第一話
私は転生した。
その事実を認識したのは、生まれてすぐだった。
前世はあまり覚えていないけれど、よくある平凡な女子中学生だということは分かっている。
え?大体は高校生や社会人とかじゃないのかって?そんなもの、私が知るか。
トラックに引かれるという転生においてはオードソックスな出来事に巻き込まれ、乙女ゲームの五百年前転生した。
そう、乙女ゲームの五百年前に。
乙女ゲームの世界に転生していたことは、すぐに分かった。なぜなら、私は王女だから。そう、国の中でもトップレベルの地位にいる王女に。国のことを知れば知るほど、私のお気に入りだった乙女ゲームとそっくり。転生したら、そこが乙女ゲームの世界だった!ということはテンプレ。そこにはさして驚きもしなかった。まあ、転生したことにめっちゃ驚いたしね。
でも、まさか五百年前に生まれ変わるとは思いもよらなかった。
これじゃあ、乙女ゲームのことに何も干渉できない。見ることも、体験することもままらない。
そうして、乙女ゲームの世界に転生したのに、乙女ゲームが体験できないことに嘆くこと一週間。私はある方法を思い付いた。
「不老不死……とまではいかなくても、長寿になればいいのでは?」
この世界は、剣と魔法の中世ヨーロッパ風の異世界。ダンションとか神とかも存在するし、不老不死の存在もある。(現に神がいるし)
じゃあ、長寿になるにはどうしたらいいか。
王宮の図書館には置いていない(もし置いてあったら、真っ先に王族がその方法を試す)から、王宮から出た方が良いだろう。では、王宮から出るためにはどうしたらいいか。
そうだ、冒険者になれば良い。
そこからはもう必死に頑張った。
今世の父に『冒険者』になると伝えた。もちろん反対されたが、ごり押して王宮から出る。
ちなみに出た時は10歳だった。
いや、私も分かってるよ。こんな子供の時に出て、冒険者として生き残れるかって。
でも、そのときの私は生き残れる自信があった。
だって私、その頃王国騎士団長と王宮魔法師団長に勝ってたもの。剣と魔法の異世界で、それらを極めないオタクはいるか?いないでしょ!
乙女ゲームの知識もあったから、ここが乙女ゲームの世界だと分かった時から剣を練習し、魔法の特訓も毎日した。
私の体はめちゃくちゃハイスペックだったみたいで、たった十年で、騎士団長と魔法師団長を越えた。
ならば今、冒険を始めよう。
と、いうわけで、ここから私のなが~いなが~い一人旅が始まった。