第八話
私、日比野ひかり。中学三年生。乙女ゲームが好きなただの女の子です。
「だ~か~ら~!遅刻するって!」
こいつは双子の兄、日比野ゆうと。私と同じくゲーム好きだけど、乙女ゲームには手を出していないらしい。乙女ゲーム、おすすめなのに。あ、あと早起き。私は遅刻ギリギリまで寝るタイプだけれど、ゆうとは朝5時には起きてる。いつも思うけど、眠たくないのかな。
「まずは寝癖を直せ!」
そう怒鳴って、くしを投げるゆうと。
「ありがとー!」
私はそのくしをキャッチして、素早く寝癖を直す。こういう時に、短い髪は楽だよね。
「お母さん、行ってきます!」
元気に挨拶して、家を出る。返事はない。当然だ。
お母さんは、二年前に交通事故で亡くなった。お父さんは、仕事に忙しくて普段は家にいない。
だから、家事はゆうとと二人でしている。
……あれ?いつもお母さんに挨拶なんてしてたっけ?
そういえば、今日の夢はすごかったな~。確か……乙女ゲームの前の時代に生まれちゃったんだっけ?夢だからもう覚えてないな。
まあ、結局はただの夢なんだし。別に良いか。
「キャー!ゆうと様~!」
「今日は一緒に行きましょう~!」
「ごめん、今日も急いでいるんだ」
ゆうとはイケメンな父親似だから、女子から人気がある。
「ゆうと~、一緒に行こーぜ~!」
「今日もひかりと行くから無理」
外では性格もいいから、男子にも人気がある。
そして、私はゆうとの荷物として登校する。
ゆうとが羨ましいとか、嫌だと思ったことはない。物語によくある周りの女子からの嫉妬とかもないし、あんな人に人気があって、ずっと人がまとわりついてくる生活は絶対に嫌だ。
まあ嫉妬に関しては、私が義理の妹とか、幼馴染みみたいな『ゆうとと結婚できる可能性がある女』じゃない、マジの正真正銘実の双子だからだけど。
それに、友達もいるしね。私は私で普通の幸せな中学生活を満喫してる。
これからも、こういう人生を歩んでいくんだろうなぁ。
「……は?」




