第5話 ウォール対Sランクパーティー
翌朝、ウォールとロイドたちは村の広場に来る。まだ早朝で他に人はいない。ロイドがウォールに言う。
「降参する気はないか。」「俺が勝ちますから、必要ありません。」
「では、殺して首を持ち帰ることになるが恨まないでくれ。」「俺が負けることはありません。」
ロイドたちが戦闘態勢に入る。ロザリーがメンバーに女神の加護を授けて、カリストが魔法の詠唱に入る。ロイドとアマドが前に出る。ウォールは木剣を出す。
ロイドは木剣を見てなめているのかと頭に血が上る。その時、カリストが突然倒れる。ロザリーが叫ぶ。
「カリスト、どうしたの。」
ロイドとアマドは魔法の援護がないがウォールに突っ込む。アマドが前に出て、そのすぐ後ろにロイドが着く。ウォールが一瞬で距離を詰めてアマドの斧を木剣で弾き飛ばす。
アマドはウォールを手で捕まえようとするがウォールは上に飛んでかわす。ロイドが方向転換してウォールに切りかかる。
ロイドの上段からの打ち込みはウォールより早く繰り出される。ウォールも上段から木剣を打ち込む。これならロイドの方が早いはずだ。
ウォールの打ち込み速度はロイドの打ち込み速度より早かった。さらにウォールは右手で木剣を持ち半身になってロイドの打ち込みをかわしながら木剣をロイドの左肩に打ち込む。
ロイドの左肩の骨が砕ける。アマドは斧を拾うと後ろからウォールに襲い掛かる。斧を横に薙ぎ払う。
ウォールは後ろに目があるようにバク転して斧をかわしアマドの後ろに回ると首に木剣を突き付ける。アマドは斧を離して降参する。ロイドが両ひざをつく。
ロイドはウォールに言う。
「私たちの負けだ。」「今、左肩を治します。」
ウォールが右手をかざすとロイドの左肩が治る。ロイドがウォールに質問する。
「もしかして、魔法が使えるのか。」「ええ、使えますよ。無詠唱ですから、邪道ですけどね。」
「無詠唱だって、もしかしてカリストが倒れたのは・・・」「俺が電撃を放ちました。」
「そうか、いつでも私たちを殺すことが出来たのだな。」「できますけど。殺す気はありませんよ。」「完敗だ。」
ウルズが姿を現して言う。
「ウォール、何を遊んでおる。戦うのなら実力を出さないか。」「ウルズ先生、見ていたのですか。」
「最初からな。腑抜けたことをするでない。」「すみません。」
ロイドは、ウルズとウォールの会話を聞いて自分たちが手加減されていたことを知る。ウォールがロイドに言う。
「このことを王都に知らせて、もう挑戦者が来ないようにしてくれないか。」「もちろん知らせるよ。まともなものなら二度とミハス村に手を出さないと思うよ。」
ロイドたちSランクパーティーは、リーム王国最強の冒険者の一角を占めていた。彼らが負けたとなれば、ウォールと戦える者は限らてくる。
Sランクパーティーは、村を出ることになる。近隣の村まで村人の護衛が二人付いている。近隣の村へ到着すると村長が出迎える。
「ミハス村に向かって無事に戻ってきたのはあなた方が初めてです。」「ミハス村の周囲の森にはグレイグリズリーがたくさんいます。村へはたどり着けないのでしょう。」
「ミハス村の人たちはどうやって村から出て来られるのだ。」「彼らはグレイグリズリーより強いのです。」
「噂は本当だったのか。ルビーアイには会ったのですか。」「はい、話をしました。」
「恐ろしい。」「恐れることはありません。彼女は村の医者として慕われています。」「そうですか。」
ロイドたちは王都に戻ることにする。




