第五十一話、ポタタを増やそう
語らわずとも分かり合える男たちがいる。
黙々と畑を耕し、種芋を植えていく。
その姿は神々しくもあり、その旨さに取り憑かれた悪魔の姿にも見えた。
「皆んな何やってるの?」
種芋を植えるたびに祈るような仕草を見ていると、俺はとてもヤバいものを広めようとしているのでは無いかと思ってしまった。
種芋を土に開けた穴に植え、上から土をかけポンポンと優しく抑えて赤子を見るような目で見守る農家さん。
悟ったような顔をあげると……。
「これが、あのポタタに育つと思うと祈らずにはいられないよ」
ここは、最初に声を上げてくれた内の三人目の地主でウォトカさんの畑。ポタタを誰が育てるかとなった時に大豆はアルさんとコールさんの畑でお願いしたので、それでは、とウォトカさんにお願いする事になったのです。
「何とか格好はついたな」
ズラッと並んだ畝に、ウォトカさんも満足気です。
我が家の裏庭で育ったポタタは、全部で100個ほど収穫できた。その内健康で病気の可能性が少なそうで大きさが手頃なポタタを種芋にする為に取っておき、残りを先日振る舞った訳ですが……。
あそこまで気に入って貰えるとは思いませんでした、猫車で持って行ったポタタが全部無くなりましたよ! もっとないのかと詰め寄られギリギリまで追加して残りのポタタで足りるのか心配でした。
ウォトカさんは手についた泥をはたきながら。
「今回植えた分は、次の春植えに使う種芋にする為のポタタですから。数は少なくても次の次くらいには食用にも回せるようになると思いますよ」
ウォトカさんにはポタタを育てる上での注意点なども説明してあるのだが、俺の説明だけでは足りないだろうし不安な所もある。そこは本業であるウォトカさんやアルさん、コールさんに長年の農業の経験と試行錯誤でお任せするしかない。
俺は、ズラッと並んだ畝を見ながら。
「よろしくお願いします」
と、ウォトカさんに頭を下げた。
……
別の畑では大豆の収穫ですよ。
既に宿屋の奥さんには初夏の間に枝豆用で納品済みです。初夏の限定メニューとして町でも宿の食事場でも大評判になりました。
畑の大豆は葉が落ちてサヤも茶色くなり、振るとカラカラなる位になっているので十分でしょう。
根本から枝をポキッと折って収穫します。集めた所で収穫所へ運んで日干しにし、脱穀してさらに乾燥させて保管します。まだまだ量が少ないので今回の大豆は大半が来年の種豆用です。
我々の食卓に上がるのはいつ頃になるのかなー。