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胡桃の気遣い
次は移動教室。
「それゆけシズク隊、行くぞ」
「はーい」
移動教室のときは、鎮紅のこの一言で移動をするのが当たり前になっている。
私の前を、かななんと胡桃が一緒に歩いている。
すると胡桃は、私の後ろに来て私の背中を押した。
最初はどういうことかわからなかったが、胡桃が私に気を遣ってくれたことに気づく。
このことを、かななんが不審に思っている様子はなかった。
(何か話さなくちゃ……)
せっかく胡桃が気を遣ってくれたんだもん。私も自分で何とかしなきゃ……。
「田川ーーっ」
突然、鎮紅が私とかななんの間を割って入ってきた。
そして更に、その間を九十田ッチが入ってくる。
この予想外の事態に、胡桃は唖然としていた。
「田川、何だか顔暗いぞー?」
何年間も言われ続けたこの言葉。
『暗いよねー』
でも、未だに慣れないな。
「うん。これ、元からだから」
作り笑いをして答える。




