第五十三話、麦畑
そしていよいよ、麦は最新式農法へ進化します!
試しで育てた麦の収穫量も狙い通りだったので、可能な限り広める事に決まりました。春に種を蒔いたクローバーの畑でも種取りと耕しが始まりそうです。
そして、一月ほど経った後。さてさて、お待ちかねの麦の種蒔きです!
今回も犂と手押し式播種機は大活躍でした、しっかりと深く耕された畑は農家さん達の顔を見ると良い状態なのでしょう、土を見てはニコニコされていました。
手押し式播種機は、ずっと生産されて増産に次ぐ増産で、かなりの農家に出回っています。だって屈んだりせずに押すだけで良いんだもんね。
あちこちの畑で新しい種蒔きの風景が見られました。
俺の知識がどんどん町に吸収されて広まって行きます。
……
「大変な事になっている……」
隣領の業者の男が偵察に来て、麦畑の様子を見て驚きトナリーノ男爵に報告に行く姿には誰も気が付いていなかった。
「何だと!! そんな農具まで取り入れて麦を広げようとしていただと! バザールのクセに生意気な! ぐぬぬぬ……バザールめぇ……!! そうだ!」
トナリーノ男爵は、とても良い事を思い付いたとは思えない、気持ちの悪い笑顔を見せながら。
「いい事を思いついた。おい、こっちに来て耳を貸せ」
業者の男になにやら言いつけるのでした。




