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第9話 キルケの恋

 真夜中、ウォールはミハス村へ到着する。村の灯りはほとんど消えているがウルズの家は灯りが灯っている。ウォールはウルズの家の前に着陸する。

 すると家の中からミリアが飛び出してくる。そして、キルケに抱き着く。

 「キルケ、生きててよかった。」「私もミリアに会えるとは思っていなかったわ。」

 「大丈夫?」「ビアンカに変な魔法をかけられたけど。ダミアンは私に興味を持たなかったのよ。」

 「でも、ダミアンは私たちに良い感情を持っていないわ。」「私はダミアンに床にたたきつけられたわ。」

 「許せないわ。」「でも、ダミアンが私に手を出さなくてよかったわ。」

ミリアはキルケの無事を確認すると目をウォールに向ける。

 「ずいぶん遅かったわね。」「暗くなってから宮殿に突入したんだ。」

 「まさか、キルケに変なことしていないでしょうね。」「しないよ。友人を助けたんだ。礼が先だろ。」

 「ミリア、私、あなたがうらやましいわ。空飛ぶ王子様がいるのですもの。」「ウォール、白状しなさい。」「知らないよ。」

キルケは頬を赤く染めている。しかし、ウォールに心当たりはない。そこへウルズが出てくる。

 「ミリア、その子を紹介してくれるかしら。」「キルケ・ゼーテ、前聖女の娘です。私は彼女に恩があります。」

 「それならば、キルケさんは私が保護します。キルケさん、よろしいですか。」「はい、ありがとうございます。先生は偉大な魔法使いと伺っています。光魔法しか使えませんが教えてくれないでしょうか。」

 「ええ、身を守るための魔法を教えましょう。」「よろしくお願いします。」

キルケはミハス村にいる間、ウルズが面倒を見ることになる。ミリアもウルズに魔法を教わるため、毎日会えるので都合が良かった。

 キルケがミリアに言う。

 「ウォールはミリアを追って、従騎士になったのよね。」「ええ、そうよ。」

 「ウォールはミリアのことが好きなのかしら。」「私たち、相思相愛なのよ。」

 「じゃあ、かなわないわね。」「キルケ、ウォールが好きなの。」

 「好きになったの。私をお姫様抱っこして空を飛んでくれたのよ。かっこよかったわ。」「渡さないわよ。」

 「分かっている。ウォールにも内緒にしておいてね。」「うん。」

ミリアはウォールのことを知っているのは自分だけだと思っていたが、ウォールが有名になれば人気が出ると感じた。でも、ウォールを独り占めにしておきたかった。

 そしてミーメのことを思い出す。ミーメは今宮殿で何をしているのだろう。

 アストラ王国の第三王女ミーメ・アストラは、リーム王国の主要な貴族たちの所へ頻繁に顔を出していた。貴族の多くが自分の娘をダミアン王の命でビアンカに差し出していた。

 ミーメは傷心の貴族たちを気遣う。そして、貴族たちの心を掴んで行く。ミーメは、これは好機だととらえている。

 ビアンカを悪魔に仕立ててダミアン王を悪魔に組した堕落した王とすれば、リーム王国は混乱する。それをミーメがまとめてアストラ王国に組み込めば、大きな手柄になる。

 アストラ王国での王位継承でも有利に立てるだろう。

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