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第5話 宮廷騎士団来訪

 俺はミリアと共に神童と呼ばれて村の中では人気者だ。銀髪碧眼のミリアは、予想通り村一番の美少女になっている。アレンなどはミリアに鼻の下を伸ばしている。

 幼馴染がミリアで仲が良くていつも一緒だ。これは高得点だ。このまま結婚して村で平和に暮らすのも悪くはない。しかし、刺激に欠けている。

 俺は将来何になるか決められずにいる。このままだと両親と農夫をやることになる。俺は農夫を嫌っているわけではない。

 農業も工夫すればもっと稼ぐこともできるし、やれることはたくさんある。


 宮廷騎士団は馬車を用意して騎士団長以下10人の騎士でミハス村に向かっている。宮廷騎士団は近隣の村で情報を収集するが

 「ミハス村の男は皆、グレイグリズリーを一人で倒せる。」

 「ルビーアイと言う大悪魔がいついている。」

と言った信じられない話が聞かれるだけでミリア・アースの話は出てこない。ミリアのうわさが村の外に漏れていないのは、彼女は大したことはないのではないかと思える。

 大体、グレイグリズリーは経験を重ねた冒険者でも数人がかりで討伐する、厄介な魔物だ。大悪魔ルビーアイにしても現れたら亡国の危機になっているはずである。

 騎士団長バルタザール・リッツは情報は誇大表現されていると考える。どうせ、村総出でグレイグリズリーを討伐したことを話しが大きくなったのだ。

 大悪魔にしても誰かの見間違いであろう。バルタザールは部下に話す。

 「ミハス村に関しておかしな情報があるが気にすることはない。信託のとおりミリアをお連れするだけだ。村人とトラブルを起こさないように気を付けてくれ。」「「「はっ」」」

翌日の昼前、宮廷騎士団はミハス村に入る。村人が集まって来る。村人の一人が声をかける。

 「騎士様、こんな村に何の用ですか。」「私たちは宮廷騎士団です。国王の命で次期聖女ミリア様をお迎えに上がりました。」

 「ミリアが聖女様だと。」「ミリアは特別だからなー」「さすがは村の神童だ。」

村人たちはざわめき、口々にミリアのことを言いだす。騎士団長バルタザールは咳払いをする。すると村人たちが静まる。

 「申し訳ないが、ミリア様の所へ案内してくれないか。」「案内だと。」「ミリアは畑にいるはずだ。」「ウォールと一緒か。」「いつも二人でいるからな。」

バルタザールは我慢する。そして、何とか笑顔を作って言う。

 「畑はどこかな。」

ようやく、宮廷騎士団は村人の案内で畑へ向かう。この時、俺とミリアは魔法で畑に水を撒いていた。

 すると大勢の村人に囲まれて騎士たちがやって来る。俺は何ことかと考えるが状況は分からない。ミリアは俺の背中に隠れる。

 俺たちの前に騎士たち10人が並ぶと一斉に片膝をつく。何だこれはー、騎士たちと関りはないぞ。

 「ミリア様、あなたは女神ケレスの神託により次期聖女に選ばれました。」「えっ、ミリアが・・・」

あのくそ女神、「できる限り希望をかなえます」とか言っておきながら、俺の幸せの邪魔をしているじゃないか。

 「そこの君、邪魔だからどいてくれないか。」「ミリアに拒否権はあるのですか。」

 「君に用はない。家に帰りなさい。」「俺がミリアを守る。」「聞き分けが無いな。あの子供をどかせ。」「「「はっ」」」

騎士たちは立ち上がり、一人の騎士が俺の肩に手をかける。俺は騎士の腹に膝蹴りを入れる。ただの蹴りではない鎧通しの技だ。騎士は一発で倒れる。

 「小僧、やったなー」

騎士たちが剣を抜く。村人たちが「ウォールを守れ」と殺気立つ。バルタザールが大声で命令する。

 「バカ者!剣を収めよ!」

騎士たちが抜いた剣を鞘に収める。しかし、村人たちは治まっていない。もちろん、俺もやる気でいる。

 「誰か、ミリアの両親を呼んできてくれ。」

バルタザールが呼びかける。そして、俺に声をかける。

 「私は宮廷騎士団長バルタザールと言う。勇敢な少年よ。名は何という。」「ウォール、ミリアは渡さないぞ。」

 「ミリアの気持ちは聞いたのか。」「いや。」「ウォール、私、怖いよ。」「ほら、怖がっているぞ。」

 「ミリアと話をさせてくれ。」「分かった。そこから動くなよ。」

 「ミリア、君は女神ケレスに聖女に選ばれたんだ。これからこの国のために役立って欲しい。」「一人は怖いわ。」

ミリアは俺の背中に隠れながら言う。俺は決めたミリアをずっと守ると。



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