第六話
ザシュ!
グッ、グッ
「よし、と」
取り敢えず今日の分の獲物はこれ位で良いだろう、残りの時間はいつものようにお目当ての物を探しながら帰りますか。
ザシュッ、スパッ!
切れ味の良い鉈で邪魔な枝を切り落としながら獣道とは違うルートを探す。
「はー、なかなか見つからないものだな」
少し開けた場所を見つけたので休憩がてら鉈を確認、生木とはいえ小枝程度じゃ問題ないか。
町の発展はどうしたって?
そんなもん、情報を与えて直ぐにどうこう出来る訳がなく。出来そうな事とやりたい事の精査と金の算段、町長の権限でできる事とそれ以上の部分……。
難しい事は町長に任せて、俺はいつもの狩の生活に戻っていたのだった。
まぁ、それだけではつまらんので少しのメリットを求めた結果が、この鉈になる訳だが。
アベルが考えた人力の回転砥石は、元はアベルが考えた事と言うのもあって、それはそのまま孤児院で使っている。
俺達はそれを足踏みの回転式に改良し、それを鍛冶屋で試して貰いながらさらに改良を進める計画だ。試しにと俺の鉈を新調して研いで貰った結果、鍛冶屋のオヤジも良さを分かってくれたらしい。
さらに、町の人の家で使う包丁やナイフ程度だったら孤児院で少々安く研いでもらえるようにした。
町の人達も自分で包丁位は研げるのだが、孤児院への寄付も兼ねている事や回転式砥石の性能のおかげで早い、安い、切れ味も良いと評判になっていたりする。
「ん?」
少し休んでいると、生き物の気配が近づいているのに気が付いた。
この感じからすると、ホーンラビットかワイルドラビットか?
「ホーンラビットか」
先の茂みから現れたのは、頭に小さなツノを付けたホーンラビットだった。
ガサガサッ
「!」
ワザと音が出るように動いてホーンラビットに気づかせると鉈を持って構える。
普通の獣であれば逃げていく所だが、魔物であるホーンラビットはギラリ、と目を光らせるとこちらに向かってきた。
その動きは直線的ではなく、一瞬右に跳ねたかと思うとすぐに左へ飛び、鉈を持っていない左手側から突っ込んでくる。それを半身下がって逸らし、通り抜けザマに首を刎ねる。
引退したとは言えこれくらいの事は今でも出来る。伊達に毎日身体を動かしていないし、山を彷徨ったりするには必要な事だ。
追加の土産になったホーンラビットを捌くと魔石とツノを取り、肉と皮に分け、内臓や不要な部位は穴を掘って捨てる。
そのまま放置でも良いのだが、クセと言うかあまり森の外に近いところに魔物や獣が近寄ってくるのもよく無いのでこうしている。