第11話 ミリア、王都初日
ミリアは、聖女ディアナに右手に炎の剣、左手に氷の剣を作りだして見せて、魔法の力がディアナとは次元が違うと思い知らせる。
私は女神ケレスの神託によって次期聖女にされているけど、聖女ディアナは私が後継者と認めていないに違いない。
追い出してミハス村に返してくれれば良いけど、都合よくはいかないに違いない。ならば、実力を見せつけて聖女になるしかない。
私は、従騎士のボニファーツ・ゼーテと娘のキルケ・ゼーテを紹介される。ボニファーツはディアナの夫でもある。私も聖女になったらウォールを従騎士に向かえて結婚したい。
娘のキルケは二つ年上であり、ディアナと同じ金髪なので光魔法を使うのかもしれない。ディアナとしてはキルケを聖女にしたいだろう。
その後、夕食をディアナ、キルケと三人で食べることになる。私は「いただきます」と言って食事に手を出そうとするとディアナが制止する。
「何をやっているんです。まずは女神ケレスに祈りをささげるのでよ。」「ごめんなさい。」
「常識はなっていないようですね。」「・・・・・」
急に生活が変わったのだから仕方ないでしょ。常識がないって決めつけるな!
私はディアナとキルケに合わせて祈りをささげる。そして、食事が始まる。パンにスープ、焼いた肉かー、ならば、パンをスープに浸して食べる。
パンは硬いのでスープに浸すと柔らかくなり味もしみておいしいのだ。
だが、ディアナがものすごい形相で睨んでいる。隣の席のキルケが教えてくれる。
「パンをスープに浸すことはマナー違反よ。私の真似をして食べてみて。」「ありがとうございます。」
キルケは私に反感を持っていないようだ。私はキルケの真似をして食事をする。ちなみにパンは柔らかかった。そのまま食べてもおいしい。スープに浸す必要がないわけだ。
食事が終わると自分の部屋を案内される。キルケの部屋の隣だ。私は疲れたのでそのままベットに倒れ込む。ベットも上質でふかふかだ。良く眠れそうだ。
するとドアがノックされる。ドアを開けるとキルケがいた。
「部屋に入っていい。お話ししましょう。」「どうぞ。」
私に何の用だか、想像がつかない。宣戦布告なら受けて立つだけだ。
「私ね。聖女になることが嫌だったの。小さい時から勉強と訓練ばかりで大変だったわ。」「苦労したんですね。」
「何言っているの。次はミリアが勉強と訓練付けになるのよ。」「大丈夫です。魔法は私の方が上だと思い知らせましたから。」
「ミリア、お母さまより魔法が出来るの。天才なのね。」「ウルズ先生がすごいだけです。」
「ウルズ・・・聞かない名前ね。そんなにすごいなら有名なはずなのに。」「先生は村に引きこもっているから。」
ウルズが悪魔と言うことは、さすがに言えない。
「問題は読み書きね。村で育ったから文字が読めないでしょ。」「読み書きできますよ。あと、神聖文字もわかります。」
「すごいわ。だったら、勉強は大丈夫ね。」「勉強は何をするのですか。」
「魔導書を読んで魔法を覚えるのよ。」「そんなことするんですね。」
文字はウルズ先生に教え込まれている。もちろん、悪魔の使う暗黒文字も使える。魔導書は読み方は習っているがウルズ先生は実践主義なのでほとんどの魔法は体に覚えさせている。
魔導書は、自分の知らない魔法を使う時に読むマニュアルのようなものだ。それより私には問題がある。
「キルケ様、私、一般常識が判らないので困っています。」「キルケでいいわよ。一般常識なら私が手伝ってあげる。」
「キルケは優しいのですね。」「ミリアは私の恩人なのよ。私を聖女になることから救ってくれたのですから。」
「そんなに聖女は嫌なのですか。」「お母さんは神託で聖女になったんだけど、その役目を私にやらせようとしたのよ。」
「私は親の後を継いで農夫になるはずだったんですけど疑問に思いませんでした。」「私は嫌よ。遅くなったから部屋に戻るわね。」
キルケはとりあえず味方になってくれそうだ。明日からのことを考えると気が重い。とにかく寝てしまおう。




