第12話 無詠唱魔法
道を塞ぐ男は三人とも大柄な体格をして剣を持っていた。こちらを威圧しているつもりなのだろう。ラースが剣を抜く。俺の後ろでマテウスも剣を抜いたようだ。
この場所で戦うことはまずい。道の右側が2メートル位高くなっていて茂みに伏兵が隠れている。数はかなりいる。後は馬車の後方に何人かいる。
左側は伏兵がいないが、おそらく崖になっているのだろう。中央の男が俺たちに言う。
「馬車を置いて行けば見逃してやる。」
嘘つけ、殺す気満々だろ。問題は右側の伏兵だ。仕方がない、魔法を使おう。
(アイスニードル200)
氷の矢が200本現れて右の茂みに高速で撃ち込まれる。茂みの中から叫び声がして、アイスニードルに貫かれた山賊が転げ落ちてくる。
「なんだ、何をした。」
答える義理はない。俺は中央の男に向かって俊足を使い剣をぬきながら男を中段から切り上げる。男は胸から血を噴き出し倒れる。
右の男はラースが炎の剣で剣を持つ手を切り落として首をはねる。左の男はマテウスが心臓を一突きして仕留める。
俺たちが馬車から離れた瞬間を狙って、後方にいた山賊たちが走って馬車に向かってきている。
(ファイアーアロー50)
突然、山賊たちの上空に炎の矢が現れて、山賊たちを貫く。これで山賊は全滅したはずだ。マテウスが俺たちに聞く。
「魔法を使ったのですか。」「私ではない。」
ラースが俺を見ながら言う。
「俺が魔法を使いました。」
俺が答えるとマテウスは冷や汗をかきながら言う。
「魔法の詠唱はいつしたんですか。」「俺は、詠唱なんてしたことないぞ。」
「無詠唱!何ということだ。本当に農夫なのですか。」「農夫だが、未来の従騎士だ。」
「ウォール、お前は非常識な奴だ。魔法は普通詠唱して発動させるのだ。私は剣に炎を乗せる時、言葉に出さないが頭の中で詠唱をしている。」「それならしているぞ。ファイヤーボールとか。」
「それは詠唱ではないよ。本当に無詠唱なんだな。」「魔法なんてイメージすれば発動するだろう。」
ラースとマテウスがため息をつく。マテウスが気を取り直して俺に質問する。
「ウォール殿は水系魔法と炎系魔法を使っていましたが何系統の魔法を使えるのですか。」「炎、水、土、光、闇と系統が分からない魔法もある。」
「光を使えるならヒールも使えるのではないのですか。」「使えるよ。」
「騎士のケガを治していただきたい。」「ハイヒールでいいかな。」
「高等魔法まで使えるとは。」「なら、さっさと治すよ。」
俺は二人の騎士のケガをハイヒールで治す。見ていたミーメが俺に抱き着いて言う。
「我のものになれ、離さないぞ。」「しつこいですよ。」
俺はミーメを引きはがす。ラースが俺に言う。
「魔法は極力使わない方がいいぞ。このことが知れたら大騒ぎになる。」「ああ、わかっている。」
俺はウルズ先生にも人前で魔法を使うことを控えるように言われている。確かに魔法を見せたことでマテウスの俺を見る目が変わってきている。
おそらく、アストラ王国へ迎え入れたいのだろう。だが、俺は聖女の従騎士になるのだ。
俺たちは山道を抜けて、町に入る。領主に面会すると山道の山賊の話をする。すると領主は喜んで賞金を渡してくれる。かなりの額である。俺たちが殺した山賊は賞金首だった。
おかげで、馬をさらに五頭購入して、馬で移動できることになる。ミーメ王女は領主に賓客として迎えられ、館に泊ることになる。
館では領主がミーメに取り入ろうと必死なので、俺はミーメに付きまとわれずに済んだ。




