SS幕間 思い出の一日
ゴウとユユさんがセールの町に越してきて間もない頃の出来事です。
「はあ〜 ドキドキする! ゴウさん大丈夫かな? 二人とも喜んでくれるかな?」
ユユさんは昨日の夜からこの調子で、テンションが上がったり下がったり、喜んだり不安になったりを繰り返しています。なぜこんな調子かと言うと、明日いよいよ我が家に新しい家族を迎える事になっているからです。
この町に越してきて、ユユさんと二人で相談した中に子供をどうするか? と言う話があった。ユユさんが子供を欲しがっているのは知っていたけれど、俺達の年齢はこの世界では既に折り返しを過ぎている。
前の世界では百歳でも珍しく無い時代と違い、この世界では六十歳で長寿なのだ。今から子供を産んで育てるとなると、子供達の成長を見送る前に俺が天に昇ってしまう可能性の方が高い。
それで相談した結果、この町の教会にある孤児院の子供をうちの子として迎えると言う事になった。
何度も孤児院へと通い、何人かの子ども達と顔を合わせて話した中で、特にユユさんに懐いてくれた女の子と男の子の兄弟を迎え入れる事にしたのだ。
そして、いよいよ今日、二人が我が家にやってくる。
……
「うちの家族になってくれる?」
私はドキドキしながら二人の幼い兄弟に聞いた。
「うん!」
リリちゃんは素敵な笑顔で即答、テツ君も「リリはおばさんの事好きだから、オレはリリと一緒に居られるなら何処でもいい」と言って賛成してくれたわ。
二人の部屋はゴウさんが素敵に仕上げてくれた。少しリリちゃん向けになっているのでテツ君には恥ずかしいかな?
「いらっしゃい」
教会のシスターに連れられてやって来た二人はとても緊張しているようだったけれど、部屋の中を見た途端リリちゃんがとても喜んでくれたのは嬉しかったわ。
「今日から二人はウチの子になったのだから、遠慮せずに何でも言ってね」
二人はそれでも馴染めないのか、あまり話そうとはしてくれない…… 孤児院の時にはよく話してくれたのに……。
食事の時にも、私が色々話しかけるのだけれど遠慮しているのかあまり食べないし会話も進まない。やっぱり嫌だったのかな? それだと悲しい。
眠る時間になり、リリちゃんとテツ君を部屋のベッドに連れて行く。
「それじゃ、おやすみなさい。明日は一緒に楽しい事をしましょうね」
居間に戻りゴウさんと話す。
「リリちゃん、話してくれないね」
「きっと緊張してるんだよ、慣れたらいつものように話してくれるさ」
そんな話をしていると、リリちゃんを連れてテツ君が居間に出てきたの。
「あら、どうしたの?」
「おばさん、あの、リリがおばさんと一緒に寝たいって」
私は涙が出そうになるのを必死に堪えてリリちゃんと寝室に行ったわ。
「あ、ゴウさん今日は別の部屋で寝てね」
リリちゃんと一緒に布団に入っていろいろ話したの、そして満足したのか眠たそうにアクビをしたリリちゃんが小さな声で言ったのよ。
「おやすみなさい、おかあさん」
私は布団を濡らさないように泣くので大変だったわ。
……
「テツ君も、俺と一緒に寝るか?」
「いい」
そう言ってテツ君は部屋に戻って行きました。
ぐすん。




