第六話
王道攻略対象者の俺様担当の第一王子、名前はジルヴィン。ジルヴィンルートでの悪役令嬢は、第一王女フリーゼ。ジルヴィンのたった一人の妹だ。
でも、ジルヴィンはフリーゼのことは嫌いだった。なぜなら、昔から王族らしからぬ我が儘ばかり。それだけならばまだ『自分がその性根を叩き直してやる』と思えたのに、そこに下の身分を軽蔑し、王宮のお金を湯水のように使い、自分が嫌いな奴は手下を使って消すとまで来たら、もうジルヴィンは諦めた。ジルヴィンも両親も真っ当で(ジルウィンは俺様だけど、常識はきちんと身に付いている)、教育係も何もかもジルヴィンと同じなのに、何故このようなフリーゼが生まれたのか分からない……というのが、乙女ゲームの設定だったんだけど……。
「ソフィア様を本当に尊敬します!」
「私も、フリーゼ様のことを尊敬してますよ!」
フリーゼ、めっちゃ良い子じゃん。
「そりゃそうだろ。なんせ俺が育てたからな」
フフンと、自慢げにいうのはジルヴィン。実は、こいつは私と同じ転生者だった。
「生まれてすぐに分かった。ここがあの『マコアイ』の世界だって。そして、俺はジルヴィンになったんだ。それを知ったときには神に感謝したぞ。何せ最推しのフリーゼの一番近くだからな!」
『マコアイ』というのは、乙女ゲームの略称。正式には『真実の愛を貴方と共に』だ。
こいつは、フリーゼの兄になれたことを利用してフリーゼを良い子に育てたそうだ。「だって、あんな結末、フリーゼが可哀想だろ!」とジルヴィンは言っていた。
まあ確かに、フリーゼはハッピーエンドでもバットエンドでも処刑されていたからね。フリーゼが最推しなら、そういう行動になるのも頷ける。あ、ちなみにフリーゼは最推しだけれど、恋愛的な意味ではないんだそう。恋愛的って言ったら……、
「はぁ……。ソフィアのことを好きなロリコンが、この国の王太子だなんて……」
私はわざと大きな溜め息をつく。
「いや、俺は心も体もぴちぴちな男子中学生だ。ロリコンいうな」
すると、ジルウィンは私の言葉に突っ込んでくる。
「え、勝手に三十代のニートだと思ってた」
「いや、何でそんなにピンポイントなんだよ」
「だって、男で乙女ゲームみたいなのを自分からやるって、そういう人たちじゃないの?」
「偏見すげぇなお前。普通の男でも面白かったらやるんだよ、乙女ゲーム」
ジルウィンは呆れたような目で私を見る。
うっ、確かに偏見だったかも……。
「そう、なんだ。……でも、心はともかく、体は中学生じゃなくて高校生じゃ……?」
「細かいことは気にするな。というか、それだったらお前も心は女子中学生、体はおばあさ……」
ドコッ
私はにこりと笑顔になりながら言う。
「おばあさんって言うな。体もまだぴちぴちの女子中学生よ」
「わ、分かったから、殴らないで……普通に痛い……」
「分かればよろしい」
……ちなみに、ソフィアっていうのはヒロインの名前です。
「…り……」
……だれ?
「…り……かり…」
ねぇ、うるさいってば。
「ひかり!お前、学校に遅刻するぞ!」
「え?!」
私が目を開けると、そこは前世の、自分の部屋だった。
「もう、しっかりしろよ」
私に怒っているのは、双子の兄。
ああ、なんだ。
今の、全部夢か。
『何で、目を覚まさないんだよっ……!アムティア……!』




