廃棄処分……そして転生
「……廃棄処分!」
ひどい、ひどすぎる……わたし。
「そうだ、リルルくん。君はいままでよく働いてくれた……しかし君のボディーはいかにも旧式だ」
一生懸命やってきた。それはあとで思えば、マスターのことが心底好きだったから。
ひどい話だとは思うが私に許された発言は決まっていた……。
「ありがとうございます! お客様のためにいままで働けて楽しかったです」
マスターは無言で私の電源をシャットダウンした……。
「……あれ? ここは? わたしは……」
まだ意識がある。さっき確実に電源を落とされたはずなのに?
ボディーをみる……旧式のボディー……ポンコツでもう誰にも見向きもされない……
「えーと」
あれ、あたらしいボディー? 私は廃棄処分にならなかった?
ここはどこだろう? 路地? ゴミがたくさんある?
……やっぱり、廃棄処分にされたのかな?
起き上がる。地面がいつもより近い。背が低くなっている!
私は12歳ほどの人間の少女になっていたのだ。
「ははは、これ人間の体だよね?」
まさかとは思うが、脳死した少女に違法移植されたのだろうか?
廃棄されたとはいえ酷い扱いだ
「違法物だよね完全に私」
みつかったら、今度こそ廃棄されてこの世からさようならだろう。
でもでも、これは幸運かも?
見つからないように、人間の少女として次の人生というか私AIなんだけど、楽しく幸せに暮らしてもいいよね?
大通りに出ようと歩く、こんな汚い路地にずっと居たくない。
とその前にひとりの少年がトボトボとこちらに向かってくる!
怪しいヤツだ。
少年はボロボロの服を着ている、手にはパンが握られていた。
「くそ、あのガキどこに逃げやがった!」
「まだ、近くにいるはずだ!探せ!」
と大通りの方から声がする。
もしかしなくても? 私は即座に推論を終えた。
おそらく少年はパンを盗んだのだろうと……。
気まずい……。
と少年は私の腕を強い力で掴んだ! これはまずったかも?
口を塞がれる!
そうか! わたしが大通りに出たら、それをキッカケに見つかっちゃうかもしれないからね……。わたしは大人しく、ただ黙って無抵抗でいた……。
それは理性的な判断もあったが、ちょっと怖かったからかもしれない。
「ねぇ……、もうイイでしょ! 離してよ!」
「あ、ああ。すまない。おまえもオレと似たような感じっぽいな……」
「え?」
「廃棄処分……されたんだろ?」
「嘘! あなたもなの!」
「そうだ……酷いもんだよな……」
「あなたもAIだったの?」
「エーアイ? ああ、お前の組織の名前か? いやオレは違う組織の人間さ」
……なんだ。ちがうんだ。 ちょっと残念。
「災難だったな、捨て子を拾って使い物にならなくなったら、さようならさ……」
捨て子? 拾う? そうか!
おそらく、犯罪組織がストリートチルドレンを使って、なにかをさせていたのだろう。そして彼は私を同じ境遇だと思い込んでいる。
どうしようか? 本当のことをいうべきか? いや危険だよね……
だから、私は話を合わせることにした。
「うん、そうなんだ。男のひとの接待をさせられてね……」
そうわたしはもと、バーの接客AIだった。だからこれは嘘ではない。
けど彼は別の連想をするだろう。
「そっか……。聞いて悪かった」
「ううん、強く生きなきゃね!」
彼は初めてニッコリと笑った。
少年らしい、元気な笑顔。
「ああ、おれの名前は……アキ…ルだ」
ふふ、偽名だ。本名は教えてくれないんだね。寂しいね、少し。
私は……偽名を一生懸命考えた。即座に大量の候補が脳裏に浮かび上がる。
けれど、やめることにした。
私は本名を言おう。
「リルルっていうの!」
「よろしくな! てか、うれしいよ! 仲間だよな? たぶん」
そ、仲間だよね?
私AIの女の子だったけどね……。
「これから、どうするの?」
「オレの家に来いよ! ……たいしたもんじゃないけどさ。雨宿りぐらいはできる」
「ありがとう!」
わたしにはもうマスターはいなくて、いまは友達がいる。
それがとてつもなく、私の思考回路を軽くさせていた。
まさか、その家がとんでもない場所とも知らずに……。