初任務2
〜北綾瀬駅〜
「ちょっと混んでたねぇ。」
アキはメッセージを確認しながらぼやく。
「だね。・・・で、地図地図・・・」
スマホで地図を開いて、依頼者の家を確認する。
「駅から近いな。行こ。」
「お、ちょっと慣れてきてるねぇ。」
〜依頼者の家の前〜
「えーと、『あなたの家の近くに着きました。どのように会えばいいですか?窓からでも玄関からでも入れます。』っと。」
メッセージを送り、なぜか解いていた髪をサイドテールに結び直しているアキを横目に、俺は家を観察する。
随分と古い家だ。
枯れたツタが巻き付いており、壁の木材が剥がれている。
しかも周りに家がない。
「あー、『親に見られたくないから、二階の人形が飾ってある窓から入って欲しいです。』だって。庭側かな?」
「窓から入るって、できるの?」
アキは笑顔で頷いた。
「私、荷物は少ないけど、こんなもの持ってるの!」
そしてポケットから細い綱のようなものを取り出す。
「じゃーん!これ、先っぽにかぎがついてるの!」
「・・・なるほど。それを投げてひっかけるんだな。」
「うん。じゃ依頼者さんに窓開けてもらって・・・」
しばらくすると窓が開いた。
開いた窓から顔を出した少女は、遠くからでもわかるほど傷だらけだった。
大人が来ると思っていたのだろう。
少女はびっくりした顔になったが。
「もう大丈夫!ちょっと下がっててね!」
アキは笑顔でそう言い、縄を見せる。
察した少女は部屋に引っ込む。
だが。
「引っかからん!!くぅ〜!」
「ヘタクソ・・・貸してみ。」
俺は縄の先のかぎを窓枠に一発でひっかける。
「・・・上手・・・ありがと。」
「おい。悔しそうじゃねーか。」
「・・・よし!登るぞ〜。」
「聞いてんのか・・・」
・・・あぁでも、懐かしい。
アキと中学時代、こんな会話してた・・・
・・・あれ?
そういえば、あのラインに反応してくれたのって、アキだけ、なのか・・・
そんな余計な考えのせいで、俺の手元はふらついた。
「リツ、大丈夫・・・って!」
アキが慌てて俺の手を取る。
その時。
扉が開いた音がして。
「やだ・・・やめて、お父さんっ!いや!いや!!」
さっきの少女の声が聞こえる。
そして、人を殴るような、音・・・
「リツ、急いで・・・!引っ張るから!」
「分かった、ごめん・・・!」
〜部屋〜
「あぁ?誰だ、お前ら? おい、お前の知り合いか?」
「え、えっと、違うの、お父さん・・・」
依頼者の父親が、依頼者の髪を掴んで引っ張る。
「痛い!痛いっ!」
「・・・・・・」
アキは窓枠を潜り抜け、部屋に飛び込む。
なんの躊躇もなく金属バットを振り下ろす。
「あ、ありがとう、ございます・・・」
しゃくりあげながら少女が言う。
「ごめんなさい、到着が遅れて。」
「ううん、助けてくれて、ありがとう・・・!」
「・・・まだ終わってない。こいつ・・・あなたの父親を、どうするのか。 あなたが決めて。」
「え、えぇっと・・・私、お母さんと一緒に住んでて、でも、お母さんはいい人・・・お父さんに、殴られてる・・・」
「・・・そっか。じゃあ、お父さんをどうにかして欲しいんだね。」
「・・・うん。できれば、警察に・・・」
「殺さなくても?」
「こ、殺す・・・?考えたこと、なかったです・・・」
「ごめんね。余計なこと言っちゃったね。」
(まあ、普通はそうか・・・てか俺、することなくね?)
その時。
二人の背後に、飛び起きて二人に殴りかかろうとする父親の姿が見えた。




