第十一話
実はこの呪いのネックレス、人からもらったものなのです。『ぜひ使ってください!』とメモがかかれたプレゼント箱の中にあったんです。そんなメッセージならば、せっかくなら使ってあげようと思い、つけていたんです。
その事実を知った、ジルヴィンを筆頭とする『アムティアを見守る会』メンバーたちは、死に物狂いでアムティアにネックレスを送った犯人を探しました。
いや、私を見守る会ってなんだよ。
「主要メンバーは、
会長ジルヴィン、副会長ダミアン、書記ならびに総務ソフィア、スムト、イザベラ、アルレッド、アリア、そして私、フリーゼですわ、アムティア様!」
乙女ゲームの主要キャラやないかい!
「で、何か申し分はありますか?」
さて。ジルヴィンを含め、主要メンバーはめちゃくちゃ有能です。
そう、あいつらすぐに犯人を見つけたんだよ。
女神の力を使えばすぐ分かるって言うようも先に見つけた。本当に皆ヤバいよ。
「あら、これはどういうことなのでしょうか?この私に向かって、それを不調にさせた犯人、だとは」
フンッと、威張りたっているこの人はシャルロット・フェリー・アンバーグ。アンバーグ帝国の第一皇女にして、アンバーグ帝国の第一王位継承者。
ハンバーグじゃないよ、アンバーグだよ。私も最初聞いたときは、それって美味しいの?え、国の名前?って思ったけど。
「とぼけないで下さい。どうやらアンバーグ帝国では魔術はそんなに発達していないようですか、我らファンタジー王国では、魔術は世界でも一番と言っても過言ではないくらい発達しているのです。……これがどういうことかお分かりで?」
ファンタジー王国って、安直すぎない?って今思ったでしょ。ここは乙女ゲームだよ。察して。
このセリフを言ってるのはジルヴィンだけれど、やっぱり他国の皇女だからね。一応敬語は使ってる。
あと、ちょっと口元が引きつってる。やっぱりファンタジー王国は笑いそうになるよね。うん、分かる分かる。五百年生きてる私でも未だに慣れないから。
「はぁ……魔術がなんだというのですか?私を犯人扱いすることは、アンバーグ帝国と対立するということになりますわ。それはファンタジー王国にとっては痛いところでしょう?」
「え?アンバーグ帝国がファンタジー王国に頼っているのに?逆にこっちと対立して困るのはアンバーグ帝国だと思うんだけど……」
「な!貴方、なんてことをいうの!」
あ、心の声が出ちゃった。
でも、本当のことだ、アンバーグ帝国には借金など『借り』が沢山ある。まあ、殆ど王族のせいなんだけどね。シャルロットを見れば、あっちの王族の程度がよく分かる。
それで、国が傾かけているので、泣く泣くこっちのファンタジー王国に泣きついているっていうのが今の状況……の、はずなんだけど。シャルロットの認識がなんでそういう風になるのか、全然分からない。
私が生まれた五百年前は、そもそもアンバーグ帝国が無かったからな~。この状況になったのって、たった数十年程じゃなかったっけ。
「そ、そもそも!なんで貴方みたいな平民がジルヴィン様たちに取りついてますの!?そちらの方がおかしいでしょう!」
「そうよ!王族や公爵子息様のような方々に、あんたみたいな薄汚い平民が近づくんじゃないわ!」
あ、シャルロットの取り巻きも喋り出した。
う~ん、何回注意されてもかえりみない、この脳内お花畑たちをどうしようか。
「お前ら、なに言っているんだ?」
ダミアンが私の前に出て、言い放つ。
「アムティアを薄汚い平民だとか、取りつくとか、そういうことを言うお前らの方が迷惑なんだけど?」
ダミアンは怒りのオーラを放っている。
おう……、めっちゃ怒ってる……。
「はぁ、貴女方は平民を見下してもいいと思っているみたいですが……筋違いも良いところですわ」
「ええ、私たち貴族は平民という人々がいてこそ。そこを履き違えるのはいけないことです」
イザベラとアリアも常識人だからね。民の大切さをきちんと分かっている。
「そもそも、アムティア様とは一緒にいたくているんだ。アムティア様を責めるのはお門違いってやつだぞ!」
「それに、アムティア様といるかいないかは、貴女たちが決めることではありません。私たちの関係に口を出さないで頂きたい」
アルレッドにスムトも常識がきちんとあるからね。こんな戯れ言には反発する。
……あれ?常識人なら私のファンクラブも作らないのでは?
「はぁ……、何度言っても聞こえないようだから、もう一度言うぞ。これが最後だ。
アムティアを貶すことは、絶対に許さない」
さあ、王太子であるジルウィンの言葉に、取り巻きたちは全員撃沈だ!
残ったのは、顔を歪ませワナワナと震えているシャルロットのみ。
「な、なんなのです!?皆して私を非難して!私が何をしたというのですか!?」
いやいやいや、『何をした』って本気で言ってる?
「一言で言うなら、こちらを貶した。だから貴女に反撃するのです」
他にも色々言いたいことはあったけれど、シャルロットみたいな人は最後まで聞かないだろうから、簡潔に纏めてあげた。
さすがに自身がこちら側を貶したことには自覚があるようで、何か反論したいけれど出来ない、という表情になっている。
「それでは、これから先は保護者を交えて話し合いましょう」
ジルウィンが紳士の礼をして後ろへ振り向き、校舎へ歩いていく。私達はその後に続いた。
「ッ待ちなさい!まだ話は終わってないですわよ!」
ジルウィンが最後に発した言葉を全く理解せず、シャルロットはギャアギャアと騒ぎ立てる。しかし、周りは全く相手にせず、シャルロットだけがこの場で浮いていた。
「……後で、話がある」
コソッと、ダミアンから小声で囁かれた。