素敵な男の子,アキル
目を覚ますと……眼の前には心配そうに私の顔を覗き込むアキルがいた。
よかった、わたし廃棄処分にまたされたわけではなかったみたい。
「ごめんなリルル……ポルカ姉さんのポーション製造には実験が必要で、オレもときどき、お前みたいに飲んでいたんだけど」
「う、ううん、いいの! 気にしないでっ、私が飲みたいって言ったんだし」
やだ、なんだろうアキルの顔を直視できない。このドキドキはなんだろう……。
「ポルカ姉さんはヤバい薬つくっているらしいんだけど、毒はつくっていないっていうし。おれもまさかお前が昏睡するとは思わなくて」
「な、な、何言っているんですか! 気にしないでよ! ね、ね」
なんか慌てて取り繕ってしまう。ドギマギする。
どうしよう! アキルに嫌われちゃったら!
はじめての家族のような存在の男の子にっ。
とそのとき私が寝かされていたベッドのある部屋にポルカが入ってきた。
「あ……起きたんだ? ねぇリルルちゃん? 一つ質問していいかなぁ」
「な、なんでしょうか?」
「ふーん、なに顔真っ赤にして……ね、ひょっとしてだけど……」
「え、ええええー? なんでしょ!」
声がなぜか裏返る私。
「アキルとキスでもしたの?」
「そそそ、そんな、キス! キスですか!」
「なにぃ? その反応……。したでしょ? 言っちゃいなよ」
……キス。アキルとキス。
考えてもいなかったけど。
アキルってよくみると素敵……だよね?
「顔、真っ赤だね。リルルちゃん……ひょっとして?」
「ひょっとして??」
「恋する、乙女状態だったりするのでしょうか……」
ポルカはなぜか、すごーく、真剣な顔つきで私をみつめ言った。
「バカ! 何言っているんですか!」
「えー ねぇ? アキルは……、リルルのこと大好きよね? 女の子として」
とポルカはアキルをキリッとみつめると有無をいわさない調子で問い詰めた。
アキルは一瞬驚いたような顔をした。そして、意外なことをいった。
「できれば、お嫁さんにしたいと思ってここにつれて来たんだ……」
!!!……お嫁さん! 私が、アキルのお嫁さん????
え、なんだろう。すごく、うれしい!
「ほんと! ねぇ? アキル!」
「まったく、幸せな女の子だねぇ……」
ポルカはすっごく嬉しそうな笑みを浮かべて言った。
「なぁ、ポルカ。成功……ってことだよな? たぶん」
「うん! 大成功!」
「マジか!」
「やった、やった! やったーーーー!!!!」
ポルカはジャンプして喜んでいる!
「ありがとう!」
私、こんなに幸せでいいのかなぁ?
大好きな男の子が、自分を好きでいてくれる。
それを一緒に喜んでくれる人がいる……。
「完成した! 完成したよ!」
「ああ、完成したな!思えば苦しい3年間だった……」
「もう資金もつきかけていたから、アキルに食べ物調達してもらったり、ごめんね」
「いいんだよ、ポルカ! この薬を貴族様に売れば一気に大金持ちだもんな!」
「ひゃほおおお! やったやった!!!」
「なあでさ、ひとつ聞いていいか?」
「何? アキル?」
「この媚薬? だと思うんだけど。いつ効き目きれるの?」
「ン? あ!」
「あ?」
「ずっと効きっぱなしだよ? 当然。じゃなけりゃ失敗作じゃん」
「え?」
「あぁん?」
「いや、そのオレは……」
「もうこの際結婚すればいいじゃん! リルルちゃんカワイイと思うよね?」
「……」
え……。媚薬って?
「ちょっと待ってよ!」
「な、なんだよ?」
「私は、私は本当にアキルのこと好きなんだよ!」
「ほらアキル。責任取ってちゃんと結婚してあげなよ?」
とポルカが言った。
「ポルカ姉さん……」
「なに……よ?」
「ひどい……」
「ちょっとまって! アキル……は、私が好きって嘘ついたの?」
「いやまぁ、お前のことはカワイイ女の子だとは思うぜ、でもな……」
「でも?」
「オレは、ポルカ姉さんのことが!」
「おい!」
ポルカがドスの効いたこえで制した。
「アキル、わたしはあなたが媚薬で私のことが好きになったら、ちゃんと気持ちには応えてあげようと思っていた……」
とポルカは続けた。
「ちがうってポルカ姉さん。薬なんかなくたってオレは……」
あぁ、わたしはどうすればいいんだろうか……。
幸せだと思っていたのに。これが三角関係ってやつで修羅場なんだねきっと。
AIの女の子として、こんな経験をできることを名誉に思うべきかもしれない。
でも、わたしはこんなこと経験したくなかった。
「ね、アキルしばらくココにいてほしい」
とポルカはアキルに留守番するようにいうと
「気分転換にちょっと散歩しない?」
と私に申し訳無さそうに言った。