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S.S かわいいお客さま

 テツとアベルが町を出てから数日後、俺を訪ねて来たというお客をギルドの職員が連れて来た。


「へぇー」


 俺よりも、ユユさんやリリちゃんの視線が危ない。


 やって来たお客というのは、隣の街でテツとアベルにお世話になったという女の子で名前をルルと言った。


「テツさんと、アベルさんには危ない所を助けて貰って。本当にお世話になったので、是非皆さんにもお礼が言いたくてギルドの職員さんに無理を言って連れて来て貰いました」


 礼儀正しくお辞儀をする姿はとても可愛くて、その水色のワンピースと真っ白な髪に黒いクリっとした瞳がとても似合っている女の子でした。


「まあまあ。こんな所で立ち話も何だから、中へどうぞ。ギルドの……えっと」


 それまで後ろに控えていたギルド職員の女性が慌てて自己紹介をする。


「あっ、すみません。私、男爵の街の冒険者ギルド職員でミミと申します」


「ミミさん。ミミさんもどうぞ、まだ何かお話があるのでしょう?」


 ミミさんはハッとした表情(かお)をした後、ユユさんに案内されて家の中へと入っていった。


 家には応接室のような立派な部屋はないので、いつもご飯を食べるテーブルに皆が集まる。


「まずは、(うち)の家族を紹介しますね。こちらが奥さんのユユさん、そしてテツの妹のリリちゃんです。もしかしたらルルちゃんと同じ年くらいかな?」


「こんにちは、リリです。私は今年15歳になったの。ルルちゃんは?」


 ルルちゃんはパッと明るい笑顔になり。

 

「私も同じです! 嬉しい、向こうでは同い年の友達いなかったから」


 さっそく二人はお友達になれそうです。


「改めて自己紹介させて頂きます。隣の男爵の街から来ましたルルです。15歳になりました。先日冒険者登録をして依頼の最中に魔物に襲われていた所を、こちらのテツさんとアベルさんに助けて頂きました。その時テツさんからこの町の事を教えて貰って。ゴウさんを訪ねてみなって言われて、ギルドのミミさんにお願いして連れて来て貰いました」


 そう言って隣のミミさんの顔をみるルルちゃん。


「私は、バザールセールス領の冒険者ギルド職員のミミと申します。本日はルルさんの依頼と、ゴウさんにお願いがあって参りました」


 そのタイミングで、ユユさんがお茶を持って来てくれた。今日はちょうどクッキーを焼いていたので二人にも食べてもらう。


 二人ともとても素敵な笑顔でクッキーを食べていましたよ。


「ふふふ、美味しそうに食べてくれて良かった! そのクッキー私が焼いたの」


 リリちゃんがそう言うと、二人はさらに驚いた顔でクッキーとリリちゃんを見る。


「凄いです! こんな美味しいお菓子食べた事ないです!」


「私も、ギルドの仕事で王都まで行く事がありますが、王都でもこんなに美味しいお菓子は滅多にありませんよ」


 二人ともリリちゃんのクッキーをベタ褒めだ。うんうん。


 リリちゃんは、ちょっと照れたようにして。


「本当は、少しお母さんにも手伝って貰ったんだけど」


 そう言うと、ユユさんの顔をみる。


 ユユさんは、照れたリリちゃんの頭を撫でて。


「あなたが頑張ったから、今日のクッキーもとても美味しいわ」


 そんな二人のやり取りをニヨニヨしながら眺める俺、

呆気に取られてる二人に気付き。


「あっ、すみません。ミミさんの私へのお願いとは何でしょう?」


 ミミさんは、持っていたクッキーを口に入れてしまうと、お茶を飲んでホッと一息つく。


「はい、お願いとはテツさんとアベルさんが使っていた背負い袋の作成と販売の許可が頂きたいと言うお願いです」


「背負い袋の……」


「あっ、もちろんその際の使用料もお支払い致します。冒険者達に広く使って貰いたいので、そんなに高い使用料にはなりませんが、如何でしょうか?」


 どうやら、テツ達が冒険者ギルドで登録した時に見せて貰った背負い袋をミミさんが気に入って、冒険者ギルドで広めたいと言う事らしい。


 そうでしょうそうでしょう、あれには俺の創意工夫という現代知識がたくさん詰め込まれているのですよ。


 とくに自分の知識では無いので、使用料はほんの僅かだけ付けて貰って、広めて貰うようにお願いした。


 それよりも、貰った使用料を冒険者への保険に組み込んで貰うようお願いしたら「何ですかその仕組みは!」とミミさんに詰め寄られてしまいました。


 話が長くなりそうなので、ルルちゃんにはリリちゃんとお部屋でお話しして貰って。大人の話をする事になった。


「ルルちゃん、私の部屋に行ってお話ししましょう。お兄ちゃんの話し、もっと聞かせてちょうだい」


 そうして、二人が部屋に行った後は。お茶をなん度も入れ直すほど時間を掛けて、冒険者保険の概要を詳細に話し込む事になった。


 ・

 ・

 ・


「ミミさんて真面目な人だね」


 夕方になり、ミミさんはこの町の冒険者ギルドへと戻り。ルルちゃんは今日は家に泊まることになった。


 リリちゃんも同じ年のお友達が出来たのが本当に嬉しいのが、さっきからルルちゃんと顔を見合わせては笑っている。


 今は、ユユさんと一緒に夕飯の準備をしていて。俺は、裏庭の蚕小屋を少しだけ見てきた所だった。


「私も、冒険者ギルドでいろいろ教えて貰ったりお世話して貰いました」


 ルルちゃんも、ミミさんにはとても感謝しているようだ。それならば、今回の件はミミさんの役に立つのかな?


 久しぶりに賑やかな食卓を囲み、ゆっくりと食事を楽しむ。


「そう言えば、ルルちゃんはこの町に来て何かやりたい事はあるの?」


「ルルちゃんは、お菓子屋さんになりたいんだよね!」


 リリちゃんが、さっきまで話していたのだろうルルちゃんの夢を話し出した。


「ちょ!? リリちゃん!」


「いいじゃない、素敵な夢よね」


 この世界は、まだまだ貧しい生活をしている者が多い。さっきのクッキーにしても俺のイメージでは安いお菓子だが、この世界の人からすると王都でも稀な高級お菓子なのだ。


「この町のパン屋さんで雇って貰うのはどうかしら?」


 ユユさんが、何か思い出したのかルルちゃんに説明する。


「この町のパン屋さんが、ゴウさんの酵母のおかげで忙しくしているのよ。それで新しく人を探していると言っていたから、ルルちゃんに丁度良くないかしら?」


「それはいいね」


「そうよ! そうすればルルちゃんもこの町に住めるし、私といつでも遊べるようになるわ! そうしましょう!」


 と言う事で、明日は朝の忙しい時間が過ぎた頃にパン屋に行き、ルルちゃんを売り込みに行くことになった。


 当然、ルルちゃんはパン屋で雇って貰える事になり。その事をギルドのミミさんにも伝えると、とても喜ばれた。


 テツとアベルは、冒険者になった最初から素敵な出会いが出来たようだな。


いつも読んで頂きありがとうございます。

偶にですが、S.S追加させて貰っています。

楽しんで貰えると嬉しいです。

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