表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

誰よりも花が似合う君へ

作者: ぽこっち
掲載日:2026/02/05

教室の扉を開ける。


赤みを帯びた日の光が、ガラスをすり抜けて窓際の椅子を緋色に染め上げた。


「まーくん、待たせてごめん。やーっと委員会終わったよ。一緒に帰ろ。」

 

光の元を目で追う甘栗色の髪をした彼に、私は話しかける。

まーくんは私を振り返るなり、私を睨みつけ激しく横に首を振った。

 

『絶対に断る』

 

そう言いたげだった。


「酷いよ。私が委員会に呼び出されてから、どれだけまーくんに会いたかったと思ってるの。私の気持ちは、どうでもいいの!?」

 

私に詰め寄られた彼は気まずそうに後ずさる。


「ねえ!聞いてる!?なんで、私の言う事いつも聞いてくれないの。なんでこないだバレンタインのチョコ、受け取ってくれなかったの。そんなに、私のこと嫌いなの......?」


まーくんは罪悪感からか顔を曇らせながらも、頑として譲ろうとしなかった。


「なんでいつも私の邪魔するの。どうせそっちに行かせてくれないなら、私になんて会いに来ないでよ!

その顔を、見せないでよ.......」


遂に耐えられなくなった私は、駆け足で教室を飛び出す。

目から溢れた不純物が、私の頬を濡らして光った。


  

まーくん、改め誠は目を伏せたまま、自らの机の上に置かれた切り花を撫でようとする。

が、半透明に透けた誠の指は花びらを貫通し空を切った。



私は家への帰り道を無我夢中で走りながら幼なじみ(まーくん)を思った。


ある日登校した学校では、救急車と、警察のパトカーが数台止まっていた。


『飛び降りた●●さんの知り合いの方はいらっしゃいますか!?』

 

そんな声が、遠くの方で聞こえた気がした。

私は理由もわからず、見つかるはずのない幼なじみを探す。結局、彼を見つけたのは仏花に囲まれた箱の中だった。

 

脳裏の記憶に私は吐き気を催しながらも、脇目も振らず手足を動かす。


『バカ、バカ、バカ』


と胸の内に呟いて。


ふと、私の目の前の十字路からトラックが飛び出してきた。

 

キキィーッ

 

私は思わず身を強張らせる。学校指定の鞄がボト、と地面に落ちた。



トラックは、私の50センチほど先で不自然なほど急にピタリと動きを止めている。


そして、トラックと私の間に立つ影。

見覚えのある甘栗色の髪が視界に入った途端、最後に残っていた一滴の雫が、ポロリと思い出したかのように溢れた。

 

「ほんとに、バカ。大好きくらい、いわせてよ。」

  

アスファルトに転がった鞄の奥では、渡せなかったチョコレートが未だ物語の千秋楽を待っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ