4.下級地域の地図
開けた大通りに出た。それなりに人が行き来している。
どこか中世の西洋っぽくも都市っぽさも兼ね備えている。外見は中世ヨーロッパのようだけど、中身は喫茶店やホテルなどがあるなど現代日本の都市のような、そんな不思議な和洋折衷が違和感なく存在している。
水色の空が清い。白い雲が流れゆく。
バサッ! パサッ――!
真上を見上げてると、そこに巨大なドラゴンが通り過ぎていく。人間を優に超す巨体から羽ばたく羽。思わず眼を奪われた。翼が羽ばたくたびに、街の空気が大きく揺れていく。
あたっ――。
余所見してたせいで人にぶつかってしまった。
「すみません」と反射的に出す。
ぶつかった人は私を見て「こちらこそ」と返す。その人は私よりも背が高くてすらりとした艶やかなのブロンドカラーの髪をした女性だった。
まるでモデルみたい。すごく美しい――。
いや、モデルだろう。まるでファッションショーでしか着られないような奇抜な服装だから。独創的な黒い翼の装飾なんてファッションショー以外で見られることはない……はず。
彼女はそのまま通り過ぎて行った。見蕩れてしまう綺麗なモデルさんだった。整った顔。ただ、左眼を怪我しているのか包帯をしているのが少し勿体ない。
それでも「綺麗だったな。私もあんな風になってみたいなー」なんて思った。
「お嬢様はアレに惹かれるのですね……。なるほど。カッコイイものはカッコイイ、何歳になっても発症するものは発症する。ご安心ください、私、厨二病と言ったものにご理解ございますので。」
「違うから。絶対違うからね、それ!」
「え……。てっきり、あの何とかを封印した何とかかんとかの眼帯とか、漆黒の何とかの翼みたいなのをつけたいのかと……。」
「違うわ!」
危ないところだった。もう少しで、私はイタイ人間だと思われるところだった。何故か少し冷や汗出た。
喫茶店にやって来た。
外のレンガでできた景色を眺めながらカフェラテを啜っていく。
「魔王討伐に関して伝えたいことがあるの」「魔王討伐において提案があります」と二人が当時に口を開いた。
カゲトがカナリンに先を譲った。
「実はね、魔王を討伐しようと魔王城に向かっても魔王は倒せないの。」
どういうこと? それを代弁するかのように「詳しくお願いします」と彼が質問してくれた。
「魔王を倒すためにはこの世界にある五つの石像を、封印を解いてから破壊しなきゃならないの。一つでも石像が残ってたら、魔王は何度でも復活するの。」
「つまり……魔王よりも先に石像?」
「うん。そうなの。」
魔王討伐と言っても、私達はまずは魔王を倒すために五つの石像を封印を解いて破壊する必要があるらしい。
「封印を解くと石像が襲い始めるわ。それもとっても強いから舐めてかかれば死ぬよ。」
「その言い方ですと、封印を解いたことがあるように聞こえますが……。」
「うん。一つだけ封印を解除したら襲われて死にかけてたところを二人が助けてくれたって訳! ちなみに封印を解かないと壊せない魔法にかかってるから戦いは避けられないのよ。」
つまり、私達がすべきことをまとめると……
①石像の封印を解除する。
②襲いくる石像を破壊する。
③魔王城に行き、魔王を討伐する。
という流れだ。
だいぶ掴めてきた。
「では、続いて私から。魔王城に近づくに連れて魔族の強さは跳ね上がっていきます。下級地域なら守りきれますが、上級地域は過酷故に手一杯になってしまい、お嬢様を守りきれる自信はありません。ですから、お嬢様には自らの身を守れる程度には強くなって貰わなければならないと思います。」
ずっと守って貰う気でいた自分に喝を入れた。おんぶに抱っこじゃ駄目だ。私も精一杯頑張らなきゃ。
「ですので、下級地域でジュリネお嬢様をある程度鍛え上げてから、魔王城に進むべきと思うのです。」
「いいんじゃない?」カナリンは頷いて、私の方を見た。
二人の視線が私の方に集まる。
少しだけ珈琲を喉に通してから力強い顔で頷いといた。
「では、土島、別名チュートリアルの村へと向かいましょう。」
「土島は駄目。そこには恐ろしく強い石像がいるから。」
「なるほど。例の石像は土島にあったのですね。では、イーストブ――」
私を置いて、二人でサクサクと進んでいく会話。あまりにも置いていかれ過ぎたので一旦「ちょっと待って」と止めた。「今、何の話? 土島ってどこ?」
「……。そこから説明が必要でしたか」とため息を吐かれたような気がした。
仕方ないじゃん。私はバグが使えた都とお屋敷のある春町以外行くことがなかったんだから。
【紙――】【書くもの――】何も無いところから現れる一枚の白紙と一つの黒字のペン。執事が何も無いところから取り出したペンを回した。
執事が紙に簡易的なマップを書いていく。これが"下級地域の地図"とのこと。ひとまず頭にメモって置こう。
真ん中に書いた大きな大きな町。
「まず今いる巨大な都が《古の都》です。この世界の中において、人間の世界の中心です。」
外観は昔っぽくても、中身は都市。適当な事を言うが、東京だとか大阪だとかそんなレベルの都会だ。正直ここにいれば、お金さえあれば何でも揃う。最高の町だ。
さらに、囲むように存在する壁が魔族を防いでくれているという安堵感を与えてくれる。とっても安心感のある場所だ。
「そこから東西南北に進んで最初に辿り着く村や町を含めて下級地域と呼んでいます。出現する魔族のレベルが相対的に低いから下級です。」
都から四方に伸びる線。
「最も出現する魔族が弱い場所が南に位置する《土島》でございます。」
ここがさっき言ってた場所か……。
「その次に魔族が弱い場所が東に位置する《イーストブルー》でございます。」
なるほど。
しかし、どこかで聞いたことがあるような。何か麦わら帽子を被った赤い服着た少年が浮かんでくるような……。
「続いて、北側に位置する《春町》。」
私達が住む屋敷のある町だ。ここは言われなくても分かる。
「最後に、弱い魔族から比較的強めの魔族までバラツキが大きな山村が西側にあります。ここは《西大山》と呼ばれ、冒険者が腕試しに使われやすい場所となっております。」
ふむふむ。なるほど、なるほど。
ひとまず位置関係をまとめるならば――
《下級地域》
真ん中……古の都「人間世界の中心」
北……春町「屋敷のある町」
南……土島「最も魔族が弱い村」
東……イーストブルー「海賊王がいそうな村」
西……西大山「腕試しに使われる山村」
「そして、魔族が弱い土島には恐ろしく強いとされる石像がいるようですので、東側――イーストブルーに行き、ジュリネお嬢様の戦闘力アップを計ろうという手立てです。」
「なるほどね。そこで"悪魔〇実"を見つけて食べればいいって訳ね。」
「駄目です。著作権的にアウトです。」
「じゃっ、行こう。〇ンピースを探しに。」
「駄目です。お嬢様。それ以上は――。」
「そもそも目的変わってるじゃない!」
私達は立ち上がった。海賊王になるために――。嘘です。私の戦闘力アップのために、イーストブルーへと向かうことにした。




