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丘の上の空

作者: 幻夢

カーテンの隙間から差し込む光に目が覚める。

頭が痛い。枕に顔を押しつけ、3度唱える。「起きる、起きる、起きる」

布団から飛び出し、洗面所へ向かった。


僕は朝部屋のカーテンを開けることはない。薄暗い部屋。

コーヒーを飲む。インスタントコーヒー。最近朝食はとってない。

時計を見る。頭が痛い。3度顔を両手で叩く。気合は・・・入らない。

まだ寝ぼけた顔。ドアのノブに手をかけながら、玄関で3秒たたずむ。

重いドアを開ける。


眩しい。


いつもと同じ。起きた時間も。コーヒーのまずさも。家を出る時間も。管理人の無駄に元気な挨拶も。

何も変わらない。しかし、いつもと一つだけ違った。ドアを開けた瞬間、いつもならひどくなる頭痛が今日はなぜかスーッと消えていった。外から差し込む日の光に自然と吸い込まれるように。


この坂道を上ると、ごちゃごちゃした街が一望できる。決して綺麗な景色ではない。

蟻のように駅へ向かう人達。大通りの渋滞。毎朝ここで僕はため息をつく。


しかし、今日は違った。うんざりする目の前の景色が一切目に入らず僕はなぜか空を見上げていた。


「いい天気だ。」


なんとなく、空を見上げていた。気持ちいい。


青い空。僕の体は広く高い空に向かって舞い上がった。

どんどん昇っていく。

雲が少し邪魔でも、太陽の光が眩しくても、もっともっと高く。

やがて、宇宙に飛び出した。


地球を見下ろした。


「綺麗だ。」


うんざりする景色も。どうしようもない嫌な頭痛も。そこにはない。

胸のあたりがスーッとする。今、僕は地球を見下ろしている。




気がつくと、いつもの丘の上にいた。

人ごみで溢れる駅前。クラクションが鳴り響く大通り。

そんな景色を背景に、僕の足元には綺麗な花がさりげなく咲いていた。


僕は微笑んだ。







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