第3話 ミハス村の上級悪魔
我は、エクムント・タウアーの家にある魔法陣で召喚された。いや、違うな暇つぶしに召喚されてやったのだ。私を召喚したエクムントは歓喜に震えていたな。
「わははは、やったぞ、ついに上級悪魔を召喚したぞ。私を追放したバカどもに天罰を下してやる。行くぞ。」「お前ごときが私に命令するのか。」
「私が主人だぞ。召喚したのは私だ。」「愚か者め。魔法陣が不完全だ。私は自由にやらせてもらう。」
わめくエクムントを放置して、私は外に出た。白髪に赤い目だ。人々は恐怖するだろう。道を歩いていると若い男にと目が合う。男は顔を赤くする。
そうだ、上級悪魔のウルズ様だ、恐怖に震えるがいい。
「あ、あのう。あなたのような美しい人に初めて会いました。雪のような白い髪に情熱に燃える赤い瞳、私と付き合ってください。」「変わり者め。」
たまには頭のおかしい人間もいるだろう。今度は子供連れの夫婦だ。さあ、子供を抱えて逃げ出せ。
「お姉ちゃん、きれい。」「ほんとね。美人さんね。」
「惚れてしまいそうだよ。」「あなた、帰ったら、ちゃんとお話ししましょうね。」「すまん。許してくれ。」
妻は夫を連行していく。なぜだ、悪魔を知らないのか。今度は話しかけてみよう。ちょうど老婆がやって来る。
「我は大悪魔ウルズ。恐ろしいだろう。」「これはまた美人さんだねえ。悪さをしていないのに恐れたりする村人なんていないよ。」
「なぜだ。悪魔だぞ。」「驚いて逃げれば満足かねえ。でも腰が悪くて走れないんだ。済まないねえ。」「何、腰が悪いのか直してやろう。」
我は老婆の腰にヒールをかける。
「あれー、腰の痛みが消えてしまったよ。ウルズさん。ありがとう。」「これで逃げられるだろう。」
「何言っているんだい。あんたみたいな美人さんをほっておけないよ。今夜は家に泊まりなさい。」「我は泊まるところを必要としていないぞ。」
「遠慮はいらないよ。」
我は老婆の家に住むことになる。することと言えば。ケガをした村人を治す位だ。我は退屈だったので隣村まで行くことにする。
途中、山賊に襲われている馬車を見かける。我は山賊に警告する。
「さっさとここを去るが良い。見逃してやるぞ。」「おい、こいつ悪魔だぞ。」「捕まえれば金になるぞ。」
無知な連中は、これだからダメだ。忠告はしたのだから始末されても文句は言えまい。山賊は目標を我に変えて向かってくる。我は山賊を全員燃やすことにする。
我の目の前で炎の人間の踊りが始まる。下手な踊りで面白いものではなかった。山賊は黒焦げになってくずれおちる。
我は馬車の方へ足を向ける。すると襲われていた商人が叫ぶ。
「あ、あくまだ・・・助けてくれー」
商人は馬車を走らせて、我の向かっている村へ逃げていく。礼も言えないとは恩知らずだ。まあ、今のは普通の反応だ。ミハス村の村人が異常なのだ。
我は隣村に入る。すると鐘が打ち鳴らされる。
「悪魔だ。ルビーアイが来たぞー」
村人が家の中に逃げていく、我を恐れているのだ。しかし「ルビーアイ」とはもっと威厳のある二つ名にしてほしかった。
我はそれから近隣の村や町に行ってみたが、人間は恐れて逃げまどうばかりだった。我は結局、ミハス村の老婆の家に住むことにする。数年後、老婆は眠るように天国へ行った。
我は天界に行くことはないから二度と会うことはないだろう。老婆の家は我の家となる。我は相変わらず村人のケガを治している。
変わったことと言えば、男どもが甘い菓子を持って相談事を話に来るようになったことだ。相談事と言ってもくだらないことで適当にあしらっている。
そんなある日、ウォールとミリアがやって来る。子供の来客は珍しいが面白いことは起きそうにない。早々に帰ってもらうことにしよう。
「どうした。我に何か用か。」「ウルズ、俺たち魔法で岩をバーンしたんだ。ヤガン先生がウルズに魔法を教えてもらえと言ったんだ。」
こやつら魔法を使うのか、銀髪だなあらゆる属性の魔法が使えるはずだ。確か7歳だったな。魔法を覚えるなら3歳から始めないと遅いがとりあえず才能を見てやろう。
「ほう、おぬしら2人とも銀髪か、面白い。」「ウルズ、魔法教えて。」
「ああ、全て教えてやろう。まずはこのコップを持て。コップに水が入っていると思ってみよ。」
二人はコップを水で満たす。初めてでコップ一杯の水を出すか。優れた才能の持ち主だ。
「おぬしらは合格じゃ。明日から遊びに来るがいい。少しづつ教えてやろう。」
これは、ちょうど良い暇つぶしが出来た。我の全てを教えて大魔法使いになるがいい。




