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5回目のプロポーズ  作者: 龍二
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第二章 約束 亜紀編

■第二章 約束 亜紀編■


~中学1年・4月~


私の名前は亜紀あき

生まれも育ちも大阪。

私の夢は男前でお金持ちでそばにいてドキドキする人と結婚すること。



私の唯一の親友は智史。

でも智史は私の理想とはかけ離れている。


はぁ・・・

智史いい人紹介してくれへんかな。


でも智史はシャイで友達おらんから無理か。

という私も智史以外仲いい人おらんけど・・・


今日から私たちは中学生。

勿論智史も一緒。


私は勉強できるけど好きじゃないから・・・

エスカレーター式でそのまま同じ中学に上がった。


地元から離れるのもイヤやし。

ってことで今日も智史を迎えに行く。


亜紀「智史~おは・・・ぶっ」


何やあれ!


智史「あ、おは・・・」


亜紀「何やそれ!学ランブカブカやん!」

智史「ああ、ちょっとな・・・」


亜紀「ていうか、そのサイズ合うてないし」

智史「これが一番下のサイズやねん」


亜紀「智史は逆の意味での特注が必要やな!」


私は思ったことを全部口にする。

人がどう思ってるかなんて気にしない。

だから前の学校でもいじめられたんかもしれん。


でもこれは性格やし、変える気ない。

思ったこと口にできひん人なんてうらやましいとか思わんし。


私の両親は私が小学3年の時に離婚した。

お父さんがリストラにあったのがきっかけで。


だからお母さんは生活ができないから

お父さんは離婚の話を切り出した。


お母さんはお父さんに「もう一度やり直そう」って


「もう一度二人で頑張ろう」って

それが言えなかった。


そのたった一言が言えなかった。

だからお母さんは私に言った。


「思ったことを言わないと後悔する」って。


だから私は何でも言う。

特に智史に対しては・・・何でも言える。


今さら気を使うこともないから。

一生友達でいるって誓ったから。


ちなみにお金ないと幸せになれないって思ったのもその離婚の時。

まぁそんなこと今考えててもしゃぁないけど。


亜紀「私の制服、どう?似合ってる」

智史「・・・」


亜紀「なぁ、って!聞いてるん?」

智史「あ・・・あぁ、似合ってる・・・よ」


智史の顔が赤くなる。

何?照れてるの?


亜紀「智史照れてるやろ!?」

智史「て・・・照れてないって!」


亜紀「ヤラしい目で見んといて、きんも~」

智史「だからちゃうって・・・」


小学校の時から何ら変わりない。

唯一変わったことっていうと制服になったってことぐらい。


この道、この空気、この景色・・・


智史という存在。


そして智史とするどうでもいい話。

今日もそんな話をしているうちに学校に着いた。


小学校の時と同じや。

掲示板にクラス分けが書いてる。


亜紀「そういえば・・・智史と会うたんってここやったな」

智史「僕がメガネ忘れた時やな、小4やったっけ?」


亜紀「アホか、小5やろ?小4って私まだこの学校来てないし」

智史「ああ、そっか・・・」



智史はホンマアホ。

私の言ったことはほとんど覚えてないし。


もちろん大事な日とかも。

今年の私の誕生日だって無視やし。

それやのに私のこと好きとか言うし。


意味分からん。


亜紀「最悪」

智史「・・・ごめん」


亜紀「・・・メガネだっさ」

智史「目悪いねんからしゃぁないやん・・・」


亜紀「・・・何?」

智史「・・・いや何も・・・」


智史は私に頭が上がらない。

私がちょっと偉そうに言うてるってのもあるけど。

まぁケンカしたら私のほうが確実に勝つからな!


智史の背も未だに小さい。

私がデカいだけか・・・


亜紀「智史私と別のクラスやな!」

智史「・・・」


亜紀「何や?好きな人と同じクラスになれんで寂しいか?」

智史「でっかい声で言うなよ・・・」


周りがジロジロ見てる。

やばいやばい。

初日からこんな仲良かったら勘違いされたら困る。


亜紀「お互いええ友達できたらいいな」

智史「あ・・・うん」


亜紀「じゃあな!帰り一緒に帰ろな!門で待っときや」


私は1組、智史は3組。


今まで智史だけが友達やったけど・・・

今度は新しいクラスで友達も作る。

もういじめられることは恐れない。

ああ、あと彼氏もな♪


とは言うたものの・・・

やっぱり話かけづらいな。

誰ともしゃべらんと席に座ってる人多いし。


「もしかして掲示板とこでしゃべってはった人・・・?」


ん?

私に話しかけてるん?


亜紀「・・・そうやけど?」

佐紀「やっぱりそうや。私隣の席の佐紀サキって言います、よろしく」


亜紀「佐紀さん・・・?私アキって言うねん!一字違いやな!」

佐紀「サキ、でいいよ」


亜紀「じゃあ私のこともアキって呼んでな!はい決定!」


やった、話かけてくれた。

智史以外の初めての友達や!


亜紀「あ、部活何入るん?どこの小学校?それからそれから・・・」

佐紀「・・・」


あ・・・

やってもうた。


亜紀「ごめん、一気に聞かれても・・・分からんやんな」


やばい。

がっつきすぎた。

ただのシャベリやと思われたかな。


佐紀「ううん、元気そうな人やなーと思って」


佐紀はニコっと笑う。

私と違って小さくて細くて・・・可愛い。

他人をこんな可愛いと思ったのは初めてかも。


亜紀「私・・・うるさいけど・・・許してな」


一応断っとかんと。

ホンマの自分をいち早く知って理解してもらわんと。

また小学校の時みたいなハメになったらイヤやし。


佐紀「私は・・・あんまりしゃべるの得意じゃないから・・・」

亜紀「私もやで・・・あ、でも私がリードするから仲良くしてな」


佐紀「えー、亜紀ちゃんしゃべるの得意そうやん・・・」

亜紀「アキでええって!私も実はシャイやねん」


そう言って顔を隠す。

っとこんなノリで引かれたかな?


佐紀「ふふっ、亜紀ってやっぱり明るそう・・・こっちこそよろしく」


・・・良かった。

私とは人間のタイプが違うっぽいけど仲良くなれそう。

しかも名前一字違いって何か運命感じるわ~。


佐紀「で、何の部活入るん?」


亜紀「私運動得意やから・・・茶道部とか将棋部とか!?」

佐紀「運動得意なん関係ないやん!てかシブ~」


的確なツッコミ。

何か快感。


智史はうんとかはいとかしか言わんし・・・

佐紀はあんまりしゃべるタイプじゃないって言ってたけど

しゃべり始めたらガンガンいくタイプなんかもしれん。


亜紀「佐紀は何入るん?」

佐紀「私は陸上かな?走るの好きやし」


亜紀「へー意外やわ、佐紀こそ茶道部とか将棋部似合いそう!」

佐紀「何それ~、体動かすのめっちゃ好きやで!」


先生「はい、席着け~」


これが担任か。

何か・・・普通。

歳も中途半端。


先生「私が担任の・・・」


紹介も普通。

つまらん。


亜紀「佐紀、前の小学校で何か運動やってたん?」

佐紀「いや別に?中学からやろうと・・・」


先生「そこ、黙る」

亜紀「すんませ~ん」


ちょっとこの担任うっとぉしいな。


でも・・・何かが変わる。

私のただ毎日智史と通学してた日々から

抜け出す日が来る。


何となくそう感じた。


キーンコーンカーンコーン。


今日は入学式やから昼まで。

智史と帰る約束してたんやったな。


佐紀「亜紀~」


佐紀の声が聞こえる。

走ってきたのか、息を切らしてる。


佐紀「亜紀、家どこなん?」


亜紀「門出て右へ・・・歩いて40分」

佐紀「遠いな・・・方向同じやから一緒に帰らへん?」


亜紀「いいよー。あ・・・智史待たしてるんやった・・・」

佐紀「智史って誰?」


亜紀「ああ、小学校から一緒のメガネ。ほら、さっき掲示板とこで・・・」

佐紀「何!?さっきの彼氏やったん?すごー」


亜紀「ちゃうちゃう、ただの友達や、と・も・だ・ち!」


ここはちゃんと否定しとかんと。

ウソ流されたらたまったもんじゃない。

あんなチビメガネが彼氏とかマジで冗談じゃないし。


「佐紀~、一緒に帰ろ~」


遠くから声が聞こえる。

足音が徐々に近くなってくる・・・

廊下の角を曲がってきたのは・・・男!?


男子「佐紀お待たせ・・・こっちの人は?」

佐紀「今日友達になった亜紀、仲良くしたってな」


この人佐紀の彼氏?

背高いし・・・めっちゃ格好ええやん!

とは言っても邪魔したらあかんな。


亜紀「えっと・・・お邪魔しました」


佐紀「兄の勇紀ユウキ、よろしく~」

勇紀「シャイな佐紀が友達?やったやん!亜紀さんよろしく!」


亜紀「よろしくお願いします・・・」


ちょっとヤバい。

格好良すぎる。

これは小学校以来の恋!?

しかもこの人めっちゃ性格良さそうな人やし!


勇紀「敬語いらんで!兄言うても俺ら双子やし!」

佐紀「ぁ・・・うん」


亜紀「双子!?すっごい美男美女やな!やっぱ双子は似るんやなぁ」


勇紀「こんなヤツと一緒にすんなよ!」

佐紀「こんなヤツって何よ・・・」


何か・・・

仲良さそう。


多分この二人は双子じゃなかったら付き合ってたやろな。

あ・・・智史のこと忘れてた。


亜紀「ゴメン、智史待ってるから先行くわ」


佐紀「私らも帰るから一緒に行こ!」

勇紀「智史って誰?あ、亜紀さんの彼氏か!」


亜紀「ちゃうから!マジで変な誤解すんのやめて・・・」

勇紀「はっは、それはすまんすまん」


笑った大きな口も歯並びの悪さをひっくるめても・・・

勇紀さんはやっぱり格好いいわ。

それに比べて智史は・・・


智史「・・・どうしたん?亜紀そんな顔して」

亜紀「別に~」


顔悪いし背低いしメガネダサいし・・・

おまけに頭アホやし運動神経悪い。


どうしたらここまで神様は悪く創れるんやろ。

勇紀さんは見た目だけですでに智史にボロ勝ちしてる。


智史「ていうか」


智史が私の手を引っ張る。


亜紀「何さ!?」

智史「誰?あの二人」


亜紀「今日私が隣の席で友達になった佐紀」

智史「あの男は?」


亜紀「双子の兄の勇紀さん、格好ええやろ?」

智史「そ・・・そうか?」


亜紀「あんたどのツラ下げて言うてるの?」

智史「すんません」


亜紀「仲良くすんねんで!」


今度は私が智史の手を引っ張っていく。


亜紀「こいつ智史言います~、仲良くしたって下さい」

智史「どうも・・・」


亜紀「どうもちゃうやろ!愛想よくしぃや!」

勇紀「ぷぷっ」


亜紀「・・・勇紀さんどうしたん?」

勇紀「亜紀さんって、何か智史くんの保護者みたいやな」

佐紀「確かに・・・」


亜紀「やめてや!こんなチビメガネの保護者とかイヤやわ!」

智史「すんません・・・」


亜紀「で?智史は友達できたん?」

智史「いや・・・僕はあんましゃべらんからさ」


亜紀「全く・・・また3年間世話せなあかんのかいな」

勇紀「まぁまぁ、俺らとも仲良くしてな!」


亜紀「勇紀様と呼びなさい、勇紀様と!」

勇紀「呼び捨てでええしな、よろしく」


亜紀「まったく・・・」

勇紀「亜紀さんも!呼び捨てでいいしな。よろしく亜紀」


ドキッ。

何か呼び捨てってドキドキするな。


亜紀「じゃあ・・・よろしく勇紀!」

智史「ちょっと・・・」


亜紀「何か文句ある?」

智史「いや・・・別に」


きっとこの人たちとなら仲良くやっていける。

そう思った。

それにしても勇紀格好よすぎ。




次の日・・・


昨日勇紀のこと考えてたらドキドキしてあんまり寝れんかった。

私がここまでドキドキするのって初めてやな。


はぁ・・・

智史もあれぐらい格好良かったらなぁ。


と言いつつも今日も智史の家の前におるけど。

まだ出てきてないってことは今日も寝坊か。


亜紀「智史~、起きや~」


ホンマ手のかかるヤツやで。

勇紀が言ったようにまるでホンマの保護者やんか。


・・・

あれ?


いつもなら私の声したら飛び起きて窓開けるのに・・・

今日は返事ないな?


ガチャッ。

玄関から誰か出てきた。


「おはよう、亜紀ちゃん」


智史のおばちゃんや。


亜紀「智史まだ寝てます?」

智史の母「智史なぁ、夕べから熱出して体調悪いねん」


亜紀「あ・・・そうですか、分かりました」


新学期早々熱出したんか?

体弱いなぁ。


智史の母「ごめんね、また来たってね」

亜紀「ぁはい」


しゃぁない。

今日は一人で学校まで行こか。



智史の家からだいぶ歩いた気がする。

学校ってこんな遠かったっけ。


まだこの金持ちそうな家の横か。

学校まであと10分はあるな。


いつも智史とつまらん話ばっかりしてるけど・・・

そんな話も無かったら無かったでヒマやな。

時間経つのめっちゃ遅いし。


・・・あれ?

あの後ろ姿どこかで見たような・・・

勇紀やん!


亜紀「勇紀~!」

勇紀「おっ、亜紀やん!おはようさん」


ていうか・・・勇紀一人?


亜紀「・・・あれ?佐紀は?」


勇紀「佐紀なぁ、新学期早々熱出してん。体弱くてなぁ」

亜紀「マジで!?智史もやってさ!」


ていうことは・・・

二人っきりで登校!?


亜紀「あ、ごめん、智史が佐紀に風邪うつしたんかな?」


勇紀「ちゃうちゃう、今季節の変わり目やから体調崩したんやろ」

亜紀「それやったらええけど」


勇紀「はよ学校行こか~」

亜紀「うん」


本当に勇紀は格好いい。

隣にいてドキドキする。

しかも昨日初めて会った気がしない。


私・・・

勇紀が好き。

でももしそんなこと言って関係悪くしたら勇紀はもちろん・・・

佐紀とも友達でおれなくなるかもしれん。


亜紀「勇紀ってさぁ、いっつも佐紀と学校行ってるの?」

勇紀「うん?そうやけど?」


亜紀「そっか・・・」


じゃあ今日ぐらいしかチャンスないな。


亜紀「あ・・・あのさ」

勇紀「何?」


亜紀「今日・・・帰り一緒に帰らへん?」

勇紀「別にええよ~、じゃあ校門の前でな」


言わずに後悔するより言って後悔したほうがマシ。

言わないなんて私らしくない。

だから伝えよう。


きっと勇紀も佐紀もそんなことで私を嫌いにならない。

そう信じて。



放課後・・・


勇紀「よぉ、お待たせ」


亜紀「あ、うん、ちょっと寄りたいとこあるねんけど、いい?」

勇紀「ん?別にええけど・・・」


そう言って私は校門を出て左へ。

家とは逆方向に歩き出す。


勇紀「逆行くの?」

亜紀「うん」


勇紀「俺こっち来たことないけど・・・大丈夫?」

亜紀「私知ってるからさ」


小4の時私は転校してきた。


親の離婚。

いじめられたイヤな思い出。

それを抱えながら転校してきた。

そんな私を初めて元気づけてくれたのがあの場所。


一回車で通っただけやけど・・・


その橋から見た夕日と

海に映った夕日は


生きてて良かったと思うぐらい

吸い込まれるぐらい


美しく

輝いて見えた。


あそこなら私

人生で初めて


人に好きって

勇紀に好きって

言える。


勇紀「・・・なぁまだ?」


亜紀「多分・・・もうちょっと」

勇紀「多分って何やねん、多分て」


亜紀「もうちょっとだけ黙ってついてきて、お願いっ!」

勇紀「分かった」


橋が見えてきた。

あそこや。


3年ぶりに見る風景。

それを一秒でも早く見たい。

私は走り出した。


勇紀「おい、待ってや」


勇紀も走り出す。

ビルが建っている道を抜けたその瞬間

光が差し込んだ。


亜紀「・・・」


ここや。

誰にも見せたことがない

私がこの街で頑張ろうって

そう思えた場所。


勇紀「・・・すごい綺麗」


その場所は何ひとつ変わっていなかった。


夕日も

夕日が映る海も

今私たちが立っている橋も・・・


亜紀「ここ誰にも教えたことないんやで」

勇紀「そうなん?」


亜紀「私だけの場所」

勇紀「何で俺に見せてくれたん?」


亜紀「勇紀に言いたいことあったから」

勇紀「言いたいことって?」


亜紀「勇紀のこと・・・好きやから」


私はとんでもないことをすぐに言ってしまう。

今回も例外じゃなかった。

ある意味すごい、天才的。


勇紀「・・・」


勇紀は黙ってる。

私まずいこと言ったかな?


私が思ったことすぐ口にすることで

戸惑ったり

困ったりする人が増えるのかな。

私がそんな心配をする中、勇紀が口を開いた。


勇紀「ありがとう」


勇紀は大きい口で笑う。

相変わらず歯並びも悪い。


勇紀「俺、亜紀と一緒にいてドキドキする」

亜紀「・・・え?それじゃあ・・・」


勇紀「でも、付き合うとか・・・そんなんは無理」

亜紀「・・・」


私フラれたんか。

何かバッサリいかれた。


亜紀「何で?私じゃ・・・あかん?」

勇紀「付き合えへん理由は三つ」


え?三つもあるん?

私ってそんなダメなん?


勇紀「一つ、まだ付き合うとかできるほど俺は成長してない」


何よそれ。

私だって付き合ったことなんてないし。


勇紀「これは俺の問題な?俺が悪い」

亜紀「私だって・・・そんな成長してないし」


勇紀「二つ、亜紀はまだ俺のこと知らん」

亜紀「分かるし!優しくて、格好良くて・・・」


勇紀「俺の血液型は?誕生日は?夢は?」

亜紀「それを知りたいから・・・好きやって言うたんやろ?」


勇紀「そうか・・・でもな、まだ俺ら知り合ったん昨日やで」

亜紀「そうやけど・・・好きなもんしゃぁないやん」


勇紀「じゃあ訂正、俺は亜紀のこと何にも知らん。これも俺が悪い」

亜紀「付き合って知ってくれたらいいんちゃうの?」


勇紀「俺は亜紀を悲しませたくないからもっと知ってからにしたいの!だから俺のせいな!」


勇紀は優しい。

好きって言ったのは私の方。

私の一方的な押し付け。


せやけど勇紀は俺のせいやって

自分のせいやって言ってくれた。

私の傷が少しでも深くならないように・・・


勇紀「で最後三つ目、これはな、誰のせいでもないんやけどさ」

亜紀「??」


勇紀「俺超能力者やねん」

亜紀「・・・ぷっ、何言い出すの?勇紀」


超能力者?

意味分からん。


そもそも超能力なんてあるはずないし。

まぁここは話乗ったろか。


亜紀「それと私と付き合えへんの、どう関係あるん?」

勇紀「きっとさ・・・きっと亜紀にとってこの場所は思い出の場所になる」


亜紀「もう十分思い出の場所やで?この街に来た時も、今日告白したのも・・・」

勇紀「いや、きっと・・・もっと大切な人にこの場所を紹介する」


亜紀「もっと大切な人?誰のこと?」

勇紀「さぁ?そこまでは俺にも分からん」


何なん?超能力者ちゃうんか?


勇紀「たださ、その大切な人は案外身近におるかもしれん」

亜紀「はぁ?意味分からん・・・」


勇紀「その大切な人は、きっと亜紀と一番幸せになれる人」

亜紀「幸せ~?そんなん考えたことないわ」


幸せ・・・か。


うちの両親は幸せになれへんかった。

そういう意味でも私は幸せにならなあかんのかな。

幸せになるのってお金以外に何が必要なんやろ?


勇紀「まぁそういうことやから・・・」

亜紀「最後の一つはよう分からんかったけど・・・」


勇紀「亜紀はものっすごく可愛いからモテるやろうけど、ちゃんと好きな人選びや」


モテる?私が?

確かに自分でも目でかいと思うけど・・・

声や背もでかいし。


でも勇紀のおかげで何か一歩踏み出せた。

フラれたのに全然悲しくない。


だから勇紀とは・・・

これからも友達でいたい。


亜紀「あのさ・・・一つだけ約束」

勇紀「何?」


亜紀「これからもずっと・・・私の友達でいて下さい」

勇紀「友達って約束するもんじゃなくて築いていくもんちゃうかな」


なるほどな。

智史とは全然違うな・・・


勇紀は好きな人じゃなくて

尊敬する人やったか。


亜紀「・・・でも約束して」

勇紀「ええよ」


勇紀は小指を出す。

私が小学校の時、智史に出したみたいに。


亜紀「噓ついたら針ま・・・」


針万本飲-ます。

智史と約束した時はそう言ったっけ。

だから・・・


亜紀「噓ついたら針5千本飲-ます!」

勇紀「何それ?多いし、しかも中途半端やし」


亜紀「ええねん、気にせんとき~、さぁ帰るで~」


何で私智史の時と同じように針万本って言わんかってんやろ?

勇紀だって智史と同じ大事な友達やのに。


何でかは自分でも分からん。

けど


智史は確かに私の中で

一番最初にできた友達で


大切な存在なんかなって

思うようになった。


あ、好きとかはちゃうからな?

勘違いしたらあかんで。






~中学3年・9月~


勇紀の予言した通りだった。

私はモテた。

嫌味ちゃうで?


中学の3年弱ほどで12人に告白された。

そのうち付き合ったのは4人。

他は見た目悪いからドキドキせん。

その付き合った4人も全員1ヶ月続かんし・・・


はぁ・・・

何でなんやろ。


こんだけ告白されたら私が可愛いっての噓じゃないはずやのに

何で続かんねんやろ。

そんなこと考えつつも横におるんは今日もさえない男やし・・・


亜紀「はぁ・・・」

智史「どうかした?」


亜紀「いいや・・・何で私続かんのかなって」

智史「男?」


亜紀「そう」

智史「・・・さぁ?」


亜紀「そりゃ恋愛経験全くない智史に言っても分からんわな」


智史はゲームにしか興味ないしな・・・


亜紀「そのメガネどうにかならへんの?」

智史「目悪いからしゃぁないやん・・・」


亜紀「コンタクトにするとかさ・・・あとそのぼっさぼさの毛も」

智史「ああ、そろそろ散髪行かなあかんなぁと」


亜紀「散髪って・・・中学生にもなったら美容院行けよ美容院!」

智史「美容院っておばちゃんが行くとこちゃうの?」


亜紀「はぁ・・・」


色んな意味でため息出るわ・・・


亜紀「で話変わるけど、進路どうすんの?」


そう、今日で9月も終わり。

高校のことも、その先の将来のことも考えないといけない。


智史「亜紀はどうすんの?」

亜紀「私はそのまま高校上がるで」


智史「じゃあ僕もそれで・・・」


え・・・もしかして・・・

智史うちの高校のレベル分かってない!?


亜紀「うちの高校って難しいの知ってるやんな?」

智史「ん?何が?」


やっぱりや・・・分かってない。


亜紀「うちの高校、エスカレーターなんかないで?」

智史「え!そうなん!?」


亜紀「智史、偏差値なんぼよ?」

智史「この前の模試で43」


うわ、絶望的。


亜紀「無理やな」

智史「何で?」


亜紀「だってうちの高校の偏差値、55ぐらいやで」

智史「え!マジかいな・・・」


智史が力弱く崩れ落ちる。

・・・元々弱いけど。

自分の高校の偏差値ぐらい知っときぃや・・・


智史「そういう亜紀はなんぼあるん?偏差値」

亜紀「64」


智史「マジで?えらっ」

亜紀「智史がアホなだけやろ」


智史「じゃあ余裕で上がれるな」

亜紀「余裕ちゃう」


智史「何で?55あればいけるんやろ?」

亜紀「私、特進狙ってるねん。特進の偏差値は68」


智史「68て!もうT大レベルやん!」

亜紀「いや・・・大学ちゃうから・・・」


今の時期で43か。

55まであと12。


まぁ確実に

無理やわな。


亜紀「ていうか最近休日私と遊ぶの断るやん」

智史「ああ・・・すまんな」


亜紀「あれ、勉強してるからやろ?せやのに何で成績悪いん?」

智史「いや実は・・・」


亜紀「何?」

智史「ゲ、ゲーム・・・してて・・・」


亜紀「は!?私の誘い断ってゲームって何よゲームって!」


私の誘いは最近まで断らなかった。

だからてっきり勉強してるから断ってると思ってて・・・


しかもその理由がゲームしてるからって

どういうことや?


智史「ごめんって!夏休み買ったゲームがやたら面白くて・・・」

亜紀「・・・はぁ、もうエエ加減ゲーム卒業しぃや」


智史「まだ中学生やん・・・」

亜紀「そんなことばっかりしてたら、ホンマ高校行けへんで」


まぁ行けると思ってないけど。

残念やけど智史とは中学でお別れやな。

やっとこのチビメガネの保護者から卒業できんのかな。


智史「あのさ!」

亜紀「ん?何?」


智史の顔が急に真剣になる。


智史「僕が亜紀と同じ高校に・・・このまま上がれたら・・・」

亜紀「上がれたら?」


智史「僕と・・・僕と付き合ってくれへんかな?」

亜紀「ぶっ」


思わず噴き出してしまった。


亜紀「どんだけ私がモテるか分かってるん?」

智史「分かってる!分かってるけど・・・諦められんくて」


亜紀「別にええよぉ、ただ試験まで5ヶ月ないで?」

智史「頑張るって」


亜紀「頑張る言うても・・・今まで勉強まともにしたことないヤツがなぁ」

智史「約束やぞ!」


智史は走り出した。


亜紀「ちょっと・・・」

智史「今から家帰って勉強する!また明日!」


・・・アホやな。

ほんまもんのアホや。


ロクに勉強したことないヤツが偏差値43から55に上げるって?

冗談もええとこやな。






~中学3年・2月~


今日は中学の最後の行事である卒業式。

と同時に私の誕生日でもある。

佐紀と勇紀にはおめでとうって言ってもらった。


けど智史からは相変わらず。

私の誕生日、もう覚えてないんかな?

まぁ最初から期待はしてないけど・・・


そう言えば智史の誕生日も知らんな。

まぁもう高校別になるし、関係ないか。


私は1月の模試で偏差値を70まで上げた。

特進の偏差値は68ぐらい。

試験の出来も悪くなかった。


合格発表はまだやけど・・・

順調に行けば合格してるやろ。


またこの学校に通うんか。

そう思うと何か安心する。


智史「亜紀~」

亜紀「智史どこ行ってたん?」


智史「いや、誕生日プレゼント渡そうと思って・・・」

亜紀「噓やな、私の誕生日なんて覚えてなかったくせに」


どうせ佐紀か勇紀に聞いてんやろ。

それでおらんようになったと思ったら・・・

プレゼント買って今戻ってきたか。


智史「いやー、実は佐紀と勇紀から聞いてな」


やっぱり。

何年一緒におると思ってるねん・・・


智史「ハイ、これ」

亜紀「何・・・これ?」


え?手紙?

誕生日プレゼントってこれだけ?


智史「そう手紙やで?」


表には誕生日おめでとうって汚い字で書いてある。


亜紀「もしかしてこれ書きに家帰ってたとか?」

智史「せやで?」


亜紀「はぁ・・・」


智史とおったらため息しか出んわ。


プレゼントって言ったら普通マフラーとかハンカチとか・・・

無難なもん選ぶやろ!


手紙て・・・

ほとんど紙切れやん。


ああ、そうや高校のこと聞いとかんとな。


亜紀「高校どうするん?」

智史「ああ、佐紀と勇紀もうちの高校に・・・」


亜紀「そうじゃなくて、智史は?」

智史「ん・・・一応・・・受けた・・・」


亜紀「一応って・・・うちの高校?」

智史「うん」


亜紀「偏差値は?」

智史「1月模試の偏差値57」


・・・え?


智史の偏差値が・・・

57!?


亜紀「・・・何の冗談?」

智史「いや・・・冗談じゃないんやけど・・・」


亜紀「それやったらうちの高校受かったんちゃうん!?」


何で私、智史が成績上がったこと喜んでるん?


智史が同じ高校受かったら・・・

あの約束守らなあかんやん。


智史「いや・・・実は問題難しくてできんかった」

亜紀「え・・・あ・・・そうなんや」


ちょっと安心した。

どっちなんや私。


智史「周りもできんかったって言うててんけどな」

亜紀「そうか・・・」


また智史と同じ高校通いたい。

けど智史と付き合うのはごめんや。

私何であんな約束してんやろ。


亜紀「智史がさ・・・受かってても私付き合わへんで」


言ってしもた。

私ずるいわ。


一回言ったことやのに。

これやからこの口は時々困る。

私・・・最悪やな。


智史「別に・・・ええよ。期待してへんし」


・・・え?

智史怒らへんのか?


亜紀「じゃあ何でそこまで成績上がったん?」

智史「たださ・・・亜紀と一緒に学校通いたい。そう思っただけ」


噓や。

智史は期待してた。

期待してなかったらここまで成績上がるわけない。


私と一緒に学校通いたいじゃなくて

付き合いたいって思ってたんやろ。

だから頑張れたんやろ。


でも・・・

私も智史と付き合うとかはホンマ無理。


勝手な約束して

約束破って


傷つけて

ごめん。


智史「まぁそういうわけやから!受かったらまた一緒に学校行こな!」

亜紀「うん・・・」


智史「じゃあ、誕生日の手紙、ちゃんと読んでや」


そう言って智史は走って行った。


智史はどんな顔して走っていったのかな。


もし私が智史の立場なら

絶対泣いてるな。

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