第6話 Sランクパーティーの報告
王都ダルヴィークに戻ったロイドたちは、冒険者ギルドへ報告へ行く。受付嬢がロイドたちに気づき声をかける。
「ロイドさん、さすがはSランクパーティーですね。無事に戻って来られて安心しました。殺し屋ウォールは討ち取ったのですよね。」「依頼は失敗したよ。」
「もしかしてミハス村へたどり着けなかったのですか。」「いや、ミハス村へ行ったよ。」
「殺し屋ウォールが逃亡していなかったのですね。」「いや、戦って負けたよ。」
「まさか、Sランクパーティーが負けるなんて・・・」「俺たちは手加減をされて負けたんだ。完敗だよ。」
受付嬢が言葉を失う。ロイドの話を聞いていた冒険者たちがざわめきだす。
「Sランクパーティーが負けたって本当かよ。」「ロイドたち国でも五本の指に入る強者だぞ。」「ウォールというのは化け物だな。」
ロイドたちはギルド長から呼ばれる。
「この依頼は国王からの依頼だったのだ。私は失敗の経緯を説明する義務がある。詳しく離してくれないか。」「分かりました。ミハス村はグレイグリズリーの森に囲まれています。」
「それでミハス村へ冒険者がたどり着けなかったのか。」「私たちも村人に助けてもらえなかったらロザリーを失っていました。」
「村は近隣の町や村と交流がないのだな。」「いいえ、村人は森を通ることが出来ます。」
「どういうことだ。」「村人はグレイグリズリーを一人で倒すことが出来ます。」
「嘘だろ。一級の危険種だぞ。出たら、軍が動くこともあるのだぞ。」「それが一撃で首を落としました。」
「信じられないな。」「村人さえ、私たちより強いのです。そして、ウォールは村人よりはるかに強いです。」
「君たちは戦って負けたんだね。」「はい、それも手加減されていました。」
「ウォールは、殺し屋と言われるくらいだ。よく無事だね。」「ウォールは話の分かる。温厚な人物です。」
「他にウォールについてあるかね。」「無詠唱で魔法を使います。剣の腕もあれほどの使い手を知りません。」
「とんでもない話だな。」「ルビーアイという魔族については聞いていますか。」
「ああ、冒険者たちが近隣の村や町でうわさを聞いているが、出まかせだろう。魔族が出たら国の存亡の危機だからな。」「ウルズという魔族が住んでいます。」
「なにー、なぜ、最初に言わないのだ。国が亡ぶぞ。」「大丈夫です。村で医者をしていて村人と友好的です。」
「そうか。ならばこの場限りの秘密だ。口外するなよ。」「分かりました。」
ギルド長は報告書をまとめて、ダミアン国王に送る。ダミアンは報告書を読むとエッケハルト宰相にいう。
「冒険者たちは魔物に邪魔されて村へ行けないらしい。Sランクパーティーもウォールに負けて逃げ帰ってきている。」「そのウォールはただものではありませんな。」
「所詮は冒険者だ。使えないな。バルタザール騎士団長を呼んでくれ。」「はい。」
バルタザールはダミアン国王の呼び出しに嫌な予感がする。おそらく聖女ミリアの従騎士がらみの話に違いない。
「バルタザール、ウォール・ヤーンを討ち取れ。討ち取った騎士を聖女の従騎士にする。」「お待ちください。教会ではウォール・ヤーンを従騎士に向かえる方向で話し合いが行われています。」
「ウォール・ヤーンは辺境の村の農夫だぞ。従騎士が務まるか。」「しかし、ウォール・ヤーンは幼馴染で聖女ミリアと一緒に剣と魔法を学んでいます。」
「それがどうした。ウォール・ヤーンは処分する。いいな。」「はっ。」
バルタザールはラース・ローデンバルトに声をかける。ラースは若手の宮廷騎士の中で飛びぬけて剣の腕が立ち、赤髪にふさわしく炎の使い手で剣に炎を剣にまとわせて戦う。
「ラース、話がある。」「団長、何でしょう。」
「教会が従騎士を決める前にミハス村へ行ってウォールを討ち取ってくれないか。」「それだは教会の意向に反します。」
「ダミアン王の命令だ。成功すれば従騎士になれるぞ。」「従騎士に、必ず打ち取ってきます。」
ラースはやる気満々である。あの清楚なミリアの従騎士になれるのである。




