1/8
✦ プロローグ:霧の戦場にて ✦
濃霧が立ち込める戦場。
血の臭いと硝煙が、空気を重たく染めていた。
白馬に跨り、戦場を睨む一人の男。
隊服を着崩し、額に巻かれた白い鉢巻には――「誠」の一文字。
「……近藤さん、総司……」
低く呟いたその声には、覚悟があった。
仲間のもとへ、いずれ俺も行く。それだけは決めていた。
最期の最後まで新選組として生きて、そして散る。
覚悟の顔をあげる。
「新選組副長・土方歳三、参る!」
叫びと共に馬の腹を蹴り、霧の中へと突進する。
まっすぐに敵陣へ、刃を振るいながら。
しかし――その瞬間。
ズガンッ!
腹部に熱が走った。
「……な、に……?」
『どこからだ』一瞬見渡す歳三。
新しい火薬の匂いと殺気。
『おめぇは』
顔を歪める歳三。
腹部に激痛が走る。
「くっ。」
土方の意志に反して徐々に視界が滲んでいく。
遠くの方で馬が|嘶き声が聞こえる………。
そのまま、歳三の意識は深い闇へと沈んでいった。