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第2話 ミハス村の剣豪

 俺はヤガン・コール、王都ダルヴィークで剣術を学んだ後、辺境の村々を旅して、剣術の指南をしている。王都では俺のことを「逃げのヤガン」と呼ぶ者もいるが無視だ。

 俺は村を回って剣術を教えたが「剣の基本しか教えない」「技を見せてみろ」「剣豪なんて嘘だろ」などと言ってたまったものではない。

 だが、このミハス村は良い。剣の基本を教えていると技を教えて欲しいというが、「すべての技は基本からだ。」と言うと基本の訓練をまじめにやる。

 ゴブリン退治のときには、「ヤガン先生、一緒に来てください。」といので「私がいない時にはどうするんだ。自分たちでやりなさい。」と言うと村人だけでゴブリンの群れを退治した。

 そして、村人は「ヤガン先生の教えのおかげです。」と手柄は俺のものになる。よくできた村人だ。

 さらに村人はグレイグリズリーを一人で狩ってくるようになる。あのグレイグリズリーは数人がかりでやっと倒せる厄介な魔物なのだが・・・

 もちろん、俺はグレイグリズリーと戦うなどごめんだ。こうして、ミハス村では、絶対の信頼を得て剣豪ヤガン先生と言うわけだ。

 気に入っているのはそれだけでない。食堂のウエイトレスのカチヤは気立てが良くて俺好みだ。いつかデートでも誘ってみたい。

 俺は王都のくそのような暮らしを捨てて、ミハス村でのんびり楽しい人生を過ごすのだ。今日は天気がいいので河原の岩の上で昼寝を心地よく楽しんでいる。


 俺がいい気持ちで寝ていると村のガキが河原に遊びに来た。騒ぐなよ。おてんとうさまが気持ちいいのだから。だがガキは俺に話しかけてきた。

 「ヤガン先生、魔法を見せてください。」

ああー、どこのガキだと思ったら2年前の5歳から剣術を習いに来ているウォールとミリアだ。俺に魔法が使えるわけがないだろ。

 「ウォール、わしの教えが分かっていないようだな。人に見せてもらうのではなくて、なんでも自分で実践するのだ。」「でも、魔法の詠唱とか分かりません。」

 「魔法は想像力じゃ。例えばあの岩を破裂させる想像をしてみることじゃ。」「はい、先生。」

まあ、この二人は銀髪だからな魔法の才能はないだろう。そのうち諦めるに違いない。ウォールの奴、踏ん張っている。岩が破裂する訳がないだろ。

 今度はミリアが挑戦するのか、「バーン」て岩が破裂するかよ。えっ、えええええええーーーー岩が破裂したぞ。偶然だよな。詠唱もしていないし魔法が発動する訳がない。

 俺の目の前でウォールとミリアがはしゃぎながら言う。

 「すごい、どうやったの。」「岩を見てね。壊れろってバーンしたの。」

「バーン」で岩が破裂してたまるかー、次はウォールがやるのか。「バーン」また、岩が破裂して粉々になったぞ。こいつらどうなっているんだ。

 そんな、尊敬するような目で見るな。俺からは何も出ないぞ。そうだウルズに押し付けてしまえ。

 「ウォールとミリアは魔法の才能がある。わしよりウルズの方が適任じゃろ。」「はい、ヤガン先生。」

ウォールとミリアは才能に恵まれているな。剣も筋がいい。あと10年もすれば村一番の剣の使い手になるだろう。俺とは大違いだ。魔法の方は化け物だな。


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