蒼き星のための翼たち
全てフィクションです。用語、数値等は作者の造語です。
よろしくお願い致します。
武 頼庵 様『すれ違い企画』参加作品になります。
西暦886xx年────
世界には危機が訪れようとしていた。
オーストラリアン大陸10個分程の大きさの隕石が、人々の暮らす蒼き惑星に衝突しようとしていることが判明したのだ。
世界連盟はすぐさま世界防衛軍に要請をかけた。
各所から呼ばれたのは5名のトップパイロット達──
「なぁ、こいつはマジでヤバいんじゃないか?」
白い壁が四方を囲む会議室で、北方から来たライオネル・ハンズ准尉が顎をさすりながら言った。
「このメンツが必要って時点でヤバいさ。オレ達の共通点と言えば、最高クラスの戦闘宇宙船乗りってことなんだから」
南方から呼ばれたドーザー・ミストン少尉は日焼けをしていて肌が小麦色だ。
「事態はもう差し迫っているんじゃないの?こうしてる時間だって無駄かもしれない」
東方基地からのユリナ・キーパス軍曹は、そのウェーブのかかった黒髪をかき上げてため息をもらした。
向かいにいた眼鏡のロパ・ビルドマンド中尉も口を開く。
「西部ではもう"世界の終末"だと大騒ぎだ。早急に対策を発表しなければ、暴徒やパニックになりかねない」
沈黙が広がりそうな────その時だった。
ドアが勢い良く開かれて、宇宙用ブーツの音が室内に軽快に響く。
会議室の議長机に両手をついて立ち、その灰色の瞳の男は始まりの挨拶もなく告げた。
「全員なんで呼ばれたか分かっていると思う。行くぞ、オレ達の最終兵器の元へ」
それだけで充分だった。4人は眼前のリーダーに力強くうなずいた。
★
「ゼイン!!待って!」
先頭に立って歩いていたゼイン・マクファーレン大尉は女性の差し迫った声に足を止めて振り返った。後方の4人もそれに従う。
明るい茶色のセミロングの髪を揺らして、その女性は息を切らして駆けて来た。
「ゼイン、行かないで!この作戦は……この作戦は……」
彼女は美しい緑の瞳でゼインに訴えたが、彼は一分の時もおかず 首を横に振る。
「ニナ、オレ達は行かなくちゃならない。オレ達がこの星の最高パイロットなんだ。オレがその指揮官だ。他にこの事態を救える者はいない」
ニナと呼ばれた女性はそれでも尚 彼の方に一歩踏み出した。が、ゼインはすでに体の向きを戻すと歩き出していた──その長い通路の先──
"最高宇宙戦闘船ラスター"の元へ。
★
次にニナがゼインを──彼らを見た時、その姿はすでにラスターの窓の向こうだった。全ては秒読みで、事態の流れは もはや止めることは出来ない。
ニナの唇はそれでも 聞く者のいない声に 震えた。
「この作戦に……意味なんて無い……」
ラスターは滑らかに基地から発進し、あっという間に速度を増し、流星のごとく宇宙へと飛び出していく。
★
宇宙空間──
「エンジン出力110%確認。現在82%に安定」
「発射口各部異常なし。発射エネルギー98%確認。シールド準備まであと3分9秒」
「酸素濃度、二酸化炭素濃度、船内湿度異常無し」
「船首角度修正中。船尾安定。修正終了まで11秒」
ゼインは宇宙船の異常が無いことを聞きながらも、すぐさま自分の眼前の空中──フロントフィールドに表示されている星々と隕石の図を見つめて言った。
「まもなく目標が肉眼で確認できるぞ」
数人が 座席から立ち上がるような音がした。
自分達の視線の先に広がる──闇に星々が瞬く景色に、やがてゴツゴツとした紫を帯びた黒い塊が表れる。
「こりゃ……すげぇな」
やはり顎に手をあてながら、ライオネルが呟く。
「思ってたよりもデカいベイビーだ」
ドーザーも同意した。それほどの重量を感じさせる禍々しい塊が、宇宙空間を流れていく。
「まだかなり距離があるのに、あの大きさって……」
ユリナはかすかに身震いしている。
副船長であるロパは落ちついた口調で言った。
「ベイビーを木っ端微塵にする必要はない。寝返りでも うたせて進行方向をずらせれば、我々の星は救えるんだ。これはそういう任務だ」
船員達は全員うなずいた。不安そうだが 希望が浮かぶ。
その時船内にAI音声が響き渡る。
"発射エネルギーが100%になりました。使用可能です" "発射エネルギーが100%になりました。使用可能です"
これを聞いてゼインは迷わず指示した。
「主砲を使う。照準準備」
「主砲スタンバイ────照準OK」
答えたドーザーの言葉にかぶせる速さでユリナが尋ねた。
「シールドは?準備完了まであと1分あります」
「待たない。1分待っていたらアイツのハイハイは何万キロ進むか分からない。遠ければ遠い程、星を救える角度は小さくて済む。粉砕した場合の破片は撃ち落とせ──できるなライオネル?」
聞かれた迎撃名手の返事には笑いさえ含まれていた。
「完璧に」
ロパがヒューと口笛を吹く。ゼインも一瞬笑みを浮かべたがすぐに厳しい表情に戻り、その一言を告げた。
「主砲発射」
「主砲発射!」
繰り返したドーザーはその声と共に赤いパネルを力強く押した。
ウォォォォォオオオン
持ち上がって開口していた主砲の円の外周から光が放たれ中央に集約する。やがて目が眩むほどのライトグリーンの光は真っ直ぐに伸び、宇宙の暗い空間に線を描く。
──そして その先の目標に届いた!
「届いたわ!!」
ユリナの歓喜の声がその瞬間上がったが
────あとに続くのは
「……何でだよ?爆発しない!!」
ドーザーの絶望の声だった。
主砲のレーザー砲は確かに届いているのに、全く動じず、黒い巨塊は進んでいく。
照準は的確で──攻撃状態のままだが、まるで暗い部屋で動く物体にライトを当てているだけのような状態だ。
「何でだよ!?」
ドーザーはこらえきれなくなったのか拳を壁に叩きつけた。
汗で曇った眼鏡を拭きながら、ロパがゼインに進言した。
「あの隕石の表面は、我々が知らない何か未知の成分なのかもしれない。例えばレーザー光線の熱波を吸収するような……」
瞬時に、ゼインは自分が極限の決断を迫られていると知った。
時間は無い
頼みの遠方からの攻撃は効かない
ならば── 一つしかない。一つしか ない。
「主砲を閉口。船体出力エネルギーを150%まで上げる」
そして彼は低く、だがハッキリと言った。
「進行方向をベイビーに入力。オレ達が動かすぞ…………!!」
船内の誰もが理解した。
船長が何を決断したのか。
それをしなければいけない理由は……乗った時から分かっていた。
「了解」
ロパが眼鏡をかけながら、操縦席にいつも通り向かう。
彼は進行方向を設定しているだろう──いつも通りに。
「了解」
「了解」
ユリナとドーザーもそう返した。ドーザーはかすかに涙を浮かべていたが、彼はそれをぬぐった。
「行こうぜ。どうせやるなら、完璧に」
ライオネルのその言葉は 今度はただ真剣だった。
「入力完了──動力起動で自動で隕石に向かう」
ロパとゼインは向き合ってうなずき合った。
「動力起動!」
全員が起動操作に入った────その時
フロントフィールドが最大限に広がり、星の防衛基地本部の司令部を映し出した。
ゼインはその映像を見て声を上げた。船は動き出している。
「ニナ!!」
映し出された彼女は 茶色の髪を振り乱しながら、数人に取り押さえられていたが、こちらに顔を向けて叫び出した。
「無意味なのよゼイン!!あなた達のしていることは!!」
ゼインを含む5人全員がその言葉に反応し、映像のニナに注目した。戦闘船は加速している。
「だって……だって……」
ニナは身をよじって拘束から逃れながら続けた。
「この作品はジャンルが"宇宙"でもない"パニック"でもないの!」
その一声に全員が驚愕した。画像の中も、外も。
高速の揺れでずり落ちた眼鏡姿でロパが問う。
「じゃあ、オレ達は一体どこの……」
ニナは容赦無く事実を伝える。真実を──
「コメディなのよ!!」
そして 戦闘船はトップスピードに入った。
「しかも作者が参加しているこの企画は……この企…画は……」
ニナが全てを伝える前に映像はブレて途切れる。
戦闘船ラスターはもう誰にも止められない!
船員達を振動が襲い、座席にただ揺られる。
黒く巨大な隕石に一直線に向かう。近づく近づく。
意識が飛びそうなスピードの中、ゼインは主人公として絶叫した。
「あの……白い獣……やりやがったなぁ………っ!!!!!!!」
その瞬間 全宇宙に響いた────その音が。
ス カ ッ
ルールールル〜♩
す〜れちーがーい〜♩
す〜れちーがーい〜〜♩チャンʕ•ᴥ•ʔ(←あの白い獣)
作者のシロクマシロウ子です。ʕ•ᴥ•ʔ
まず、申し上げましょう。このあと隕石と蒼い星もすれ違いますので、ス カ ッ と
全員無事です。ハッピーエンドのすれ違い企画参加コメディです。
私は真剣に笑いを求めて、もしくは「なんじゃこの変な作品!作者変わってるなぁ!」と、皆様が笑ってくださったら良いなぁと思い描いて書きました。必死に書きました。
しかしだからこそ、真面目に不安や心配をしながら読んでくれるような読者の方には、不快を与えているかもしれません。
文字の表現は自分の意図したものと違うこともあるかもしれない。不快を感じた方は申し訳ありません。
それでもこのことも伝えたいのです。このとんでもない作品のインスピレーションは『すれ違い企画』のおかげです。
企画がなければ、こんなにもすれ違いを大ががりに考えることもありません。発想は生まれなかったでしょうʕ^ᴥ^ʔ
『すれ違い企画』主催 武 頼庵 様、誠にありがとうございます。他に個人企画を主催して下さる方々も、いつも私に張り合いや楽しみや成長の場を与えて下さり、重ねてありがとうございます。
企画に関わる方関わらない方、登録ユーザー、そうでない方々も、読んでくれたことをありがとうございます。読んでもらえたんですから、爆笑しててもらえたら嬉しいんですが、「なんだこの作者おバカ?」(苦笑)や「何やってんのもうこのクマは」(失笑)でもホントにいいなぁ。(ᵔᴥᵔ)
面白くなかったら、ただただすみません。m(_ _)m




