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✦ 第一章:目覚めよ。姫君 ✦ 第一話:鬼姫令嬢降臨

2025/7/13加筆修正しました

遠くの方で、雄叫びが響いた

続いて、馬の嘶き。土を蹴る蹄の音が地を震わせるように迫ってくる。


「――姫!!」


その声に、はっと目を開ける。

視界の先に広がるのは、うねるような土煙。突進する無数の騎馬兵が巻き上げているのだと直感で分かった。


――確か、自分は馬に乗っていたはずだ。

戦場の最前線で、仲間と共に敵陣に切り込んで……。

だが、そのあとの記憶が曖昧だ。

――そうだ。腹を……撃たれて……。


思考がまだ霞む中、土煙が凄まじい勢いで近づいてくる。


(まぁいい……まずは目の前の敵を一掃する)


そう静かに息を吸い、立ち上がった。


視界に飛び込んでくるのは、見たこともない形の甲冑を纏った兵たち。顔は隠れ、武器は異様な刃物――異国、否、異世界の軍勢か。

それでも、刀を握る手に迷いはなかった。


「新選組副長――土方歳三、参る!」


そう叫んだ刹那、剣の重みを感じる。


……いや、違う。

重いのではない。手が……小さい?


驚いて手元を見る。華奢な指、細い手首。自分のものではない、女の手だった。


(……なんだ、これは)


思考が追いつく間もなく、土煙が目前に迫る。

敵の怒号、蹄の轟き。世界が揺れる。


そして――そのまま、土煙に呑まれた。

★★★★★

暗闇の中で、何かが静かに脈打っていた。

血のように、だがそれはあたたかく、心地よい。

(……俺は、死んだはずだ)


霧の戦場、あの一撃。確かに、命は尽きた。

だというのに――なぜ、意識がある?


ふいに、光が差し込む。

まぶたの裏に、やわらかな金色が滲む。


――ザァァァァン……


波の音? 風が吹いている。潮の香り。

だが、ここは戦場ではない。

意識が暗闇から徐々にはっきりしていくのが分かる。


「……起きられますか、姫様」


……誰だ?

耳元で響く、老人の声。


重たいまぶたをゆっくりと開けると、そこには――

天蓋付きの寝台、薄桃色のカーテン、彫金細工の天井……

(……城?)

見たことのない風景に動揺を隠せない。

「オレは捕虜にでもなったか?」

顎に手を添え考える。

(まずは・・・)

冷静になるため周囲を見渡す。

心配そうに見つめるタキシード姿の老人と、すすり泣いている白いフリルのエプロンをつけた少女たちが立っていた。

「……姫が……姫が目覚められました!」


「……生きて……いる……? 」

間違いなくオレは生きている。

様々なことに思考をめぐらせている傍らでは、蜂の巣をつついた様に老人達が右往左往している


(どうなっている?)

頭が混乱しているのはわかる。

だが、明らかなのはあの戦場とは違うということ。

オレは確か腹部を…

目を腹部に向ける歳三。

自分はなぜか――ヒラヒラの服を着ている。

「なんだ、この袴は?」

よく見ると普段見たことのない…近藤さんだったか総司だったかが教えてくれたパズマ?そんな名前のおそらく西洋の寝間着をきせられているのだろう。

「?」

そこから見える女のような華奢な手。

(これじゃぁ刀を握れるのも時間がかかるな。)

自嘲気味に笑う土方。

「……あの、姫? お加減は?」

「……姫?」


――こいつら・・・・

口々に出る姫という言葉に若干のイラつきをおさえつつ

上体を起こし周囲を見回す。


たまたま目に入る巨大な鏡。。。に映る自分の姿。。。


一瞬の思考の停止

沈黙――


「……姫?」

「おわぁぁああああああああああああああああああああああ!?!?」

不覚にも大声をああげてしまう。。。

映っていたのは、金髪碧眼の――「少女」。

ふわりとした巻き髪、青い瞳、陶器のような白い肌。自分とはまるで違う。

「な、なんだこれは!?」


冷静になろうとする土方

(とにかく、冷静になれ…こんなときこそ…)


「おい、厠はどこだ」

「姫、お体を……っ」

「いいから案内しろ!!」


案内された先、トイレの洗面鏡を見るとやはり変わらない。

まさか、服をはだけるとそこには

「なぁっ!」

余りの衝撃で卒倒しそうになる。

「なぜ俺が……女に!?」

執事とメイドたちは顔を見合わせる。


「やはり頭を打たれたのですわ、おいたわしい……」

「事故での衝撃が、記憶に……」

周囲の声は土方の耳には届いてはいなかった

土方歳三・・・人生初の絶望を感じる一瞬であった。


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