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5回目のプロポーズ  作者: 龍二
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第八章 手紙 亜紀編

■第八章 手紙 亜紀編■


~社会人3年・6月~


はぁ

今日も疲れた。


というかもう・・・

人生に疲れたわ。


もう私の光になるものは


何も


何もない。


お母さんは亡くなった。

智史も結婚する。


あの・・・


あの夕日が見える橋。


唯一私を支えてくれていたあの場所。

もう行けへん。


なぜならあそこに行くと


きっと


絶対

智史のこと思い出して

泣いてしまうから。


そんなことしてたら

何も進めへん。


だから・・・

あの場所にも行けない。


もう私に


私に光はない。




今日も仕事が終わった。

3年目になり給料も上がり始めた。

お金は貯まる一方。


でも


でも先が見えない。


お金があっても

幸せにはなれない。


私の人生

これからどうなるんやろ。


ん?


ポストから手紙が溢れてる。

そう言えば最近確認してなかったな。


どうせダイレクトメールか

クレジットカードの請求か

そんなとこか。


ポストを開けると

流れ落ちる手紙の数々。


20通はあるな。

これぐらいのラブレター

もらったことあったな。


昔の私はモテた。


でも私は自分が可愛いことを知ってて・・・


つけ上がって

付き合っては別れて

そんなことを繰り返してた。


私は一生モテる。


だからお金持ちと

男前と結婚する。

そう決めてた。


けど・・・

私を中身から見てくれる人なんて

いなかった。


たった一人を除いては・・・


私は見た目がよかったから

理想が高いのに気づかず


大学ではひどい目に遭い

彼氏ができなくなった。


何もかも

気づくのが遅かった。


このダイレクトメールの数々も

ラブレターやったらいいのに。


それをわしづかみにして

ゴミ箱に捨てようとした。


その時だった。


1通だけ

見慣れた文字の手紙がある。


それは手書きで書かれていた。


亜紀様。

・・・智史の字や。


電話でもない。


メールでもない。


今さら手紙で言うことなんて・・・

何もないはずじゃないの?


私は封を開けた。


〈亜紀へ〉


この文字。

智史の字や。


押入れを整理したあの日。


中学の卒業式の日にくれた手紙。


高校の卒業式の日にくれた

カバンに入ってた手紙。


その時の文字とは違う。

だいぶ大人らしい字になった。


でも

その字は智史の字のクセと

智史の魂が宿っている。


智史や。


たった三文字を読んだだけなのに

智史を近く

本当に近く感じる。


〈結婚式の招待状を送ったと思うけど、僕は綾香と結婚する〉


智史は結婚する。


三日後ついに・・・

結婚する。


こんなこと

学生の時に予想したやろか。


まさか


まさか私より

早く結婚するなんて・・・


〈でも結婚することが決まって言うのは何やけど・・・〉


〈一つだけ言い残したことがあるから手紙を書きました〉


言い残したこと?

何やろ。


〈僕はドキドキする恋を探した。だから結婚もできた〉


それは私が教えたったからな。


〈でもやっぱり・・・〉


〈自分の好きの形が変わることはなかった〉


え・・・


それって・・・


〈ドキドキしなくてもいい〉


〈互いに気を使わなくてもいい〉


それって・・・


〈一生一緒にいたいって〉


〈思う人と結婚したかった〉


それって・・・


〈ずっと〉


〈ずっと亜紀が〉




〈ずっとずっと〉


〈ずっとずっとずっと亜紀が・・・〉





〈世界で一番好きだった〉






・・・涙が止まらなかった。


手紙の続きが


涙が溢れて


読めなくて・・・

でも読みたくて


智史が


智史が私に書いた


最後の手紙やから・・・


涙を振り絞って

続きを・・・


私は読む。


〈僕・・・世界で二番目に好きな人と結婚するから〉


きっと


きっと私も

結婚する相手がいつか現れる。


その人も私の中で

世界で二番目に好きな人ならいいな。


もう過去には戻れないから・・・


だから

きっとそれが

一番幸せだと思う。


世界でこんなに


何十億人って人がいるうちの

二番目なんやから

幸せになれる・・・


幸せになれるよな?

きっと・・・


〈想い届くことはなかったけど・・・今まで本当にありがとう〉


想いは


想いは届いたで。


でも


でもそれを私が受け止めんかった。


それだけの話。


智史は


智史は何も悪くない。


私はもうもう泣かない。


強くなるって

そう決めたから。


だから安心して結婚して。


綾香さんを

幸せにしてあげて。


こちらこそ


本当に


本当に


今まで本当に

ありがとう。


私の目からは


もう

涙がこぼれ落ちることはなかった。




次の日・・・


手紙をくれた智史。

ホンマにありがとうな。


多分この手紙を出す時

智史は辛かったと思う。


書く時泣いてたかもしれん。


けど・・・


けど私のために

本当のことを

一生懸命書いてくれてんな。


だから


だから私も本当のことを書いた。


そして今ポストに入れる。


智史の結婚式は明後日。

きっと明日にはこの手紙が届く。


結婚する前に

この手紙を読んでな。


そして幸せになってな。

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