第七話
帰ったよー。
「「おかえりー」」、「おかえり」
愛するかわいい嫁のユユと娘のリリが満面の笑顔で出迎えてくれる。息子のテツは少し難しい年頃だが、家の手伝いはしてくれている。
今日の分の稼ぎとホーンラビットの魔石を渡す。
水の魔石は売っても良いが、家で使う事もあり、置いていて困るものでは無いからだ。余裕がある時はユユさんが売りに行っているようだが、そのお金は……。
たまには息抜きも必要だよね。
ホーンラビットの肉は燻製にして保存食にする、店に卸すのは普通の動物の肉だけだ。
裏小屋にホーンラビットの肉を持って行き冷やしておく。
「さてと」
もう一つ、やっておく事がある。
今日集めてきた物を持って、さらに離れにある小屋へ向う。
ギィッ
扉を開けて中に入ると、独特の臭いと、雨音のような音が聞こえる。
「よしよし、元気に育っているな」
集めた桑の葉を纏めて置くと、それぞれの棚の様子を確認してから家へと戻った。
「ユユさん、蚕の世話ありがとう」
「おかえりなさい、大丈夫よ。繭になったやつは町長の所に持って行ったけど良かったのよね?」
「ああ、それで良いよ。けど全部でなくて一割位は残しておいてね」
「それも、隣の棚に纏めておいたわよ」
「ありがとう、さすがユユさん出来た奥さんだ」
イチャついている夫婦を冷めた目でみる子供たち、いつもの事だ。
……
井戸の設置と水車の改良については大工のジーンと鍛冶屋に任せているので、町長と一緒に始める事にしたのはシルクだ。
木綿や麻布は普通に買えるが、シルクだけは貴族や裕福な商人の一部でしか広まっていない。当然、作り方は極々一部で占有されているし、シルクの大半は遠い国外から持ち込まれるので高価なのだ。
本来なら俺達なんかでは知り得ない情報だが、元から知っているのだから仕方ない、ああ仕方がない(大事な事だから2回言いました)
もちろん、危険もある。秘匿されているはずのシルクの原料や作り方をどうやって知ったのか。
町長に話すメリットとデメリットを散々考えたが、ユユさんの「領主様も巻き込めば良いのよ、それでもダメなら逃げれば良い」の一言で話す事にした。
初めて町長に「シルクを作る」と言ったときは、鼻息と共に吹きとばされた。
「フンッ、シルクだ?! ワシだってシルクの名前位は知っている。しかしな、どうやって手に入れる? 作り方も何も知られていないのだぞ? 何処からか盗んで来るつもりか?」
思っていた通りの反応に少し笑ってしまっていると、さらに不満げに俺の顔を見て怒り出す町長。
「あまり酷い事はするなよ! ワシはまだ町長で居たいんだ! これからジーンの井戸と水車だけでも儲かるのに、危ない事をして領主様に知られてクビにでもなったらどうしてくれるんだ!!」