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5回目のプロポーズ  作者: 龍二
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第九章 悪寒 智史編

■第九章 悪寒 智史編■


~社会人3年・6月~


明日は結婚式。


今日は僕の家でドンチャン騒ぎ。

正直明日早いねんから勘弁してほしい。


それでもまだまだ

飲むのをやめへん両親たち。


ていうか・・・

あんま飲んでたら酒抜けんと

朝から飲酒運転なるぞ。


綾香「私・・・帰るわ」

智史「ああ分かった、どうやって?」


綾香「駅まで歩いてそっから電車で帰る」

智史「そうか・・・送って行くわ」


綾香「もう11時まわってるし玄関まででいいよ」

智史「そうか?」


ガチャッ


智史「今日はお疲れさん」


綾香「昼間っからお邪魔してごめんな」

智史「ええよええよ」


綾香「お母さん・・・足悪いから」

智史「分かった、あんま飲まんように言っとく」


綾香「頼むな!じゃあ・・・明日」

智史「うん、また明日」


明日は結婚式。

もう今日は早く寝よ。

ふといつものクセでポストを確認する。


新聞が突っ込まれてる・・・

っていうか

夕刊も取ってないんかい。


そりゃ昼間から飲んでたから無理ないか・・・


・・・ん?

手紙が一通きてる。


見慣れた字・・・

亜紀からや。

わざわざ返事くれたんか。


それにしても・・・

返すの早いな。


智史「僕もう寝るわ、おやすみ」


そうひとこと言って部屋に戻る。

やっと一人になった。


ちょっと・・・

飲みすぎたかな。


とりあえずこの手紙読んで

寝よ。


〈智史へ〉


相変わらず亜紀は綺麗な字やな。


って・・・

一枚目書いてないやん!


二枚目をめくる。


〈私も世界で一番好きだった〉


〈さようなら〉


それだけか。


二枚目もたったそれだけ


たった二行だけ書かれていた。


・・・そうか。

亜紀も僕のことが

好きやったんか。


じゃああの日


あの美しい夕日を

あの橋で


亜紀と一緒に見た日の

亜紀の告白には

全部”もし”が付いてたけど


全部

“もし”はいらんかってんな。


あの時言った言葉は

ホンマやってんな。


僕が綾香と別れて

亜紀に告白してたら

未来は変わってたんかな。


でももう遅い。


そして

さようならって書かれている。


その文字は

にじんだあとがあった。


きっと

亜紀が流した

人生で一番悲しい涙。


でもその

さようならの文字は

少し不気味や。


涙でにじんでるから?

違う。


何か説明できひん。

何か


何かいつもと

その字から出てる


魂が

オーラが

おかしい。


亜紀は

こんな文字書いたこと


ない・・・!


このさようならは

僕と連絡を取らないのはもちろん

何か


何か別の

恐ろしい決断の現れや。


多分他の人には分からん。


僕やから分かる。


ずっと


ずっと亜紀と過ごした

僕やから分かる。

確証なんてない。


きっと明日朝早いから


僕の結婚式に来るから


あの広い家で

あの母親を亡くした家で

いつも通り一人で寝てる。


そうやと思う。


けど何か


違和感のあったの文字。


さようならの五文字。


亜紀が・・・

亜紀が危ない!


僕は走り出した。


亜紀のために今まで

どれぐらい走ったやろ。

多分地球一周分でも足りないぐらい。


亜紀のために


亜紀のために

様々なところを

駆け抜けてきた。


それももう今日で最後。


きっと家まで行って


またアホちゃうって

言われるのがオチ。

それは分かってる。


けど


けど亜紀が無事だっていう

確証が欲しい。


・・・ようやく着いた。

この家に来るのは何年ぶりやろ。


時間は深夜12時前。

迷惑なんは分かってる。


ピンポーン。

呼び鈴を押した。



・・・



・・・



・・・



僕の予想は間違ってない。


亜紀が・・・


亜紀が帰宅してない。

僕はまた走り出す。


プルルル、プルルル・・・


「おかけになった電話は・・・」


くっそ。

携帯も繫がらへん。


どうしてん亜紀。

どこに行ってん。


今日は土曜やから

仕事もないはずや。


亜紀・・・


亜紀・・・!!


もしかして・・・


もしかして

あの


あのさようならの


手紙のさようならの意味は


そういうことじゃ

ないよな・・・?


でも帰宅してないってことは・・・

もうあそこしかない。


ずるいぞ亜紀・・・


人生から逃げるなんて

ずるい


ずるすぎる・・・


ずるすぎるんじゃあああああああ!

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