奏慧と二人で③
再び、前回の続きです(・∀・)
「落ち着いたか?」
私が泣いている間、かななんはずっと背中をさすってくれていた。
「うん……。ごめんね……?」
「何でユウが謝んだよ。でさ、何があったんだ?」
「……」
言うのは抵抗があった。心配をかけたくない。迷惑をかけたくない。
「まあ……、言いづらかったらいいよ。でも、悩みとかは相談した方がいいんじゃね?オレで良かったら相談のるし」
そう言ってくれるのが、すごく嬉しかった。
今まで、こんなこと言ってくれた人が居なかったから……。
「……あの人達ね、中学の頃の知り合いなんだ。私……、あの人達にいじめられてたの」
「そうだったのか……」
「私がここに引っ越してきたのも、いじめが原因なんだ」
「……似てるな」
「え?」
かななんが俯く。
「オレとユウ、似てる」
「どういうこと……?」
私が尋ねると、かななんがひと呼吸置いて話した。
「オレも、田舎から都会に引っ越してきたって言ってたじゃん?その理由……、家出だよ」
「ええっ!?」
思わず叫んでしまう。
「オレ、中学二年のときにグレたんだよ。そしたらさ、ダチのみんな離れてっちゃってさ。いつの間にか、いじめの対象になってたんだ」
かななんが、いじめられてた……?
「毎日聞こえてくる陰口と、物を隠され続ける毎日に、オレの精神は限界が来てた。親も話聞いてくんねーし、家でも学校でも、孤独だったんだよ」
かななんが淡々と話す。
「で、親とケンカして、家出てきたって訳」
「じゃあ……、かななん、一人暮らし……?」
「そうだよ」
高校生なのに一人暮らしなんて。私じゃ絶対無理だ。
「最初は不安だったけどよ、今じゃ慣れたな」
その言葉が本当かどうかは、かななんの表情からはわからなかった。
「あ、これは他の奴らには内緒な?」
「う、うん……」
もしかしたら、かななんも私と同じように、トラウマがあるのかも知れない。
でも、かななんはそれを見せようとはしない。
「だからさ、辛いこととか困ったこととかあったら、オレに言え。24時間対応するからよ」
その言葉が、すごく頼もしく心強かった。
「ありがとう」
「すっかり暗くなったな。そろそろ帰るか?」
「そうだね」
結局、お揃いの物は買えなかったと、ふと思う。
「あのさ、かななん」
「ん?」
「助けてくれてありがとう。それと……、今度、泊まりに行ってもいい?」
家で一人は、やっぱり寂しいに決まってる。
「……おう、いいぜ」
そして私達は、そのまま家に帰った。
その日一日、いや、その日からずっと、私の頭の中はかななんのことばかりだった。
『辛いこととか困ったことがあったら、オレに言え』
かななんの言葉を思い出す。
信じがたいことだった。でも、これは事実だ。
――私は、かななんが好きなんだ。
癒羽が、自分の気持ちに気づきました――。