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S.S ピクニック

特に何も起こらないのんびり回です。

 ポタタ祭りが大成功に終わって間も無く、まだ寒くなる前にもう一つやっておきたい事があったのです。


 それは、ピクニックに行くこと。愛するかわいい嫁のユユさん、かわいい娘のリリちゃんと息子のテツ。アベルも特別に連れて行ってやるかな。


 場所は、少し山に入った先にある泉。とても綺麗な泉でタイミングが良いと山の動物達が水を飲みに来たりする。春だと子連れの鹿がいたりとても可愛いのですよ。あっ熊さんは別です、子連れに出会ったら真っ先に逃げます!


 今は秋なので、山の幸を収穫しながら泉でゆっくりピクニックを楽しみたいと思います。


「この辺でいいかな」


 辿り着いた先で敷物を広げ、皆の荷物を置いておく。火を起こすために石を集めて簡易の竈門を作成。


「ゴウさ〜ん、わたし久しぶりにコレで何か仕留めてくるわね」


 ユユさんは、弓を持って何か狩に行くそうです。


「あっ、テツとアベルは念のためユユさんについて行ってあげて」


 ユユさんは「大丈夫なのに」と言いながら嬉しそうに二人を連れて狩へと行きました。


「さて、リリちゃんはお父さんと火を起こして食事の準備をしましょうか」


 まずは泉の周りをお散歩しながら薪になりそうな枝を拾います。かわいい娘とのお散歩楽しいなぁ。


 最近のリリちゃんの趣味はパン作りです。かぎ針編みもだけど、そっちは既にプロ級で、シルク糸で編んだレース編みは伯爵家御用達になっています。


 今日も自慢のパン種を持ってきており、焼きたてのパンを楽しむのだそうです。お父さん頑張って竈門いっぱい作るからね!


 と言ってる間にユユさん達が帰ってきました。やっぱり早かったね。テツとアベルはしきりに首を捻っています。


「おかえりー」


「ただいまゴウさん! はいお土産!」


 ユユさんの手には鳥が三羽も下げられていました。


「すごい! 三羽も獲れたんだ」


「久しぶりだから少しカンが鈍っちゃった」


 テヘッとした顔がかわいい。渡された鳥の首には、小さな矢の跡が一箇所ずつ。一羽だけ少し胴の方によってるかな?


 テツとアベルは、三本の矢を持って不思議な顔をしている。三本の矢の話し、しようか?

 

「ねえ父さん、オレにはかあさんが一回だけ矢を放ったようにしか見えなかったんだけど……」


「僕も……」


 鳥の首を落とし、血抜きをしながら二人の疑問に答える。


「大丈夫! 俺にもきっと見えないから」


「何が大丈夫だか分からない……」


 テツとアベルにも鳥を捌くのを手伝って貰いながら、リリちゃんのパンを焼く準備も済ませましょう。


「リリちゃん、あと何が必要かな?」


「おとうさん、あのねぇ……」


 持って来ていた材料と、途中で収穫した木の実やキノコ、それに鳥が追加されたから何を作ろかな。


「おーい! ゴウさーん」


 あっ! 後発隊が到着した。


「はーい! ここだよー」


 今日のピクニックには、孤児院の子ども達とシスターにも声を掛けていた。年が明けた春にはテツとアベルが冒険者になって町を出ていく予定なので、お世話になったシスターや二人と仲の良かった子ども達と触れ合わせておこうと思ったのです。


「おうゴウ、準備の具合はどうだ?」


「あっジーン、引率ありがとうね」


 シスターと子どもだけでは危ないので、引率の大人も一緒です。ジーンにお願いしておけば何とかなるだろうと言う事で、と思っていたけれど。


「あれ? あの三人も一緒にきたの?」


 子ども達の後ろから、伯爵領からきた三人も付いてきていた。


「ロイさん、ザックさん、アリーさんも、いらっしゃい!」


 アリーさんを見つけたリリちゃんが、三人の所まで駆けていっちゃった。いつの間に仲良くなったんだろう?


「やあ、いらっしゃい」


「ごめんなさい、勝手に付いてきて」「何か面白い事をしていると聞いたので」


 アリーさんとザックさんは、特にリリちゃんと仲が良いようだね。


「邪魔になると言ったのだが、二人がどうしても聞かないのでな」


 ロイさんは申し訳なさそうに言うけれど、竈門の方をしきりに気にしているので、興味があるのだろう。


「よかったら手伝ってよ、人が増えたから皆んなで食べられる料理を作ろう」


「ジーンはもっと薪を集めてくれるかい?」


「分かったよ。おいアベル! 一緒に薪拾いに行くぞ」


 ジーンにはアベルと、孤児院の子どもが何人か引っ付いて行った。


「んー、手頃な石とかないかなぁ」


 俺は、料理に使えそうな石を探して泉の周りをウロウロする。


「おっ、これ位だと丁度いいかな」


バルトさんに新しく打って貰った剣の切れ具合はどうかなぁー。


「ふん!」


 カッ カッ カッ!


「おーっ、いい感じ!」


 俺は石を持って竈門を作っていた場所に戻り、料理の続きにかかる。


「ここにコレを置いてー、コッチにはこうしてね」


 拾ってきた薪を入れて。


「さあ、しっかり火を焚いて熱くするよー」


 リリちゃんやユユさん達女性組は、魔石から出したお湯で作ったお茶を飲みながら、お話に夢中になっています。


「薪はこんなもんでいいか?」


 ジーン達も帰ってきたけれど、何だか妙な顔しているよ?


「どうした? 変な顔して?」


「いや、これは元々……って違う! あっちの方でな、キレイな切断面の石があって気持ち悪くてな。あんなキレイな切り口って刃物なのか? もしかして魔物とかか?」


 キレイな切断面? あっ!?


「ごめん、それ俺だ。気にしないで」


「何だ、お前か……って納得出来ねえ」


 気にしない、気にしない。


「あっ、この鳥の身を竈門の石の上で焼いといて」


と言って、捌いた鳥の身をジーンに渡す。

 

「おう、これだなって……げぇ!」


「なになに! どうしたの?」


「いやお前……これ」


 ジーンが、さっき切り出してきた石の板を指差す。


「あー、鉄板とか無かったからさ。ピザ焼くなら石焼が良いと思って切ってきた」

 

「切ってきたって……どんな刃物使えばこんなにスパッと切れるんだよ?」


「えっ? バルトさんに打って貰った剣だけど?」


 腰の剣を指差す。


「ええ……てかそれ、俺も貰ったよな?」


「うん、同じやつ」


 ジーンはそれ以上何も言わなくなりました。


「さて! 準備できた!」


 俺の声を聞いて、テツや孤児院の子ども達。ザックさんやロイさんも集まってきた。


「さて、まずはコレをー」


 リリちゃんが作ってきたパン種を分けて貰った分で、ピザを作りますー。


 手のひらで伸ばしたあとは「ヨイショ!」


「「おおー!」」


 くるん! くるん!


 ほらほらー、クルクル回して広げるよー。


 くるん! くるん!


 調子に乗りすぎて少し破れたりしたけれど、ちょっとつまんで直せば良いよね。


「じゃじゃーん、トマトゥルソース!」

 

 収穫したトマトゥルを煮詰めて作ったソースです! ピザと言ったらトマトゥルソースでしょ! 広げた生地の上にトマトゥルソースを塗って、鳥肉とキノコを乗せて、香草を散らせて焼きます。


 集まった皆んなには、好きな具材を乗せて別のピザを作って貰いましょう。


 また新しい生地を回そうとしたら、ロイさんがジッと見てきた。


「何?」


「……」


「さっきのやりたいの?」


 コク。


 仕方ないな、とロイさんに場所を譲る。


 ロイさんは腕まくりをして生地に手を伸ばす。


 手のひらで生地を伸ばして……。


「「キャー! キャー!」」


 カッコいい男は何をやらしてもカッコいいと言う見本がいた……。


 トテトテとリリちゃんが側へとやってくる。


「さっきのお父さんも格好よかったよ」


 はい! リリちゃんから格好よかった頂きました! もう大丈夫! 負けないもんね!


 リリちゃんのパンも焼けて。ピザと、持ってきていた兎肉も焼いて食べる! ピクニックというよりバーベキューだね!


 ポタタを潰して入れたのも美味しかった。ちょっとだけ物足りないと感じたのはアレだな、鳥が照り焼きじゃなかった事。醤油の開発も進めないといけないな。


 皆んなでワイワイと分け合って食べる。こっちが美味しい、こっちは私が作ったやつ、あれも食べたい、それも食べたい。皆んな笑顔でテツとアベルも楽しそうだ。

 

 帰り道。ロバちゃんに引かせた荷車では、小さな子どもが寄り集まって寝ています。このロバちゃんは、町長が男爵になってこの町を離れる時に譲って貰いました。我が家の新しい家族です。


「いやー、また一つ願いが叶ったな」


 隣を歩くユユさんと目が合う。


「こうやって、たまには皆でのんびりと楽しむ。普通の生活を送れる事が俺の夢、今日はまた一つ叶ったよ」


何も起きなかった? 結構やらかしてます。

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