっちは被害者だよ……」
「ごめんごめん、つい、ね」
800mの結果は、なんと二位だった。
「みんな、ただいまーっ」
鎮紅がみんなに抱きつく。
「おかえり、鎮紅」「おかえりー」
かななんが後ろから歩いてくるのが見えた。
「かななんお疲れーっ。カッコよかったよーっ」
「ははっ、オレなんて全然」
「でもさー、二位なんて凄いよねー」
「決勝進出じゃないっ?」
「そうだけど、鎮紅達は出ないよ」
「え、なんでー?」
「他のメンバーが出るのさ。オレらなんて全然だったからな」
「えー、ショックー」
また、かななんが走る姿を見れると思ったのに。
「あ、次は大縄じゃない?かなっしー達を見に行こうよ」
「そうだね」
五人で見えやすいところを探す。
「ここ、結構見えるよ」
「あ、芹ちゃんと楽音歌居るよっ」
私達のクラスは1組なので、最初に飛ぶらしい。
「二人共頑張れーっ」
結果、飛んだ回数は6回だった。
「まあまあ、いい方じゃない?」
「練習のときよりは多いでしょ」
他クラスも、同じぐらいの回数で競っていた。
〈学校長杯リレーに出場する選手は、準備をしてください〉
「もう出番か。九十田ッチ、行こう?」
「うんっ」
「行ってらっしゃい」「頑張れよ」
「行ってきますっ」
そして、指示された場所に着く。
学校長杯は、四人だけが走る。
でも、けっこう緊張した。
私達のクラスは最下位という、ひどい結果となった。
これも練習をしていなかったせいだろうか……。
「田川、九十田ッチ、おつかれ」「お疲れー」
「あははー。最下位だなんて笑えるでしょー」
九十田ッチが苦笑しながら言う。
「でもまあ、いいじゃん」「そうそう」
もともと優勝なんて目指していなかったし、それに思いっ切り走れたことに、私は満足していた。
あとの種目は、障害物競走やダンスなどといった種目になった。
私達には関係の無い種目ばかりなので、暇になる。
「お腹空いたーっ」
「もうすぐお昼だよ。我慢我慢」
「無理ーっ」
そんなことを言っていると、余計にお腹が空いてきた。
暇になったせいか、みんな黙り込む。
沈黙が嫌いな私は、一人ソワソワしていた。




