表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5回目のプロポーズ  作者: 龍二
1/10

第一章 初恋 智史編

■第一章 初恋 智史編■


~小学5年・4月~


僕の名前は智史さとし

生まれも育ちも大阪。


僕の通う小学校は歩いて30分のところにある。

結構遠い。

体の弱い僕にとっては大変なんよ。


僕のええとこ?

ないない。

頭も悪いし運動神経も悪い。

背も小さいし。

唯一の趣味といえばゲームかな。


今日から僕は小学5年生。

クラス替えが発表される。

僕は人と話すのが苦手。


今まで友達と呼べる友達ができたことがない。

でもいじめられたりしてるわけじゃない。

だから余計に寂しい。

それももう慣れたけど。


はぁ・・・

つまらん毎日がまた始まる。

だからあんま学校行きたくないなぁ。


と言っても行かないわけにはいかない。

何だかんだ言って門の前に着いてしまった。

掲示板に人だかりができてる。

ああいうとこに割り込んで入っていくのも苦手。


うわ・・・

今日慌てて出てきたからメガネ忘れた。

最悪。

掲示板に何書いてるか見えへんし・・・

しゃぁない。

知らん人に話かけるんイヤやけど

とりあえず身近におる横の女子でええか。


智史「あのさ・・・僕のクラスどこか・・・教えてくれへん?」

女子「は?自分で見ぃさ」


何この人・・・

声でかいし、ケンカ腰やし。

俺の一番苦手なタイプや・・・


智史「いや・・・メガネ忘れて・・・しもてさ」

女子「あーもう、めんどくさいな。名前何て言うの」

智史「さとし・・・」

女子「だっさい名前・・・えっとな」


おいおい、名前にまでケチつけだしたぞ。

たぶんこいつとは仲良くなれへんな・・・


女子「2組やな、私と一緒」

マジかよ・・・

よりによってクラス一緒か。


まぁあんま関わらんようにしとこか。

いじめられたらイヤやし・・・

軽く礼をしてその場を立ち去った。


今日から僕は高学年。

勉強もまた難しくなるんやろな・・・

しかもあんなやかましい奴とクラス一緒やし。

そう思いながら教室に向かう。


あ、その前に便所いこ。


・・・

ふー、すっきりした。


毎朝授業前に便所に行くのが僕の日課。

だって早く教室入っても面白くないし。


キーンコーンカーンコーン。

おっと5分前の呼び鈴や。

ちょっと急ごか。


ガラッ。

教室を開ける。


4年生の時の教室と何ら変わりはない。

黒板があって、机があって、ロッカーがあって・・・


とりあえず出席番号順に着席する。

担任「えー、私が担任の・・・」

その自己紹介も毎年と変わらない。


最初の行事である席替えのくじ引き。

仲のいい友達の隣になりたい。

好きなコの隣になりたい。

多分みんなそんなこと考えてる。

ドキドキしてる。


けど僕にとっては楽しみじゃない。

ただ先生によく当てられる前の席だけはイヤや。

それだけ。


クジに書かれていたのは12の数字。

廊下から二列目、一番後ろ。

ちょうどええポジションやな。


担任「じゃあ番号の書いてるとこに座れ~」

ガタッ。

座った机には相合傘の落書きが。

しかも彫ってある。


智実と・・・涼太。

誰やねん。

こーいうのってテストでガタガタして書けへんからやめてほしい。


それに・・・

相合傘を僕が書くことなんてきっと一生ない。

小学生で誰かを好きになるとか、ありえない。


今日の天気は快晴。

窓際なら強すぎる風も

机二つ分離れるだけで心地良い。

そんな感じがした。


担任「えーそれじゃあ一回休憩にする」

ホームルーム終わって10分休憩か。

ちょっと寝よう。

僕はいつも通り顔を伏せた。


「・・・やろ!?」

ん?何や・・・でっかい声やな・・・


「やっぱりそうや、なぁなぁ」

僕を呼んでんの?


「あんたメガネ忘れた子やろ!?」


忘れもしない。

僕より高い身長。

くっきりとした目。


そして何より・・・

大きい声。

さっき僕にクラス教えてくれた子や。


智史「あ、うん、そうやで」

女子「やっぱそうや!隣やしよろしく!」


マジで・・・

このやかましいのがよりによって隣か。

最悪や。

ていうかこんな声でかいのに何で横におること気づかんかったんやろ。


亜紀「自己紹介な、亜紀です~アキって呼んで下さい、ってそのままやんけ!」

絡みづら・・・


智史「君さぁ、さ・・・」

亜紀「亜紀でええって、あんたのこと智史って呼ぶし!はい決定!」


声マジででかい・・・

みんなこっち見てるやん。

頼むから僕のこといじめんといてや。


智史「あ、亜紀さんさぁ、さっきから僕の隣おった?」

亜紀「いやー実はな、夕べ夜遅ぉまでゲームやっててな」


ゲーム好き?

僕と一緒やな。


智史「・・・そんなことしてて親に怒られへんの?」

何で僕こんなヤツと話してるんやろ。

眠たいのに。


でも僕にこんな話しかけてくれたんは初めてやし。

ちょっとだけ・・・

うれしいかも。


亜紀「・・・」

智史「?どうしたん?」

亜紀「うちの家さ、お父さんおらんからお母さん夜働いてるねん」


あーあ、しもた。

たまにしゃべったら人の傷つくこと言ったこれや。

最悪。


智史「何か・・・ごめん」

亜紀「ええよべっつに!気にせんといて!」

そう言って僕の背中を叩く。


智史「痛っ・・・」

亜紀「ごめんごめん、智史、貧弱そうやもんな!」

ホンマ失礼やな。


でも・・・

ここまで何でも思ったこと口に出せる人に出会ったのは初めてかもしれん。


僕は思ったことをすぐに口に出さない。

相手が傷つくかどうか一回考えてしゃべれ。

そう親に教わってきたから。

だから今の自分もこいつもちょっと新鮮。


亜紀「話戻すけどな、だからホームルーム寝とってん」


ああ、だから静かで気付かんかったんか。

ていうかそのまま寝といてくれよ。

そして僕に話しかけんといてくれ。


智史「僕は今から寝るし、じゃあ」

亜紀「はぁ?何なん?人がせっかく話かけてんのに」


・・・やっぱ好きになれん。

自分勝手の都合を押し付けるやつは嫌い。


亜紀「ちょっと智史~」


無視無視。

今日は授業もないし始業式は昼までで終わる。

早く帰って昨日のゲームの続きしよ。


僕はとにかくゲームが好き。

友達がいないから外で遊ばないってのもあるけど。


また普通の毎日が始まる。

授業受けて、帰ったらゲームして。

そう思っていた。




次の日・・・

智史「行ってきます。」


今日から本格的に授業が始まる。

めんどくさい。

でも勉強は一応しとかんとなぁ・・・


今日はメガネ忘れずにかけてるな。

それを確認して家を出た。


「あ、智史やん!」


・・・この声はまさか・・・

やっぱり。


亜紀「智史やん、おはよう!」

智史「お・・・おはよう・・・」


朝っぱらからでかい声。

耳がキンキンする。

ていうか、何でここにいるん?


亜紀「何でここにおるん?」

智史「いや・・・そっちこそ」

亜紀「私家から40分かけて歩いて通ってるねん」


40分か。

僕より遠いな。


亜紀「あっちから歩いてきたんよ、で、何でここにいるん?」

智史「・・・あそこ、僕の家やから」

亜紀「マジで!?じゃあこれから朝一緒に行こや!」


あ・・・しもた。

言わんかったらよかった。


智史「・・・どっちでもいいけど」


僕何でイヤって言わへんねん。


亜紀「じゃあ決定!」


言うと思った。

ホンマ苦手やわ。


でも・・・

嫌いにならん。

きっとこれからも・・・

なぜかそう感じた。


亜紀「ていうか智史ってメガネかけてんねんな?だっさー」


・・・やっぱり嫌いかも。






~小学6年・9月~


それから僕らは何だかんだでずっと二人でいるようになった。

みんなからは付き合ってるんじゃないかって言われるほど。


小学6年生になった僕らはまた同じクラス。

席は離れたけど、休み時間も一緒に遊ぶ。


亜紀は僕と違って運動神経抜群。

だから10分の休憩でもすぐ外に行きたがる。

それに引っ張られて僕も少しずつ外で遊ぶようになった。


登下校も一緒。

家がバレてるから・・・休みの日も遊びに来るようになった。


そう言えば今思ったけど亜紀って友達おらんの?

僕といっつも一緒に遊んでるけど・・・

一回きいてみよかな?


キーンコーンカーンコーン。

今日も授業が終わった。


智史「あのさ・・・」

亜紀「ん?何や~?」


智史「一緒に・・・帰らへん?」

亜紀「何や?智史から誘ってくるなんて珍しいな?」


確かに。

いつも亜紀に引っ張られてばっかりの僕が誘うなんて。

でも何でいつも僕だけと一緒なんか知りたいし。


亜紀「まぁ心配せんでも強制やけどな!」


やと思った。


亜紀はいっつも明るい。

笑った時にまだ生えそろってない歯を見せる。

それがまた面白い。


智史「ちょっと話あんねんけどさ」

亜紀「智史が話!?なになに!?」


亜紀は大きい目をさらに開く。


智史「いや・・・歩きながら話そ」

亜紀「了解であります!」


僕らは校門から出た。




亜紀「で?話って何よ?」

智史「あのさ、何で僕といつも一緒におるわけ?友達おらんから?」


僕が亜紀に質問するなんて初めてかもしれん。

いつも亜紀の話を一方的に聞いてるだけやし。


亜紀「・・・そう、友達おらんから」


え?冗談のつもりやってんけど・・・


智史「え・・・でも・・・あんなに話できてるやん」


僕から見れば亜紀は他の人とも気軽にしゃべる。

何でもかんでもよくしゃべる。


でも友達おらんって・・・

どういうこと?


亜紀「私さ・・・前の学校でいじめられててん」


え・・・ホンマに?

信じられへん。

どっちかいうと”いじめる”タイプじゃないのか?


智史「前の学校って・・・転校してきたん?」

亜紀「うん、小4の時に。親が離婚したってのもあってな」


・・・またいらんこと言わしてしもたかな?


智史「・・・」

亜紀「あ・・・そんな顔せんといて!私から言ってんから」


智史「うん・・・」

亜紀「でさ、いじめられてた原因、何やと思う?」


そんなん僕に聞かれてもな・・・

何やと思う?って質問する人多いけど、分かるわけない。


智史「分からん・・・」


亜紀「背と声がでかいから」

智史「納得・・・っとごめん」


あかん。

亜紀とおるとつられて色々しゃべってしまう。

言わんでいいことでも・・・


でも確かに亜紀の声は隣町まで聞こえるぐらいでかい。

背も僕より10センチは高い。

まぁ僕がだいぶ小さいってのもあるけど。


だから威圧感がある。

でも別にそれがイヤやとか

亜紀のことウザいとか思ったことはない。


亜紀「いいよ、ホンマのことやし」

智史「ホンマ・・・ごめん」


亜紀「私デカ女って言われていじめられてた。色んな意味で」

智史「・・・」


イヤな空気が流れる。

こんな時どんな言葉かけたらいいんやろ。

友達付き合いがなかった僕には分からん。


智史「正直、うらやましいわ」

亜紀「・・・え?」


智史「正直・・・亜紀がうらやましい」

亜紀「何でよ」


智史「僕は・・・いじめられるんが怖くてあんましゃべらんようにしてる」


そう、僕はしゃべるのが下手。

だから言葉で人を傷つけるのが怖い。

それでいじめられるのも・・・怖い。


亜紀「・・・智史、無口やもんな」


智史「亜紀は、前の学校でもそんなんやってんやろ?」

亜紀「・・・そうやな」


智史「それでも亜紀のままでおるやん」

亜紀「亜紀のまま?」


智史「いじめられることを恐れず声も張ってるし背もでかいままでいる」

亜紀「背でかいのはしゃぁないやろ!」


亜紀が笑う。

やっぱ亜紀は笑っててくれるのが一番。


智史「やから・・・そのままでええんちゃう、亜紀のままで」


亜紀は強い。

いじめられることを恐れない。


いじめられるのが怖くて自分を隠している・・・

そんな僕とは違う。


亜紀は親が離婚したから転校してきたって言ってたし

家だって複雑できっと色々考えてる。

毎日ぼーっとゲームばっかりやってる僕とは違う。


僕も亜紀みたいに・・・なりたい。

強く・・・なりたい。


亜紀「うん・・・ありがとう・・・」

智史「へへ」


きっと亜紀の近くにいると強くなれる。

思ったことを口に出せない性格を

悪い自分を変えられる。

そう思った。


亜紀「一つだけ約束」

智史「何?」


亜紀「ずっと私の友達でいて。強制」


亜紀が小指を出す。

子供っぽいとこもあるんやな。


でも言葉がちょっと乱暴。

まぁそれも亜紀らしいけど。


智史「・・・うん」

亜紀「噓ついたら針万本飲-ます!」


智史「ちょっと、めっちゃ多いやないか・・・」

亜紀「はは、覚悟しときや~」


亜紀もきっと友達が欲しかったんや。

それやのに最初は


亜紀と初めてクラスで出会ったあの日はそっけない態度とってしもたな。

亜紀、ごめんな。


亜紀「じゃあ、また明日な!」

智史「うん、またあし・・・」


そう言いかけた時だった。

一瞬亜紀の笑顔に・・・

涙が見えたような気がした。


気のせいかな?

気のせいじゃないとしたら・・・

何の涙やったんやろ。


僕が良い方に考えすぎなんかもしれんけど・・・

もしその涙は友達ができたことに対する涙なら・・・

うれし涙なら・・・いいな。


その日からだろうか。


尊敬していた亜紀をもっと知りたい

もっとそばにいたいと思うようになったのは。




次の日・・・


夕べはあんまり眠れなかった。

この気持ちは何?


まさか・・・初恋?

この僕が?

しかも亜紀相手に?


確かに亜紀のことどっちか言うと好きやけど・・・

でも恋ってドキドキするもんちゃうの?


亜紀「おはよう」


いつも通り家の前に亜紀が来る。

亜紀の顔を見つめる。


亜紀「何よ・・・私の顔に何か付いてる?」

智史「・・・いや、何も」


ドキドキせんな。

これは初恋じゃない。


これは友達って意味で好きなだけ。

でも僕友達できたん亜紀が初めてやからよく分からんねんな・・・


智史「亜紀はさぁ、何ていうの?恋・・・したことある?」


何聞いてんねんやろ俺・・・


亜紀「えー、智史がそんなこと聞いてくるの意外~」

智史「いや・・・その・・・」


うわ・・・

顔熱くなっていくのが分かる。


亜紀「何テレてんの?きっも~」


こんなこと聞くんじゃなかったな・・・


亜紀「・・・あるよ」

智史「・・・え?マジで?」


意外な答え。

やかましい男みたいな亜紀が恋なんて。


智史「誰なんそれ?」

亜紀「秘密~」


「智史」って言われることにちょっと期待した。

何かアホみたい。


智史「あ・・・そ」

亜紀「しゃぁないな、教えたるわ」


ホンマに?

少しドキドキしてきた。


亜紀「稲葉くん」

智史「誰それ?クラスにそんなんおったっけ」


亜紀「転校する前の学校のクラスメイト」

智史「・・・へ、へぇ、そうなんや」


ちょっとがっかり。


智史「亜紀をいじめから救ってくれたとか?」


亜紀「ううん、そいつにいじめられててん」

智史「何で?何でそんな人のこと好きになんの?」


ホンマに亜紀は何考えてるか分からん。

いじめられてる中で手を差し伸べてくれる人。

そういう人を普通好きになるんじゃないの?


亜紀「だって・・・男前やってんもん」

智史「・・・は?」


もしかして・・・

亜紀って顔だけで選ぶタイプ?

いわゆるメンクイ?とかいうやつか。


亜紀「は?って何さ、は?って」

智史「いや・・・ごめん」


まさかそんな拍子抜けた声が出るとは。


智史「好きやって言ったん?」

亜紀「・・・言わんかった」


智史「何で?」

亜紀「だって・・・その人ケチなんやもん」


・・・は?ってまた言いそうになった。

ケチ?

どっちの方向に話が行ってるの?

寝ぼけてないやんな?


智史「ケチやったらあかんのか?」

亜紀「絶対あかん」


男前がいいとかケチやったらイヤやとか・・・

小学生がこだわるとこちゃうで・・・


亜紀「その人サンドイッチについてるアスパラ食べたり、プリンのフタなめたり・・・」


それだけじゃケチかどうか分からんし。

ていうかそれって行儀の問題じゃ・・・


亜紀「うちの家、離婚してからお母さん苦労してんねん」


亜紀は僕によく家の話をする。

その話をするのはつらいかどうかは分からない。


けど僕に話してくれるってことは・・・

ちょっとは信頼されてるんかな。


亜紀「だからお金に苦労せん人と付き合いたい」


なるほどな。

よう分からんけどだからケチなんはイヤなんやな。

・・・最初の男前は関係ないけど。


亜紀「あとは・・・やっぱり一緒にいてドキドキする人かな」

智史「やっぱりそうか・・・」


亜紀「?やっぱりそうかって何?」

智史「あ、いや・・・何でもない」


昨日の亜紀の涙を見た時・・・

亜紀のこと好きかもって思った。


でもその好きは何の好きか分からない。

初恋かと思ったけどドキドキしない。

これってやっぱ恋じゃなかったんやな。


亜紀「やっぱ男前で金持ちでドキドキする人と付き合いたいな!」


何かずいぶん単純。

でもそれが何か亜紀らしくていい。


亜紀「何言うてるんやろ・・・やっぱり変わってるな私」

智史「いや・・・どうかな」


変わってるな。

でもそう言ったら亜紀はまた騒ぎ出すやろ。


亜紀「でもな・・・好きの形って色々あると思う」


色々あるの?

好きの形が?


男前やお金持ちは亜紀の好みとして・・・

やっぱりドキドキするのが好きってことなんじゃないの?


亜紀「優しかったり、運動神経良かったり・・・他にも探せばあるやろ!」


他にもあるのか。

じゃあ亜紀の涙の理由を知りたいのは?

もっと家のこと相談に乗ってあげたいと思うのは?


亜紀といてもドキドキしない。

けど亜紀のこと・・・


もっと知りたいって

もっと


ずっと一緒にいたいって

そう思うのは


それは

僕の”好きの形”でいいのかな?


智史「・・・」


僕は足を止めた。


今なら


今なら言えそうな気がするから。


亜紀「・・・?どうしたん学?具合でも悪いん?大丈夫?」


智史「僕・・・僕亜紀のことが・・・好き」


言えた。


今まで言いたいことを口にできなかった僕が

亜紀と友達になって

亜紀を好きになって



そして

亜紀に好きって

言えた。


亜紀「何や~今さら言わんでも智史はエエヤツやって分かってるって!」


あいや・・・

そうじゃなくて・・・


智史「あのさそうじゃなくて・・・」

亜紀「分かってるよ」


え・・・?


亜紀「それが学の”好きの形”なんやな?」


伝わった。

良かった。


亜紀「でも私を好きになるならドキドキさせてくれんとな!」


・・・やっぱり。


亜紀「あと智史みたいなブサイクはあかん」


改めて言わんでも・・・


亜紀「あとお金持ちにもならんとな!」


・・・亜紀には参るわ。


亜紀「悪い悪い、ちょっと言いすぎた・・・」


ホンマに言いすぎ。

僕は結構勇気出して言うたのにこの仕打ちとは・・・


亜紀「やから・・・一生友達でおってな!約束したやろ!」


え?


それって

どういうこと?


僕の気持ちは

受け取られへんって


そういうことなんか。


これが

失恋ってやつ?


僕・・・

フラれたんか。


亜紀「あっ、お母さんからティッシュ買ってくるように言われてるからここで!」


智史「そっか、また明日」

亜紀「またな~」


亜紀はスーパーの中にかけこむ。


気のせいやろか。


そのうしろ姿がいつもより早く消えていく・・・

そんな気がした。


でもいつまでも亜紀は友達でおってくれるって

そう言ってくれた。


きっとこれからも一緒。

ずっと一緒。


でも亜紀の姿が完全に見えなくなった時

どうしてかは分からない。


分からないけど・・・


僕の目からは涙が

こぼれ落ちていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ