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1話 歌姫との出会い

 運命の出会いというのはいつも身構えてない時にやってくる。


 それはある日のこと。

いつものように帰り道で寄り道するために駅を降りた日のこと。

私は普通に改札を出ようとしたタイミングで何やら騒がしい音が近くにやってきた。

それはそれで無視すれば良かったのに、私はそれにつられてしばらく改札近くで止まってしまった。

今にして思えば、ここで立ち止まられなければ私は彼女に会えなかったのだから。


「どいてー、どいてーー」


 奥まで響きそうなくらい大きな声で言われれば思わず固まってしまうもの。

とはいえ回避しようと思えばできたはず、なのにこの時は突発的な事態にしばらく思考停止していた影響で私は目の前からやってきた同い年くらいの少女とばったりぶつかってしまった。


「いった……」

「アイタタ……」


 目と目が合う。

そんな一時の、刹那の静寂は本当に一瞬で終わってしまった。


「ごめんなさい。謝罪は後でするから〜〜」

「あっ……」


 声をかける間もなく、少女は行ってしまった。

これが私たちの出会いである。

ねえ、たわいもないでしょ。


@


 それから駅の化粧室で私は手洗い場の鏡の前に立っていた。

青い髪のショートヘアに青い瞳の小柄な少女。

白と青と黒いベルトのセーラーワンピースを制服を着ている少女。

これが私――結城璃空ゆうきりあの姿。

なんとことはない『平凡な』女子高生のはず。

いや、こう言う主人公は大概の場合は普通じゃないな。

と、羽を伸ばすように身体を伸ばしていたらある違和感に気づいた。


「ん?。あの子の置き土産?」


 カバンに何か封筒のようなものが挟まってる。

器用なことするものだと思い、中身を見ると一つのチケット。


「ライブハウス……ソドンベース?」


 そういや、なんかギターケースみたいなの持ってたなぁ……。

まあ、門限まで時間あるし、行ってみるかな。

そう思って、私はそのライブハウスへと向かった。


@


 ライブハウス〔ソドンベース〕。

喫茶店の地下にあるライブハウスで、私も初めて来た。

そもそもライブハウスに行くのは家族に連れられた一回のみで、そこから縁という縁もなかった。


「とはいえ、来てしまった」


 思い立ったが吉日。

入り口の前の階段ではある程度躊躇していたものの、入って見ると意外と何ともなかった。


「ありがとうございます」


 チケットを店員に渡し、ギターとかに使うピックみたいなものを貰って、それをカウンターに渡して好きな飲み物を貰う。

何とも三点商法な回りくどさだけど、その方が良く回る時もあるのだとボクは思う。


(予定表では確か次だったはず……)


 しばらくすると照明が落ち、ステージの中央がライトアップされると一人の少女が見える。

見えると行っても小柄な私にとっては人影で見にくいのだが。

 だけど隙間からは、ライトに照らされた綺麗な、月のようなブロンドの髪、ロングヘアとサイドテールを組み合わせた髪型、白いリボンに赤い瞳の少女。

紺のブレザーと白いブラウスと赤い紐のリボンに青いスカートの制服を着た少女。

間違いない。彼女だ。


「みんな〜。今日も来てくれてありがとうございます」


 彼女がマイクがあるとはいえ、会場全体に響く大きな、それでいて透き通るような綺麗な声。

その声を聴いた推定ファンたちはたいそう盛り上がってる。

私が学校で受ける盛り上がり方とは違う盛り上がり。

熱量と振動が違う。


「今日はちょっと事故があってリハに遅れそうになったけど、何とか来れました」

HAHAHAHAHA

「そこで私はちょっとある子に運命感じちゃったので、最初は予定を変更してまずはこの曲」


 トントントン、という足踏みともに始まるギターの音色。

ここからあんまり良く見えないけれど、おそらくソロ。

それでもよく響く音。

しばらくのイントロから始まる彼女の歌声。

透き通るような感じはそのままに、心に響くというよりかは轟かせるような歌声。

その声を聴いた私は引かれた。


「(これが音のキラキラ……)」


 かつてお父さんが言ってたことを思い出す。

心に響く音楽はキラキラしていると。

気がついたら私の瞳にはキラキラした世界が目の前に広がっていた。

それはライトによるものか、それとも人影によるものか、私の錯覚か。

ただ私は、その景色に見惚れてしまっている。


@


 それからのことは良く覚えてない。

気がついたら彼女のCDアルバムを買っていたことだけ。

ただ、放心状態で、力抜けた状態で立ち尽くしていたことは何故か覚えていた。

評価と感想をよろしくお願いいたします

m(_ _)m

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